OCEANS&TETORA特集|ギターマン安藤と上野羽有音、切磋琢磨する2人のライブ観とバンド愛 (2/2)

“同い年”はアジカンと10-FEET

──OCEANSとTETORAは2組ともライブハウスを軸に活動をしていて、着実にファンを増やして会場の規模も大きくなっていますが、ライブに対する意識が変化したタイミングはありますか?

上野 さっき私から言ったので、次は安藤くんからどうぞ(笑)。

安藤 じゃあ先輩の僕から!(笑) OCEANSはTHE NINTH APOLLOに入る前は本当にお客さんが少なくて、壁や床に向かって歌うことも多かった。だから当時は「どうしたらお客さんを増やして、楽しませられるんだろう」と考えていたんです。でも最近はお客さんというか、自分たちが楽しければいいという考え方に変わって。そのほうが豊かなバンド人生を送れる気がするし、今はとにかく少しでもバンドを長く、もっと言えばメンバーが死ぬまで続けたいと思っているので。僕はずっとバンドの先輩として、ASIAN KUNG-FU GENERATIONが好きなんです。僕とアジカンは1996年に誕生したという縁もあって(笑)。アジカンはカッコつけてないのにカッコよくて、「こういうふうに音楽を楽しみながら年を取れたらいいな」と思いますね。

ギターマン安藤(OCEANS)

ギターマン安藤(OCEANS)

上野 私は根本的な部分は変わっていないです。ずっとライブハウスでの勝ち負けを気にしてます。コロナ前にOCEANSと対バンをしたときも、ライブ終わりに何回も泣いてましたし。

安藤 泣いてたね。

上野 自分たちのツアーやのに、OCEANSが一番手でめっちゃいいライブして、トリの私たちのときは全然お客さんの拳が上がらんくて。終わってから床に突っ伏して泣きました。そうやってOCEANSに負けを教えてもらったからこそ、勝ちたいという気持ちが今もずっとある。でもそれはOCEANSに対してじゃなくて、自分たち自身に対して。直接的な言葉を口には出さなくてもギラついてるバンドっているじゃないですか。そういうバンドを見て「この人たちも『悔しい』とか『よっしゃ、勝った』って思ってるんやろうな」と感じるし、そういうバンドのライブのほうがドキドキする。この気持ちはずっと忘れたくないなとずっと思っています。

──「勝った」という手応えを感じることはあるんですか?

上野 たまにあります。そのときはいいお酒が飲めます(笑)。

安藤 わかるー!

上野 ただ、勝ちを求めているというよりも、勝ち負けを意識してできるライブを求めている感じです。そっちのほうがやってて楽しいので。

──ちなみに上野さんには、安藤さんにとってのASIAN KUNG-FU GENERATIONのような存在はいますか?

上野 私は10-FEETの影響を受けてバンドを組もうと思ったんですけど、私も10-FEETと同い年なんですよ。25歳で。

安藤 えっ、そうなん!?

上野 はい。長く続けてるバンドってカッコいいですよね。カッコいいから続けられるんかなって思うし、カッコいいから活動を楽しめてるんやろうなって。だから私もカッコよくなるためにライブしてます。あとは、自分がライブに対してドキドキしていなかったら、たぶんお客さんもドキドキさせられないから。まずは自分がドキドキして「同じ気持ちやったらうれしい」くらいの感覚でこれからもステージに立ちたいです。

上野羽有音(TETORA)

上野羽有音(TETORA)

1曲1曲違う色になるように意識した「恵」

──先ほど少し話題に出ましたが、改めてOCEANSの新作「恵」について聞かせてください。上野さんも聴いてきたそうで。

上野 はい、ここに来るまでの間に聴いてきました。そんなに何回も聴けてはいないんですけど……。

安藤 全然! ありがとう。

上野 コロナ前に一緒に出演した弾き語りライブのときに、安藤くんがやった曲入ってますよね?

安藤 入ってる! 「Iceland」だよね。よく覚えてるね。

上野 いい曲やなと思ってずっと覚えていました。弾き語りのときにOCEANSの曲か聞いたら「OCEANSではやってないんだよ」と言われてちょっと残念やったくらい。今回の音源を聴いて、「弾き語りもよかったけどバンドでもこんなにいいんや!」と思いました。

安藤 曲作りを始めた大学生のときに作った曲だから、当時はバンドでやるには未熟すぎると思ってたんだよね。

上野 「もったいなすぎます」って伝えた記憶があります。

安藤 ありがとうね。ごろう(Ba / OCEANS)も同じこと言ってた。OCEANSの活動休止中に別のバンドを組んでこの曲を演奏してみたことがあるんですけど、やっぱり納得いかなくて。でも活動を再開してOCEANSでやってみたらなぜかハマったんですよ。それで「これは世に出したほうがいい曲なんだな」と思って今回のミニアルバムに入れました。

上野 また聴けてうれしいし、ライブでも聴きたいです。

安藤 承りました!(笑)

上野 激しいパフォーマンスをするバンドって、ライブを意識した曲が多いイメージですけど、OCEANSはそれだけじゃなくていろんなタイプの曲があるし、歌詞もいい。ライブではパフォーマンスに注目しがちやけど、じっくり曲を聴いたら「歌詞もいい」と別の部分の魅力にも気付いて、さらにさらに引き込まれました。

安藤 宣伝部長や! ありがとう。

上野 新譜の歌詞もあとでちゃんと読みます。

左から上野羽有音(TETORA)、ギターマン安藤(OCEANS)。

左から上野羽有音(TETORA)、ギターマン安藤(OCEANS)。

──安藤さんが特に気に入っている曲は?

安藤 8曲目の「大切なモノは全部心の中にある」ですね。活動休止中、バンド関係の友達と会う機会が少なくなったときのことがきっかけでできた曲です。会えなくても楽しかった思い出は消えない、そういう気持ちを表現したくて作りました。本当は前回のツアーファイナルのアンコールでやろうとしたんですけど、「バラードで締めるのはちょっと……」という雰囲気を感じてできなくて(笑)。でも、それくらい気に入っている曲です。バンドやライブに対する考えが変わったからか、「恵」に入ってるアッパーな曲は1曲だけなんですよ。収録曲が1曲1曲違う色になるようにしたんです。「OCEANSはこういう音楽性」みたいな考え方だと、自分たちの可能性を潰してしまう気がして。

まずは武道館でいいライブをしたい

──タイトルの「恵」という言葉に込めた思いを聞かせてください。

安藤 あくまでイメージなんですけど……自分の心の中に家があったとして、庭には大きな木が育っている。その木に実が成って落ちて、僕がそれを拾って曲にした。それがこのミニアルバムです。もちろん曲は僕が作っているんですけど、周りからの影響を受けてできたもので、出会いや別れ、再会の蓄積が曲になっている。自分はたくさんの出会いがあって恵まれているし、その経験から生まれた曲を聴いた人の心も豊かになってくれたらと思って付けました。

上野 へえ!

──ちなみにTETORAもレコーディング中とのことでしたが、曲に対しての向き合い方が以前と比べて変化したところはありますか?

上野 今回はちょっと挑戦してみたくて作り方を変えたんですよ。いつもは詞から作っているんですけど、メロディからにして。難しかったけどめっちゃ楽しかったです。いつも曲を先に作ってる人はすごいなと思いました。

安藤 えー、聴きたいわ。

上野 できたら送ります!

──そしてTETORAは日本武道館でのワンマンライブが決まりました。どんなライブにしたいですか?

上野 ライブに関してはずっと挑戦し続けてきているので、武道館でもいろいろな部分を更新できたらいいなと思っています。……えー、楽しみ。今、ちょっとイメージしちゃいました(笑)。

安藤 あはは。

上野 1曲目で弦とか切れたらどうしようとか(笑)。うん、でも楽しみです。

──ではそれぞれのバンドの今後の展望や目標を聞かせてください。

安藤 ワンマンライブをやりたいです。友達でじゃなくて、お客さんが満員の状態で。TETORAのライブを観ているとうらやましくなる瞬間があるんです。お客さんが心底楽しそうに、幸せそうにワーッと盛り上がっていて、それを見たTETORAがさらに燃え上がっていくという。相乗効果を感じる。それを自分たちのライブでも体感してみたい。

上野 そのときは観に行きます! 私は今までのインタビューでずっと「インディーズバンドとして武道館に立つのが目標」と言い続けてきたから、まずは武道館でいいライブをしたい。終わったあとにおいしいお酒が飲めるような。先のことはそれから考えます。

──お互いの今後に期待することはありますか?

安藤 仲いいやつ全員に対してそうなんですけど、変わってほしくないですね。僕、今27歳で、地元の友達はみんな精神的に大人になっていくのに、僕だけずっと小学生のままなんですよ。ふざけたこと言っても「そうだねそうだね」と諭されて寂しさを感じる。でも羽有音と話していると、ずっと“少年少女”みたいな感じがして。そこはあまり大きく変わらないでほしいなと……期待というか願いです。

上野 コロナ前まではいろいろなバンドが活動休止や解散をしても「そうなんや」くらいにしか思っていなかったんですけど、コロナ禍が落ち着いたくらいからは、ライブハウスもバンドも、もう誰もいなくならんといてほしいって思うようになっちゃいました。だからOCEANSも、もういなくならんといてほしい。

安藤 うん! ごめんね。

上野 それが一番の願いですね。ずっと周りに好きなバンドがいててほしい。その環境の中でTETORAとして活動をがんばりたいです。

左からギターマン安藤(OCEANS)、上野羽有音(TETORA)。

左からギターマン安藤(OCEANS)、上野羽有音(TETORA)。

TETORAライブ情報

TETORA武道館でワンマン

2024年8月12日(月・祝)東京都 日本武道館

プロフィール

OCEANS(オーシャンズ)

東京・八王子を中心に活動している、2016年に結成された3ピースバンド。ギターマン安藤(Vo, G)、ごろう(B)、ショウ(Dr)からなる。2019年5月に1stシングル「HEART FULL BYPASS」をリリースした。コロナ禍である2020年8月に“凍結”を発表したが、2022年9月に活動を再開。2023年5月に2ndフルアルバム「SEE YOU」、同年12月にミニアルバム「恵」を発表した。

TETORA(テトラ)

2017年に結成された大阪発のバンド。上野羽有音(Vo, G)、いのり(B)、ミユキ(Dr)からなる。2019年6月に1stアルバム「教室の一角より」、2020年2月に1stシングル「あれから」をリリースした。2024年春にフルアルバム(タイトル未定)を発表予定。同年8月12日には初の日本武道館ワンマンを行う。