ハナレグミ次回作の構想

──ハナレグミはしばらくオリジナルアルバムを出してないですね。

永積　もう3年ちょいぐらい出してないですね。今年の末ぐらいから取りかかろうと思ってるんですけど。

──それぐらいのタームがちょうどいい感じですか。

永積　作るのに時間がものすごくかかっちゃうんですよ。今まで全部1人でメロディも詞も書いて、コードつけてアレンジもしてたんだけど、なんかもっと違うやり方ないかなあって。自分1人だけじゃなくて、さっき言ってたみたいに誰かと一緒にやるとか。違う発想とかアイデアの中で自分を出してみたいなって欲求はすごくありますね。まだ決まってはいないですけど、歌に徹するのもちょっとやってみたいなと。

TOSHI-LOW　ああ、それいいかもしれない。

永積　メロディも詞も誰かに書いてもらって、自分は歌に専念。

TOSHI-LOW　宇崎竜童＆阿木燿子で曲を書き下ろしてもらって（笑）。

永積　昭和な感じで（笑）。

TOSHI-LOW　こないだ宇崎竜童と一緒にやったんだけど、すごく面白かったよ。宇崎竜童プロデュースのコンサートでOAUがバックをやって。お客も普段俺らのライブには絶対来ないようなじいちゃんばあちゃんで。でも楽しかったんだよね。原田芳雄の「新宿心中」って曲を歌わせてもらったの。それはそのコンビ（宇崎＆阿木）で作った曲なんだけど、打ち上げで阿木燿子さんが「芳雄さんが死んじゃって、あの曲はもう聴けないと思ってたからすごくうれしかった」って涙ぐんで言ってくれて。ああ、やってよかったなあ、すごくいい経験させてもらったなあって。人の歌を歌うことって、もしかしたらすごい面白いんじゃないかなって。

永積　自分で作って自分で歌うとさ、全部が自分の血肉みたいなものじゃない？ でも人の曲だと人の言葉だから、どうやっても自分にはなりきれない距離感がある。でもそれが逆に人にイマジネーションを与えるのかなって瞬間もある。

TOSHI-LOW　隙間があるから、余裕が出てくるんだよね。それはあると思う。

バンドってやっぱりいいよなあ

──OAUは秋にはアルバムのツアーも控えてますが、何か特別な趣向などは……。

TOSHI-LOW　いやもう、このまま持っていくだけですよ。奇をてらうような企画的なものは考えてなくて、ほんとに普通にそのまま。自分たちで言うのもなんだけど、アルバム録ってる段階で「これはいいんじゃないかな」って手応えがあって、それをそのまま、いろんなところで鳴らしたいって欲があるので。

永積　ライブのステージ上でアレンジ変えたりする？

TOSHI-LOW　そういうことはあまりやらなかったんだけど、だんだん出てきたね、みんなの遊び心みたいなものが。ああいうのをやるの楽しいんだよね。

永積　でもアレンジはすごく細かく緻密に作られてるなあって思うけど。

TOSHI-LOW　メンバーの人数が多いじゃない。みんながだべーっとジャムし出すと、ほんとにだべーっとした音楽になっちゃうから（笑）。イヤな意味のユルさが出ちゃう。

永積　ブラフのときとOAUのときでアレンジのやり方は変わるのかな。それとも楽器が変わるだけで、やり方は変わらない？

TOSHI-LOW　ああ、変わるね。最近はマーティンが元になるものを持ってきてくれるからそれをみんなでアレンジするんだけど、ブラフの場合は、例えばAしかないってところから始めるから。

永積　リフだけとか？

TOSHI-LOW　ベースラインだけとか。次の展開を決めないで作ってるから、全然違うね。OAUはけっこうきっちり作ってくるから。きっちり作りすぎて面白くないときは、それを崩していく。ただのルーツミュージックになっちゃってもつまんないし。

永積　うんうんうん。

TOSHI-LOW　自分たちのやる意味がなくなっちゃうからね。

──ブラフとOAUで対バンやらないんですか。

TOSHI-LOW　飲んじゃうからね（笑）。ブラフは飲むとできないから。いつかは……。

──どっちがトリをとるのか。

TOSHI-LOW　もう、大モメですよ（笑）。でもブラフやったあとにこの声は出ないかも。疲労で。

──今となってはお客さんもすんなり受け入れてくれそうだし。

TOSHI-LOW　うん。最初の頃は拒絶していた人もいたけどね。俺がハスキンの変化についていけなかった感じに似てると思うんだけど。でも今はOAUだけが好きって人もすごく出てきてるし、ブラフ好きだったけどOAUのライブにしか行かなくなったという人もたくさんいる。それは全然イヤじゃなくて。いい形だと思うし。

──単にブラフを卒業してOAUにいった、というだけじゃない気がします。みんな両者になんらかの共通したものを感じてるんじゃないかと。

TOSHI-LOW　だといいけどねえ。やってる側はわかんないっちゃわかんないからね。最終的にどう聴いてくれてるかまでは考えてないから。こういうのってあまり前例がないじゃない、まったく同じメンバーでまったく違うことやってるっていうのは。単なるロックバンドのアコースティックバージョンじゃないから。だから……このアルバムの結果が楽しみ。自分たちの思い描いていたものと、初めてつながった感じがあるから。

永積　ブラフのときとOAUのときって、歌詞の言葉は変わったりする？ というのは、バンドの勢いじゃないと載せきれない言葉っていうのがあって……。

TOSHI-LOW　あっ、そうそう。あるある。やっぱり強い言葉がそうだよね。押し出す空気がすごい必要な言葉ってあるじゃない？

永積　ある！

──それは精神的なことなんですか、技術的なことなんですか？

永積　いやー、それに関して思ったのは、エゴ（EGO-WRAPPIN'）のヨッちゃん（中納良恵）。シンガーとしてもすごく尊敬してるし好きなんだけど、彼女はソロでも歌うでしょう。でも森（雅樹）くんがうしろにいるとやっぱり違うんだよね。マイク1本持ってモニターより前に出るのってけっこうエネルギーがいる気がするんだよ。でもそういうときに自分と一心同体みたいな人がバックにいると、すごく力になる。ヨッちゃんが鉄砲玉みたいにパーッと前に駆け出していくとき、バックに森くんがいるっていうのがすごく大きいと思うのね。バンドで長いことやってて、なんでも知ってる仲間がいるのって、思いっきり踏ん張って速い球を投げきれる感じがあるよね。バーンと受け止めてくれるキャッチャーがいる心強さっていうのがさ。

TOSHI-LOW　それ、絶対ある。

──じゃあ1人でやってると……。

永積　そう。だから、バンドって……やっぱりいいよなあ、って（笑）。

TOSHI-LOW　うん……いいよ。

──これを機にTOSHI-LOWさんと永積さんで何かやったらどうです？

永積　おおーっ！

TOSHI-LOW　やろうよ、2人で。

永積　ぜひ！