Nulbarichが2年半ぶりのオリジナルアルバム「The Roller Skating Tour」をリリースした。
「ダイドーブレンド」のCMソングとしてオンエアされた「Reach Out」や、テレビアニメ「ミギとダリ」のエンディングテーマ「Skyline」、フィーチャリングゲストにPUNPEEを迎えた「DAY feat. PUNPEE」などの既発曲を含む計13曲を収録した今作。Leo Uchida(Kroi)と共作した“悪ふざけ”がテーマのディスコナンバー「DISCO PRANK feat. Leo Uchida(Kroi)」や、Yaffleに“丸投げ”したという新曲「Lonely Road」などの新曲も収められ、多彩なラインナップが魅力的な1枚となっている。
音楽ナタリーではJQとLeo Uchida、JQとYaffleという組み合わせの2本のクロストークを企画。互いの印象や各コラボ楽曲の制作秘話をざっくばらんに語ってもらった。さらにJQのソロインタビューも行い、作品に込めた思いや、制作拠点をLAに移してからの変化について話を聞いた。
取材・文 / 村尾泰郎撮影 / 草場雄介
Kroiはイケメンのお笑い芸人みたいな存在
──内田さんは10代の頃からNulbarichの楽曲を聴かれていたそうですが、どんなところに惹かれていたのでしょうか。
Leo Uchida(Kroi) 聴き始めたのは高校生の頃です。当時いろんな音楽をディグって、ファンクとかソウルとかヒップホップの有名な楽曲に出会っていた時期なんですけど、日本にもそういったノリの曲をやってる人たちはいないのかな?と思ったタイミングでNulbarichを発見したんです。
──自身でそういう音楽をやるうえでのヒントにもなった?
Leo はい。日本でもやっていいんだ!という気付きはありましたね。それまで自分が見てきたバンドはだいたいロックバンドで、歪みのギターとベースのルート弾きでガツガツいくみたいな感じだった。そんな中でNulbarichの存在はバンドシーンにすごい希望を与えてくれたと思います。
──JQさんはKroiの音楽をどのように聴いていましたか?
JQ 彼らはブラックミュージックが好きでありながら、僕たちよりも幅広く音楽要素を取り入れている。彼らのような存在はほかにはいないし、ポップシーンからもバンドシーンからも超越しちゃってますよね。この人はちょっと天才というか、ネジが飛んじゃってるんで(笑)。
Leo うれしいです!(笑)
JQ 彼らは楽曲もいいんですけど、僕らと同じでライブバンドなんですよ。みんなで音楽を奏でるという初期衝動を忘れていないから、全然スカしてないんですよね。もうちょいカッコつけてもいいとすら思う。めちゃめちゃイケメンの面白いお笑い芸人みたいな存在というか(笑)。
──そんな内田さんを今回「DISCO PRANK」でフィーチャーしようと思ったのは、どういう狙いがあったのでしょうか?
JQ そもそもはKroiがツーマンに誘ってくれたのが始まりで。なかなかこういう機会ないし、一緒に何か作りたいなと思ったんです。Leoくんはラップができるし、リリックもリリカルだし、テクニカルな部分も含めて曲にいろんな表情が出せそうだなと。
Leo 声をかけていただいたときは驚きました。PUNPEEさんをフィーチャーされたあとだったので、その次が僕で大丈夫なのか?って(笑)。
──声をかけた段階で、JQさんの中に曲のイメージはあったんですか?
JQ Leoくんが歌うなら?と考えたとき、Nulbarichだとできない“PRANK(ふざける)”テイストを出してみようと思いました。僕も日頃からふざけてはいるんですけど、1人だといい方向に転がらないところがあって。それで最初にLeoくんと曲の世界観やコンセプトみたいな部分を話し合って曲を膨らませていきました。
Leo そのあとJQさんが送ってくれたビートに、思い付いたものを全部入れてみようと思って、ギターとか歌をガンガン入れたんです。それにJQさんがいろいろ肉付けをして、あっという間にできた感じですね。
JQ ラリーはそんなに多くなかったよね。2人が出したものは全部使ってるし。
まともなことを言ってるけど伝え方がふざけてる
──JQさんは内田さんから送られてきた音源を聴いて、どのように感じました?
JQ 僕じゃ出せないところを持ってきてくれたという点では狙い通りでした。でもLeoくん独自の解釈はありながらも、ジャンル感は僕と共通していたというか。言葉にしなくても互いにベースは理解し合っていたから、余計なやりとりをしないで済みましたね。
──内田さんは「ふざける」というテーマを、どんなふうに曲に落とし込んだんでしょうか。
Leo 俺は“真面目にふざける”ということを自分のスタンスとしてずっと意識してきたんですけど、「Nulbarichの曲でどのくらいふざけていいんだろう?」とは考えましたね。JQさんからめっちゃカッコいいビートが届いたときは「試されてるな」と思って(笑)。だからビートの質感とか、JQさんと話した内容から感じ取ったことを意識しながら、しっかりふざけようと思いました。
JQ Leoくんのリリックは牙も棘もあるけど、言ってることはクソ真面目。ミュージシャンっていうのは世の中に対してたいしたことができないって割り切りながらも、俺たちは音楽しかできないから悪ふざけをし続けるよっていう。まともなことを言ってるけど伝え方がふざけてるのが、この曲の美しいところなんですよね。
──完成した曲について、それぞれの感想を教えてください。
JQ お互いにやりたいことを詰め込んだだけで、なんのトリートメントもしてません、みたいな感じがめちゃめちゃいいんじゃないかなと思います。普通だったら塩梅を調整したりするんですけど、今回そういうことは一切やってないですからね。
Leo 僕はJQさんの楽曲制作に対する視点がよくわかったのが面白かったですね。
JQ 何それ、詳しく聞きたい。
Leo ラフさとこだわりの部分のスイッチングがすごい激しいんですよ。1回、僕から「これが正解だな」と思うものを出させてもらったんですけど、それに対して「どこを直すことになるだろう」と考えていたんです。そしたらJQさんはどこも否定せずに「めっちゃいいね!」と返してくれて。それがすごく刺さりましたね。普通だったら「もっといいものが出るかも」と、やりとりを重ねる場合もあるんですけど、「最初に出たものでいく」という潔い感じがNulbarichの余裕だと思ったんです。
JQ いや、それは本当によかったからで。今回はプロデュースではなくフィーチャリングだったというのもあるけど、自分の満足度を超えていればそれでいい。よりよくすることは個々にやってるじゃないですか。だからこの曲ではLeoくんが気持ちよく歌っていることのほうが大事なんです。自分が気に入らないメロディを歌うと完成度が落ちるので。
──自分の満足度よりもアーティストの充実度が大事?
JQ そうですね。相手が送ってくれた素材を、どう曲にしていくかが僕の仕事じゃないですか。フューチャリングはそうじゃないと。もしLeoくんが延々と下ネタをラップしてても、“プランク”というテーマのもとで僕にいたずらしてきたという解釈ができれば、そしてそれがカッコいいと思えれば受け入れる。それをどうやって世の中に認めさせるかが“遊び”だと思ってるんで。
──今回は2人で思い切りふざけることができたわけですね。
JQ そうですね。この曲はまだ1回しかライブで披露していないので、早いタイミングでまたやりたいです。最高のライブチューンなので。
Leo またライブやりたいですね。
JQ それまでにラップできるようにしておくからね。ヴァースも歌えるようにしておくし。
Leo それ、俺がいる意味なくなっちゃうじゃないですか!(笑)
JQ Leoくんがいなくても歌いたいほど、満足度が高い曲なんだよね(笑)。
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JQ × Yaffle