エラーの積み重ねが作品に
──そしていよいよエンディング。荘厳なバラード「Lost Game」を経て、ゴスペル風のオルガンが響く「Outro(The Message Part. 1)」で締めくくられるという、非常にスピリチュアルな幕引きです。
「Lost Game」は「HELLO WORLD」という映画の主題歌で、これもまたかなり難しい感情を表した曲なんです。この曲が流れたあとに映画はエンディングを迎えるというのもあったし、映画に合わせて自分でも感じたことのないくらいの壮大なイメージで作った曲だから、これはどう考えてもアルバムに入れるなら最後しかないなと。
──でも、そうはしなかった。
そうなんです(笑)。僕、終わりがすごく苦手なんですよ。楽しい時間であればあるほど、終わってしまうのがすごく嫌で。それこそみんなで飲むときなんか、帰りたくないからだいたい最後まで残るんです。で、今回の制作でも「まだ終わりたくない!」みたいな気持ちが出ちゃったという(笑)。
──なるほど(笑)。
なんというか、次のモチベーションにつながるものを「Lost Game」のあとに何か入れたくなっちゃったんですよね。じゃないと、このアルバムは終わらせられないなと。それでマスタリングのために訪れたロサンゼルスで作業に入る直前に作ったのが「Outro(The Message Part. 1)」なんです。
──これ、そんなギリギリで作った曲だったんですね。
そうなんです。なんならホテルでギター弾いてましたから(笑)。僕、だいたいそんな感じなんですよ。全然設計図とか書けないし、いつも行き当たりばったりというか。でも、そこからドラマが生まれていったからよかったなって。それに実はまだここに入ってない曲もほかにありますし。
──収録されなかった曲はどうするのでしょうか。
どうしましょうね(笑)。次にどうすればいいか、自分でもわかってないことばかりなので。でも、そのほうが僕は楽しいし、聴いてくれる人もいろいろ想像してくれるんじゃないかな。要はこういうのって、ある種のエラーだと思うんです。偶然の産物というか、想定もしてなかったものが作品に入ったわけですから。でも、そういうエラーの積み重ねが作品になったわけで、それってすごく面白いなと思うんですよね。
脳内にあるセカンドギャラクシー
──アルバムタイトルはどのタイミングで考えたんですか?
これも最後のほうですね。できあがってきたときにこのコンセプトが浮かんできたんですけど……あの、飲みの席で宇宙の話とかってします?
──たまにします。僕はわりと好きなほうですね、宇宙の話。
僕もよくするタイプなんですよ。それでかなり嫌われるんですけど(笑)。宇宙の話が好きな人って、それぞれの考えを持ってるじゃないですか。で、それをぶつけ合うんですけど、宇宙の話には正解がないから、結局どこにもたどり着かないんですよね。要は僕、終わらない話が好きなんです。お互いに答えの出ない話をずっとしていたい。まあ、それでよく同席してる人から「で、結局何が言いたいの?」と言われて「いや、これはそういう話じゃなくてさ」みたいな感じになるんですけど(笑)。
──わかります(笑)。
宇宙という無限の可能性を人類はどこまでも追い求めてる。それってすごくロマンがあることだなって。で、この世の中にもう1つ宇宙があるとしたら、それは僕らの脳みその中にある想像だと思うんです。いろんな知識による壁を作らない限り、自分たちの想像には限界がないと思う。その比喩として付けたのが、このアルバムタイトルなんです。
──今作はNulbarichの脳内にあるセカンドギャラクシーから生まれた音楽だと。
僕らは無限にいろんなものを想像し続けられるし、僕は何よりもその過程が大切だと思うんです。僕がミュージシャンとしての最終目標を決めていないのも、そういうこと。これからもずっと新しい音楽を追い求めて、いろんな刺激を受けながら死んでいけたら、もうなんでもいい。それこそデビュー当時に「マディソン・スクエア・ガーデンでやりたい」とか言っていて、実際にそのつもりで今やってますけど、仮にその前に死んだとしても全然問題ないというか。来世でまた実現させてやろうかなと(笑)。
──なるほど。とはいえ、バンドは今さいたまスーパーアリーナ公演を控えている状況ですからね。
ええ。さいたまスーパーアリーナの公演はここまでの3年間の集大成にする。その先の答えはこれから決めていけばいいし、とにかく今はそこまで走っていきたいですね。
ライブ情報
- Nulbarich ONE MAN LIVE -A STORY- at SAITAMA SUPER ARENA
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2019年12月1日(日)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ