ナタリー PowerPush - THE NOVEMBERS

シングル&アルバム同時発売 小林祐介の劇的な変化とは?

今回の作品には吹っ切れたすがすがしさがある

──シングルとアルバムのどちらの登場人物も、まるでいろんなことを初めて経験するようなまっさらな感覚を持った人たちで。曲を聴いていて、彼らが自分の中にあるなんらかの違和感と闘っているようなストーリーや情景が思い浮かんだんですけども。

そうですね。これまで周りに存在していた秩序ある世界が、何かのきっかけで意味をなくしてしまって、瓦礫だらけの荒野になってしまった。そういうシーンをイメージして、その瓦礫の中で新たな秩序のもとに世界が作られていくとしたら、そこで自分は何を信じていくか、何を選んでいくのか。その姿勢がこれからの生き方につながっていくんだなってすごく思ったんですよね。

インタビュー風景

──なるほど。小林さんがそこに気付いて作品の情景が見えてきたからこそ、作品にある種開き直ったようなすがすがしさがあるのかもしれないですね。

ああ、うれしい。そう感じてもらえたら。

──その感覚をバンドで表現するときにはどういう方法をとったんですか? メンバーとはうまく共有できました?

「僕はこう考えてて」とか「こういう精神性を持った作品にしようと思うんだけど」とか、そういう説明は一切しなかったんですよ。にもかかわらず、完成した作品は僕の思った以上のものになった。それは、僕が感じていた空気をバンド全員で同じように感じながら作品を作ったからだと思います。もし僕の価値観を正解として、みんなに「これがルールです」って指示して進めたとしたら、それって僕が思う「選んで生きる」行為と相反しちゃうわけで。だからTHE NOVEMBERSのやり方で、THE NOVEMBERSの成功を、THE NOVEMBERSで手にしようって気持ちだけを大事にしてきたし。そのおかげで吹っ切れたようなすがすがしさがあるのかもしれないですね。

他者が無関係な存在じゃなくなった

──歌詞にも、例えば「もう寝ているのかな、おやすみ / よく眠れるといいね」とか、「ところで今日は天気がいいみたいだよ / テレビで見たんだ」といった日常的な1行が出てくるようになりました。

そうですね。

──それは生き方に対する気持ちの変化によって、歌詞の書き方も必然的に変化したということ?

必然だったところもあるし、わざと書いたところもあるし。でもひとつ言えるのは、他者っていうものが僕の中で背景というか無関係じゃなくなったってことはありますね。

──それはすごく感じます。

インタビュー風景

例えば、昔は無関係な人に全くリアクションを求めなかったんです。でも僕、最近は人と話をするのが楽しくて。人って違う価値観を持ってお互いに想像しながら話すんだな、とか思いながら。そういう中でいろいろ発見があったりして、せっかく日本人で日本語使ってて、日本語わかる人がたくさん周りにいるんだから、伝わる言葉で歌えばいいんだなって。そう思ったときに何かが変わったのかもしれないですね。語りかけるような気持ちが生まれたのかもしれないです。

──他者との関係を意識するようになった?

そうですね。それも単に仲良くするっていうだけじゃなく、ケチな相手とケンカしないとか、つまんないと思うものとは付き合わないっていう気持ちもすごくあるんです。きれいなものに対してちゃんときれいだなと思える心とか、軽蔑すべきものに対して徹底的に軽蔑する態度とか。やっぱりそういうものを持ってるほうが豊かに生きられると思うんですね。

ニューアルバム「To (melt into)」 / 2011年8月3日発売 / 2310円(税込) / DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT / UKDZ-0115

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CD収録曲
  1. 永遠の複製
  2. 彼岸で散る青
  3. 瓦礫の上で
  4. はじまりの教会
  5. 37.2°
  6. ニールの灰に
  7. 日々の剥製
  8. 終わらない境界
  9. holy

ニューシングル「(Two) into holy」 / 2011年8月3日発売 / 1470円(税込) / DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT / UKDZ-0116

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CD収録曲
  1. 再生の朝
  2. 夢のあと
  3. 小声は此岸に響いて
  4. melt

※ CD-EXTRA仕様:
「melt」のInstrumentalとTHE NOVEMBERSのアートワークを手がける [tobird] のイラストによる映像作品を収録

THE NOVEMBERS(ざのーべんばーず)

小林祐介(Vo, G)、ケンゴマツモト(G)、高松浩史(B)、吉木諒祐(Dr)からなるロックバンド。2002年に小林と高松によって前身となるバンドが誕生。2005年3月に前身バンドが解散し、同時にTHE NOVEMBERSとしての活動がスタートする。2007年11月にバンド名を冠した1stミニアルバム「THE NOVEMBERS」をリリース。文学的な歌詞と、鋭利さと重厚さをあわせ持つエモーショナルなサウンドがインディーズシーンで話題を集める。2008年6月に初のフルアルバム「picnic」、2009年3月に2ndミニアルバム「paraphilia」、2010年3月に2ndアルバム「Misstopia」をリリース。2011年8月にシングル「(Two) into holy」とアルバム「To (melt into)」を2枚同時に発表し、11月にレコ発ワンマンツアー「To Two( )melt into holy」を開催。