広告クリエイター、フリーペーパー「月刊 風とロック」編集発行人にして、猪苗代湖ズの中心人物、箭内道彦。そんな彼が2011年より東日本大震災復興チャリティライブイベント「風とロック LIVE福島」シリーズを開催していることをご存じの人も多いことだろう。
これまで「風とロック LIVE福島」シリーズは福島県内限定イベントだったが、昨年12月よりその規模を拡大。「風とロック LIVE福島 CARAVAN日本」と題し、福島、沖縄、北海道、長崎、東京、兵庫、広島、宮城、岩手の各地を後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)、斉藤和義、怒髪天、サンボマスター、THE BACK HORNらとともに巡るツアーを展開している。
現在、スマートフォン向け放送局・NOTTV(ノッティーヴィー)では「風とロック LIVE福島 CARAVAN日本」の特別番組をラインナップ。各地での豪華出演陣によるステージの模様を放送している。
そこでナタリーでは今回、このイベントの発起人・箭内に福島に対する思いや「風とロック LIVE福島 CARAVAN日本」の見どころから、箭内流イベント制作術まで、幅広い話を聞いた。
また特集後半では4月6日、東京・日比谷野外大音楽堂で行われた「風とロック 東京 LIVE福島 CARAVAN日本 ~俺ら東京さ行ぐだョおっかさん」をレポートする (イベントレポートはこちら)。果たしてどんなイベントが開催されているのか。その一端を味わってほしい。
取材・文 / 成松哲(箭内インタビュー)、中山洋平(ライブレポート)
撮影 / 小坂茂雄(箭内インタビュー)、笹森健一(ライブレポート)
箭内道彦 インタビュー
箭内道彦の「賛否両論」発言
──もはや箭内さんの3.11以降の福島に対する取り組みは多くの人が知るところになっています。
いやあ、あんまり知られてないですよ(笑)。
──あれっ? だってイベント「風とロック LIVE福島」シリーズを展開していることを知っている音楽ファンは多いはずだし、何より猪苗代湖ズは復興支援ソング「I love you & I need you ふくしま」で2011年の紅白歌合戦に出場しているじゃないですか。
でも実際どれだけの人が本当に知ってくれていたりするんですかねえ?
──知ってますって(笑)。ただ確かに今の後ろ向きな言葉にうなずける面もあって。「風とロック LIVE福島 CARAVAN日本」の公式サイトにある開会宣言の中で箭内さんは、これまでに開催してきたイベント「LIVE福島 風とロックSUPER野馬追」や「風とロックふくしま LIVE福島一座」について「賛否両論もあった」とおっしゃっていましたよね。
そうですね。特に2011年9月の「LIVE福島 風とロックSUPER野馬追」を開催するときにはいろんな方からご意見をいただきましたから。「SUPER野馬追」は6日間かけて福島県内を西から東に横断しながら、各地でライブをやるっていうイベントだっただけに「まだ震災から半年しか経っていないのに音楽フェスなんて必要なのか?」っていう声はもちろんあったし、「オレら、そんなに体力もつのかな?」「そんなにスケジュール空けるの無理だよ」っていうミュージシャンたちの声もあった。運営サイドからも6日間それぞれ違う会場にステージを作って解体して移動してっていう作業の非効率性を指摘されたりもしましたしね。あと、当然放射線量のことも。だから放射線量はものすごく丁寧に測定して、線量が下がらないからっていう理由で開催直前に会場を変更したこともあったし、福島って東西に広いから、逆に東京よりも線量が低い地域もたくさんあったし。そういう諸々を含めての開催だったので「賛否両論もあった」っていう書き方をしたんです。
福島県では老若男女、怒髪天を歌える
──でも今年の「風とロック LIVE福島」は「風とロック LIVE福島 CARAVAN日本」という全国キャラバンへと発展しています。賛否両論あってもなおやる。そのモチベーションはどこから生まれてくるものなんでしょう?
口にしてしまうと本当にありきたりな4文字だし、聞き飽きた言葉かもしれないけど「音楽の力」みたいなものを感じたからですね。僕はこの15年「NO MUSIC, NO LIFE.」をキーワードにタワーレコードさんの広告を手がけてきたけど「風とロック LIVE福島」の会場に集まってくれた人たちの姿や表情を見ることでより強く「NO MUSIC, NO LIFE.」を実感できたというか。イベントに来てくれたお客さんはみんな泣いてたし、みんな笑ってたし、みんな大きい声で腕振り上げて歌っていた。しかもそこには「ロックフェス」っていう言葉からイメージされるお客さんじゃない人、じいちゃん、ばあちゃん、おっちゃん、おばちゃんも本当にたくさんいて。で、怒髪天ってそんな人たちにものすごく人気なんですよ。
──あっ、なんかわかるかも(笑)。あのメッセージとプレイと、あと増子(直純)さんの姿は確実にどんな世代の目も惹きますから。
だから福島には子供でも年寄りでも怒髪天を歌える人がいっぱいいるんです(笑)。そういう人たちの姿を観ていたら、1日だけのことかもしれないし、ほんの少しだけのことなのかもしれないけど、音楽ってやっぱり疲れ切った人たちやずっと閉じこもっていた人たちを元気にすることができるんだな、って改めて感じたんです。
──だから「風とロック LIVE福島」は続いていく、と。規模を全国に拡大した理由は?
まず映画を全国で上映したいというのが理由の1つにあって。「LIVE福島 風とロックSUPER野馬追」で6日間かけて福島を横断しているあいだ、僕たちが目の当たりにした福島に暮らす人たちの日常の姿、もちろんそこに広がってるのは非日常的な光景なんですけど、その様子を是枝裕和さんに「あの日 ~福島は生きている~」というドキュメンタリー映画にまとめていただいていて。これを全国の皆さんにも観てもらいたかったんです。あと全国各地に自主避難している人たちのことを自分はどれだけ知っているんだろう?っていう反省もあったし、これは今回のキャラバンだけじゃなくて「風とロック LIVE福島」全体に言えることだけど、阪神淡路大震災のときの神戸や、沖縄の抱えている問題に対して自分は何ができたのか?っていう反省も出発点の1つではありますね。
- 風とロック LIVE福島 CARAVAN日本
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風とロックLIVE福島CARAVAN日本 9公演ダイジェスト
- 放送日
- 4月27日(土)22:00~23:00 長崎公演ダイジェスト版
5月18日(土)22:00~23:00 東京公演ダイジェスト版 - ※放送スケジュールは変更になる場合があります。番組表でご確認ください。
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