NONA REEVESがメジャーデビュー20周年を記念したニューアルバム「MISSION」をリリースした。シングル「O-V-E-R-H-E-A-T」や、原田郁子(クラムボン)、いつか(Charisma.com)、曽我部恵一(サニーデイ・サービス)がゲストボーカルとして参加した本作は、1970~90年代のポップスやブラックミュージックのテイストを現代的なポップミュージックに昇華した充実作。NONA REEVESのテーマである“ポップンソウルミュージック”の決定打ともいえるアルバムに仕上がっている。
音楽ナタリーでは、西寺郷太(Vo)、奥田健介(G, Key)、小松シゲル(Dr)にインタビュー。アルバムの制作プロセスを軸にしながら、20周年を迎えたバンドの現状、彼らが全うしようとしている“ミッション”などについて聞いた。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 寺沢美遊
もう1枚作れるくらいの曲数はあります
──20周年を記念した新しいオリジナルアルバム「MISSION」が完成しました。NONA REEVESの音楽的な充実ぶりを示すと同時に、現在のポップシーンとも完璧にリンクした素晴らしい作品だと思います。
西寺郷太(Vo) ありがとうございます。
奥田健介(G, Key) スタッフ以外の感想を聞くのは初めてだから、うれしいですね。
小松シゲル(Dr) うん、よかった。
──今年3月には20周年記念アルバム「POP'N SOUL 20~The Very Best of NONA REEVES」がリリースされました。オリジナルアルバムの制作も同時に進めていたんですか?
西寺 そうですね。去年の秋に「ワーナーに戻って、20周年がんばろう」みたいな話が出てきて。僕らはそういう話に浮かれるような年齢でもないし(笑)、「そうなったらいいね」くらいの感じだったんだけど、本当に実現することになって。春にベスト、秋にオリジナルアルバムを出すことが決まって、去年の11月に曲を作り始めた感じですね。20周年のタイミングでメジャーに戻ったことでスイッチが入ったと言うか。
奥田 ベスト盤の収録曲を決めるのと同時に「オリジナルアルバムはどんな感じにする?」という話を始めたんですよ。それから2カ月に1回くらいのペースで集まって、曲出し、アイデア出しをして。
小松 うん。メンバーに限らず、スタッフの意見も取り入れてましたね。
西寺 相当聞きました(笑)。
小松 (笑)。関わってくれる人数が多いほうが、抜けのいいアルバムになると思ったんですよね。
西寺 曲は僕と奥田が作っているんですけど、小松は外部プロデューサー的な役割と言うか、みんなの意見を聞いて「こういう曲がほしい」ということを伝えてくれて。結果、今回収録されなかったアイデア、断片もかなりあるんですよ。
奥田 もう1枚作れるくらいの曲数はありますね。
西寺 うん。僕が作家としてほかの人に提供するときは、ほとんど却下されることがないんです。ここ数年くらいはコンペ仕事は断っていて、そのために作った1曲がリリースされることが多いから。でも、ノーナは違うんですよね。今回の制作の中で自分が「いいな」と思っていた曲も入ってないし(笑)。
音楽の流れがこっちに寄ってきている感じはある
──NONA REEVESが一番ハードルが高い?
西寺 そうですね。何より、自分が歌う曲書くのが一番難しいんですよ(笑)。
小松 (笑)。みんなやる気があったし、いい曲がどんどん上がってたんだけど、「もっとあるでしょ?」って。「手慣れた感じの曲の上を行きましょう」という気持ちもありましたね。あとNONA REEVESを知らない人にもアピールできるアルバムにしたかったんですよ。まだまだ落ち着きたくないと言うのかな。
奥田 シングルとして出した「O-V-E-R-H-E-A-T」が象徴的だと思うんだけど、今までの雰囲気もありつつ、肌触りが違って聴こえるような曲を収録したかったんですよね。
──とにかく派手なポップアルバムにしたいと。
奥田 地味にしたいとはまったく思ってなかったです(笑)。
西寺 僕らは四十代で20年のキャリアがあるんですけど、今の立ち位置と言うのは、60年代のモータウン全盛の時期のジャズミュージシャンに近いと思っていて。ジェームス・ジェマーソン(モータウンレーベルの全盛期を支えた伝説的ベーシスト)もそうですけど、もともとジャズをやっていた人がポップスの中で仕事をしていたんですよね。僕らもアイドルやアニメの曲を書かせてもらってますが、その中にもいいものがいっぱいあって。その感覚をNONA REEVESの曲にも取り入れたかったんです。例えばV6に提供した「Sexy.Honey.Bunny!」の感覚で(アルバム収録曲の)「ヴァンパイア・ブギーナイツ」を作ったり。「これはノーナに合わない」みたいに勝手に排除したり、リミットをかけないということですね。
奥田 きれいに角を取ってしまったり、磨き過ぎたりしないという意識もありました。
西寺 それは歌詞についても同じことが言えますね。これはずっとやってきたことだけど、全体で46分を超えないようにするという目標もありました。ブルーノ・マーズ、カルヴィン・ハリスの新作もすごくタイトじゃないですか。
──確かにそうですね。それに「MISSION」はアルバムのサイズ感だけではなく、サウンドの雰囲気、音楽性自体も海外のポップシーンとリンクしていると思います。今名前が挙がったブルーノ・マーズ、カルヴィン・ハリスなどと並べて聴いても、まったく違和感がないと言うか。
西寺 カルヴィン・ハリスは僕も今年一番聴いたし、Tuxedoにインタビューもしたんだけど、以前に比べるとノーナみたいな音楽が洋楽のシーンで流行ってるという感じはありますね。「ノーナみたいな音楽」っていう言い方はヘンかもしれないけど(笑)、2000年代の最初のほうは「こういう音楽をやってるのは世界中で僕らだけじゃないだろうか」みたいな時期もあったから。
奥田 そうだね。
西寺 それがDaft Punkの「Get Lucky」(2013年)あたりから変わってきて、僕らがやっている音楽もわりと普通に受け入れられるようになったと言うか。80年代のポップスのエッセンスだったり、グルーヴィなサウンドを、生演奏を含めて表現するっていう。ブルーノ・マーズあたりは年齢的に後輩だと思ってるんだけど(笑)、カルヴィン・ハリスの新作はその決定打だと思うんですよ。僕らがそれを真似することはないですけど、音楽の流れがこっちに寄ってきている感じはありますね。
小松 それぞれのアーティストが伸び伸びと好きなことをやっている印象があって。僕らも自由にやりたいことをやればいいのかな、と。
西寺 (2011~2016年にNONA REEVESが所属していた)Billboard Recordsの時代もけっこう自由にやってたんですけどね。最初は冨田謙さんにプロデュースをお願いしていて、最後の1、2年は僕らだけで制作していたんですけど、趣味性が高いと言うか、「こういう感じ、意外とやってなかったよね」という曲を作ったりして。
奥田 「好きなことをやっても、無責任な作品にはならない」ということもわかったしね。
小松 そうだね。そこにメジャー復帰が重なって、「がんばって売れたい」という感じになりました。
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「バンドマンとして生きてる」という感覚を思い出した
- NONA REEVES「MISSION」
- 2017年10月25日発売 / Warner Music Japan
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[CD]
3240円 / WPCL-12781
- 収録曲
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- ヴァンパイア・ブギーナイツ
- Sweet Survivor
- Danger Lover feat. いつか(Charisma.com)
- NEW FUNK
- NOVEMBER
- 未知なるファンク feat. 曽我部恵一(サニーデイ・サービス)
- 大逆転
- 麗しのブロンディ
- 記憶の破片 feat. 原田郁子(clammbon)
- O-V-E-R-H-E-A-T
- Glory Sunset
- NONA REEVES全国ツアー
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- 2017年10月28日(土)東京都 Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE ※SOLD OUT!!
- 2017年10月29日(日)東京都 Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE ※SOLD OUT!!
- 2017年11月3日(金・祝)福岡県 DRUM SON
- 2017年11月11日(土)愛知県 ell.FITS ALL
- 2017年11月12日(日)大阪府 Music Club JANUS
- 2017年11月18日(土)北海道 Sound Lab mole
- NONA REEVES デビュー20周年記念渋谷ノーナ最高祭!!! 第三夜
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2017年11月25日(土)東京都 TSUTAYA O-EAST
出演者NONA REEVES / クラムボン - ノーナとHiPPY CHRiSTMAS 2017
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- 2017年12月9日(土)大阪府 Music Club JANUS
- 2017年12月17日(日)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
- NONA REEVES / ノーナ・リーヴス
- 西寺郷太(Vo)、奥田健介(G, Key)、小松シゲル(Dr)の3人からなるポップソウルバンド。1995年に結成し、1997年11月に「GOLF ep.」でメジャーデビュー。初期はギターポップ色の強い楽曲を得意としていたが、1999年のメジャー2ndアルバム「Friday Night」を機にディスコソウル的なサウンドを追求しはじめる。その後も精力的に活動を続け、コンスタントに作品を発表。ポップでカラフルなメロディと洗練されたアレンジによって、国内で他に類を見ない独自の立ち位置を確立する。西寺は文筆家としても活動し、80'sポップスの解説をはじめとする多くの書籍を執筆。さらにメンバーは3人とも他アーティストのプロデュースや楽曲提供、ライブ参加など多岐にわたって活躍中。2017年3月にメジャーデビュー20周年を記念したベストアルバム「POP'N SOUL 20~The Very Best of NONA REEVES」、10月に20周年記念作品第2弾となるオリジナルアルバム「MISSION」をリリースした。