音楽ナタリー Power Push - 野水いおり
野水いおり×大槻ケンヂ×橘高文彦 “ジョイント”される3つの才能
声優としても活躍する野水いおりのニューシングル「D.O.B.」が7月29日にリリースされる。
野水7枚目のシングル「D.O.B.」の表題曲は彼女もヒロインの1人、リコ・フラメル役で出演中のアニメ「空戦魔導士候補生の教官」のオープニングテーマ。そしてカップリングには彼女の自作詞曲「水底のremains」と、彼女が小学生時代から敬愛してやまないという筋肉少女帯の大槻ケンヂ作詞、橘高文彦作曲の「球体関節人形の夜」の3曲が収録されている。
今回音楽ナタリーでは野水と大槻、橘高の3人による鼎談を企画。彼女と憧れの2人とのコラボレーションはいかにして始まったのか。そして筋少ファンにしてゴシック&ロリータファンの彼女の嗜好を全開にした怪作「球体関節人形の夜」はどのように生まれたのか。3人に大いに語ってもらった。また特集後半では野水のソロインタビューも掲載。「D.O.B.」「水底のremains」の制作秘話を聞いた。
取材・文 / 成松哲 撮影 / 笹森健一
これは1人BARBEE BOYSだ!
──資料によると野水さんはかねてからの筋肉少女帯の大ファンとのことで。そして去年リリースのフルアルバム「Hat Trick」で筋少の「小さな恋のメロディ」をカバーしています。
野水いおり はい。
大槻ケンヂ 僕が野水さんのことを知ったのはその「Hat Trick」がきっかけですね。
──橘高さんは?
橘高文彦 「Hat Trick」バージョンの「小さな恋のメロディ」のレコーディングの頃ですね。というのも、レコーディング前日にアルバムに参加なさっていた是永(巧一)さんから電話があったんですよ。「あっ、橘高? 明日さー、オレ、お前の曲弾くから」って。
一同 あはははは(笑)。
橘高 まあいつもそういうお電話をくださる方ではあるんですけど(笑)。で、そのときには「なんかのライブでカバーするのかな?」と思って「よろしくお願いします」なんて返事をしてたんですけど、レコーディング当日にもまた是さんから「今さあ、お前のギター弾いたんだけど、超よかったぜ!」っつう電話がありまして。そのときにやっと野水さんがご自身のアルバムで我々の曲をカバーしたっていう説明をいただいた、と。で、そのあとすぐに音源をいただいたんですけど「ああ、素晴らしいなあ」って感じでしたね。
大槻 うん。あの曲の詞って男女のセリフの掛け合いになってるんですけど、あれをきちんと1人2役演じ分けてたので「さすが声優さんだな」「これは1人BARBEE BOYSだ!」と。
野水 ありがとうございます(笑)。
マンガと違う! なんて曲なんだ!
──そもそも野水さんが筋少のファンになったのは?
野水 小学生のときです。母がホラー好きだったことと、少女ホラーマンガブームというものがあったこともあって、小学1年生の頃からホラーマンガを読み始めたんです。その中に速瀬みさき先生の「蝶や蛾の施術師」という筋少さんの曲をコミカライズした連載作品があったんです。
大槻 ああっ、ありました。
野水 それで「あっ、このマンガには基になった曲があるんだ」ということを知って、初めて出会ったのが、「レティクル座妄想」で。それからずっと聴かせていただいています。
橘高 小学1年生で我々の音楽を聴いているっていうだけでもすごいんだけど、しかも初めて聴いたのが「レティクル座妄想」っていうのがまた(笑)。あのアルバムは我々のオリジナルアルバムの中でもかなり敷居が高いはずだし、6歳の女の子に聴かせていいのか?っていう疑問も残るんだけど、だからこそあのアルバムが入り口になっているっていうのがいいですよね。
野水 ありがとうございます(笑)。「蝶や蛾の施術師」の速瀬先生の絵が、一般的なホラーマンガよりもライトですごくキレイだったんです。マンガのイメージで、その基になった筋少さんの曲は聴いたら、すごくセンセーショナルで。“深さ”みたいなものを認識できる年齢ではなかったんですけど、子供ながらに「マンガと違う!」「なんて曲なんだ!」ってビックリして聴き続けているうちに、どんどん好きになっていきました。
──そして筋少の楽曲を追いかけ続け、大槻さんの著作を読み漁り……。
橘高 素敵な青春を送る、と(笑)。
野水 ふふふふふ(笑)。
──で、皆さんが実際にお会いになったのはいつ頃なんですか?
野水 去年の11月です。
橘高 我々の一番新しいアルバム「THE SHOW MUST GO ON」を出したときのツアーのファイナルを新宿のReNYっていうライブハウスで2DAYSやったんですけど、それに遊びに来てくださったんですよね。
野水 そこで「カバーさせていただきました」とご挨拶をさせていただいたんですけど、今日以上にあの日は緊張していまして……。一緒にライブにいらしていたmanzoさんからはずーっと「お前、顔白いぞ!」「死ぬんじゃないか!?」と言われてました(笑)。
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- ニューシングル「D.O.B.」 / 2015年7月29日発売 / FlyingDog
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 1944円 / VTZL-97
- 通常盤 [CD] / 1404円 / VTCL-35204
CD収録曲
- D.O.B.
[作詞:藤林聖子 / 作曲:ミライショウ / 編曲:CHOKKAKU] - 水底のremains
[作詞:野水いおり / 作曲・編曲:雅大] - 球体関節人形の夜
[作詞:大槻ケンヂ / 作曲:橘高文彦 / 編曲:橘高文彦・manzo]
初回限定盤DVD収録内容
- 「D.O.B.」MUSIC VIDEO
野水いおり(ノミズイオリ)
北海道出身のボーカリスト、声優。2010年アニメ「そらのおとしもの」で本格的に声優としてのキャリアをスタートさせる。そして2011年、自身がヒロイン・ハルナ役を務めたアニメ「これはゾンビですか?」のオープニングテーマ「魔・カ・セ・テ Tonight」でアーティストデビューを果たす。以降アニメ「問題児たちが異世界から来るそうですよ?」のオープニングテーマ「Black † White」(ブラック・ホワイト)や、「デート・ア・ライブ」エンディングテーマ「SAVE THE WORLD」などのシングルやミニアルバム「月虹カタン」、フルアルバム「Hat Trick」などを発表する。またその傍ら、アニメ「うぽって!!」で共演した声優の富樫美鈴、佐土原かおり、味里とともにユニット・sweet ARMSを結成し、また幼少の頃から愛好しているホラーマンガの作家を迎えるトークイベント「宵闇倶楽部」を不定期開催するなど幅広い活動を展開。2015年7月にはアニメ「空戦魔導士候補生の教官」のオープニングテーマとなる表題曲や、ファンだと公言する筋肉少女帯の大槻ケンヂ(Vo)と橘高文彦(G)が制作に参加した「球体関節人形の夜」が収められたシングル「D.O.B」をリリースする。
大槻ケンヂ(オオツキケンヂ)
1966年生まれ東京出身の男性シンガー、作家。中学の同級生だった内田雄一郎と筋肉少女帯を結成し、1988年にアルバム「仏陀L」でメジャーデビュー。不条理かつ幻想的な詩で独自の世界観を確立する。またバンド活動と並行して、小説やエッセイを執筆。青春小説「グミ・チョコレート・パイン」は2007年に映画化され、話題となった。また1995年にはソロアーティストとして、アルバム「ONLY YOU」をリリース。1999年には新バンド・特撮を結成し、精力的なライブ活動を展開する。2006年に筋肉少女帯が再活動。現在はバンドやソロなど、さまざまな活動を行っている。
橘高文彦(キツタカフミヒコ)
1965年生まれ大阪出身のギタリスト、作曲家、プロデューサー。1984年デビューのヘヴィメタルバンド・AROUGEの一員としてプロミュージシャンとしての活動を開始し、1989年、筋肉少女帯に加入。以降バンドのギタリストとしてはもちろん、メインソングライター、アレンジャーとして数多くの楽曲を手がける一方で、1994年にはソロプロジェクト・Fumihiko Kitsutaka's Euphoria名義のアルバム「Euphoria」を発表する。1999年には筋肉少女帯脱退と前後して二井原実(Vo)、和佐田達彦(B)、ファンキー末吉(Dr)とともにバンドX.Y.Z.→Aを結成。国内のみならずアジア圏でも大きな人気を獲得する。そして2005年にソロアルバム「NEVER ENDING STORY」で大槻ケンヂと共演し、また2006年にはユニット・大槻ケンヂと橘高文彦名義で「踊る赤ちゃん人間」を発表したのを機に大槻らとともに筋肉少女帯を再結成。2010年にはソロ名義のベストアルバム「DREAM CASTLE ~BEST OF FUMIHIKO KITSUTAKA~」もリリースしている。
- 筋肉少女帯 ニューシングル「混ぜるな危険」
2015年8月5日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ - 初回限定盤 [CD+DVD] / 2970円 / TKCA-74245
- 通常盤 [CD] / 1296円 / TKCA-74249