影響を受けているアーティストは
──音楽以外の表現で影響を受けているアーティストはいますか?
AG 俺らはやっぱりLinkin Parkですね。
山中 ああ、Linkin Parkはそうですね。
AG 「メテオラ」(2003年3月発売の2ndアルバム)もそうだし、その前の「ハイブリッド・セオリー」(2000年10月発売の1stアルバム)も、アートに対するこだわりが半端ない。マイク・シノダ(Linkin Parkのボーカリスト)もFort Minor(マイクが中心となり活動しているヒップホッププロジェクト)では自分でジャケを描いてるし。あの人はアートが好きで個展にもよく足を運んでるし、ああいう見せ方は勉強になりますね。
山中 俺は挙げだしたらキリがないんですけど、NOISEMAKERに寄せて言うと、フューチュラ2000がThe Clashとコラボした「This is Radio Clash」みたいなストリートアートとバンドのコラボとか、そういうのってすごくいいなと思います。あとは、マリリン・マンソンも世界観の作り方が半端ないし、デビッド・リンチに至っては映画は作るし、絵も描くし、音楽も作るし、俺もそういう人になりたいですね。すごく尊敬してます。
AG そこまでいくと何屋さんなんだろうってなるよね(笑)。
山中 でも全部に統一感があって筋も通ってるから、その人がより見えてくる。それがいいんですよね。
AG・山中のMVの作り方
──山中さんは映像にも興味があるんですか?
山中 最近はMVの案を自分で出すようになったし、映像をやってる友達も増えてきたので、そういう友達との会話を参考にして最近は自分で台本も書いてます。
──ちなみに、MVの内容とかCDのアートワークに対してどれぐらい口出ししてますか?
AG・山中 めっちゃ口出しします(笑)。
AG 今回のMVは何をどう撮るか、監督と3回ぐらい飲みに行って話し合いました。それで、「ここはこうしよう」「じゃあ、こっちはこう」って話を詰めていくうちに最終的な形にまで到達したんですけど、結果的におじゃんになって。
──おじゃん!?
AG そう、実現しようとしたら現実的に厳しくて。それで撮影の5日前に急きょプランを変更したんです。
山中 キッツー!
AG キツいでしょ!? それで時間がない中でやれることを探って、「じゃあ、これは?」「ああ、それでいこう。それならいける!」ってことで撮ったのが「NAME」です。今回は苦しかったですね。こういうことってあるよねえ?
山中 あります(笑)。俺もMVの編集前に監督と飲みに行って、「俺、こういう映像が好きなんですよね」「あ、俺と一緒じゃん」みたいにお互いの好きなものを共有しました。
──監督とのディスカッションは飲みに行くのが一番早いですよね。
AG でもあまりこっちから言い過ぎると監督を迷わせちゃうかなって心配もありますよね。ただ、「NAME」の監督は元バンドマンで、聴いてきた音楽が自分たちと近くてモノを言いやすかったので、今回は自分で映画とかCMとかほかのバンドの演奏シーンを切り貼りして作った仮のMVを最初に用意したんですよ。
山中 ヤッバ!(笑)
AG それで「こんな感じ!」って監督に見せました。
──アートとは言え、大事なのは人と人との関係性だったりしますよね。
AG 一緒に作るって意味ではそうっすね。
山中 完全にそうですね。
NOISEMAKER×WK Interact
──CDのアートワークの場合はどうですか?
山中 俺はまずラフ絵を作ります。自分で描いたり、いろんな作品をコラージュしたものをイメージとしてデザイナーに渡します。でも、1つのイメージにとらわれてほしくないから、パターンをいくつか渡してディスカッションしながら作っていく感じですね。
──パターンを用意するって完全にデザイナーの発想じゃないですか。
AG 本当ですよね。
山中 うちのマネージャーに鍛えられたんです。マネージャーもデザインできる人で、最初の頃はジャケットのイメージを言葉で伝えきれなくて、そうしたら「資料を用意してこい」って言われて。そこから自分で勉強して、ちゃんとしたラフを作るようにしたら作業がスムーズになりました。
──NOISEMAKERの新作「RARA」のジャケットは、ニューヨークのストリートアーティストWK Interactによる描き下ろし作品が使用されています。
AG 今回はWKにアルバムの音源と歌詞を送って、そこから彼がイメージしたものが正解だと思ってたから、こっちからは一切口出しすることなく一発OKでした。
山中 WKとのコラボなんて、こんなこと日本でやってる人は超少ないから本当にすごいですよね。
AG そうだね。ミューラル(壁画)自体が日本には全然ないから、けっこう事件っちゃ事件なんだけどね。アンテナが敏感な人とかアーティストからはめっちゃ反応があるけど、キッズにまで伝わってるかどうかはイマイチわからない。だから、そういうカルチャーをもっと伝えていけたらっていうのが今回の作品なんですよ。
──確かに若い子がいきなり理解するのは難しいかもしれないですね。
AG 彼がどういう人か知らない人も多いだろうし。バンクシーの映画にも出てた人なんですけどね。
──じゃあ、この機会にWK Interactがどういうアーティストなのか紹介してもらえますか?
AG 彼はニューヨークに移り住んだフランス人で、ストリートアートの分野で活動しています。基本的には白と黒のモノクロで表現していて、モーション(動き)を影で表現する独特なタッチに俺は衝撃を受けました。今も世界中の大きい壁に描きに行ったり、いろんなブランドとコラボしているので、彼のインスタとかをチェックしてほしいですね。
山中 俺はAGくんと飲みに行ったときにWKの存在を知って、そこからディグるようになりました。バンクシーもそうですけど、ヨーロッパのほうが精神性がとがってる人が多いんじゃないかと思ってて。ヨーロッパの人は世間に対する皮肉がうまいですよね。もちろん、アメリカもバスキアとか超カッコいいですけど。
AG WKは憧れだったし、彼に描いてもらうのはバンドを組んだときからの夢だったんだよね。それにしても、渋谷の壁に描くっておかしくない?(笑) 最初はキャンバスか部屋の壁に描いてもらったものをニューヨークでデザインして送ってくれるのかと思ってたら、WKから「ぜひ日本で描きたいから12m×12mの壁を用意してくれ」って言われて、「無理じゃね!? そんな壁、どこにあんの?」みたいな。そしたらチームが血眼になって探して、渋谷にあるもうすぐ再開発されるエリアに場所を見つけてくれて。
山中 え、じゃあ、壊されちゃうんですか? もったいない……ありえない……。残したほうがいいですよ!
AG でも、WKは「壊されるところまでがアートだ」って言ってて。
山中 出たー!
AG かっけー! でも正直、俺は残したい(笑)。誰か買ってくれないかな?
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常に現在進行形のNOISEMAKER