しゃべり方がずっとコンプレックス

──映画のオーディションをやりますと言われたとき、生駒さんはどう思いましたか？

生駒、演技は下手くそだし、あんまり向いてない分、絶対に受かってやるみたいな気持ちがないままオーディションに行って。でもオーディションが始まってから、「何かの役になりきるのはできないけど、素のままだったらがんばればできるかな」と思って一生懸命やったんです。終わってみたらすごくいい経験だったなあと思いましたね。

──演技に苦手意識があるんですね。

演技はやったことないし。なんだろう……ダンスだったら自分で自由にできるけど、演技って監督さんの言う通りにやらなくちゃいけないし、それができないと憂鬱になるから。それに……演技だと乃木坂には、いくちゃん（生田絵梨花）っていう人がいるからね。自信が持てないんです。

──今回のシングルでも「シャキイズム」のPVではしっかり演技してたじゃないですか？（参照：乃木坂46、新曲「シャキイズム」PVで生駒が男装披露）

だからセリフがなければいいんですよ。

──セリフがないほうが難しいと思いますが。

本当に？ 生駒はしゃべり方がずっとこれだ（訛ってる）から……がんばっても（※生駒は秋田県出身）。

──そこがコンプレックス？

うん。しゃべり方で笑われることがけっこうあったから、しゃべりたくない。

──そこを直そうとは思わない？

直せないんです。こればっかりはもう生まれつき。3歳の頃からこんなしゃべり方だったから。だったら、こういうしゃべり方をポジティブに生かせる場所に行ったほうがいいと思うんです。

日々もがいて苦しんでるのはアイドルも一緒

──そんなオーディションの様子が「君の名は希望」のPVになりましたけど、観てどう思いましたか？

PVはちゃんとは観てないです。泣く自分の姿を観たくないから。たぶんね、もうちょっと時間が経ってからじゃないと観られないと思う。

──そうなんですね。じゃあ曲についてはどうですか？

歌詞が生駒のことみたいだなと思って。生駒もけっこう孤独な時期があったけど、中学生になって生駒の人生を左右するぐらいのいい友達に巡り会えて。「君の名は希望」、本当にその通りだなと思ったんですよ。例えば今自分は1人だと思ってる人は、見方を変えてみると周りに助けてくれる人が絶対にいるんだよってことを、生駒は個人的に伝えたいなって思いますね。本当、なんでこのことを知ってるんだろう、生駒のこと調べたのかなって思うくらい歌詞が自分の体験通りだったからびっくりした。

──なるほど。

歌詞の最後に「希望とは明日（あす）の空」ってあるじゃないですか。誰にも希望は必ずあるから明日も生きてみようよ、明日もちゃんと探してみようよ、だから絶対に諦めないでと言ってるように思うんです。

──そう思うのは自分の境遇と重なるところが大きい？

そうですね。っていうかそれが一番大きい。

──「でもそれは生駒が今、アイドルという恵まれた環境にいるから言えるんじゃないの？」って言う人もいると思うんです。生駒さんは前回のインタビューで「（アイドルって）ただ笑顔で踊ってるだけだと思ったら……こんなにも苦しいものなんだなって」と言ってましたが（参照：[Power Push] 乃木坂46「制服のマネキン」特集 - 生駒里奈が語る「センターの覚悟」）。

言ってましたね。うん、生駒のことをそういうふうに言う人もいるかもね。でも日々もがいて苦しんでるのはアイドルも、普通に暮らしてる人も一緒だと思うんです。毎日笑顔でいられるわけではないけど、うちも諦めないで明日も生きてみようと思ってます。

演技はいつも不安を残しつつやってる

──生田さんは「16人のプリンシパル」で最多1位を獲得しましたし（参照：乃木坂46、初劇場公演を完遂「支えてくれてありがとう」）、先日はドラマにも出演しました（参照：乃木坂46生田絵梨花、月9ドラマ初出演で謎の鍵を握る）。自分では演技は得意だと思ってますか？

思いませんね。なんか得意ってどういうことなのかがよくわかんなくて。いつも「これで大丈夫なのかな？」みたいな不安を残しつつやってる感じですね。

──意外ですね。では演じること自体は好きですか？

すごく好きです。で、歌うことも好きだしステージも好きなので、将来は舞台女優さんになりたいっていう夢を持ってます。

──そんな生田さんにとって、今回のオーディションは難しかった？

台本があって決められた役を演じるのは自分的にもしっくり来るんですけど、今回のエチュードみたいに自由にやっていいよって言われると、どうしていいかわかんなくなっちゃうっていう……だからすごく迷いながらやってましたね。むしろエチュードはさゆりん（松村沙友理）とかかずみん（高山一実）がすごく面白くて、私は観てるほうが楽しかった（笑）。

──じゃあ手応えがなかったと？

正直まったくなかったです。「え、これだけで本当に決まっちゃうのかな？」って思いましたし。実際にはそれ以外にも台本の読み合わせもあったので、まだチャンスがあると思ってそこは本気でがんばりました。

私、ぜんぜん苦労してないように見えるんです

──生田さんにはなんでも完璧にこなしてしまうイメージがあったので、今回エチュードで苦戦したという話は意外でした。ちなみに生田さんって完璧主義ですか？

どうだろう……でも、例えばテストの前とか「もう面倒くさい、やりたくない」って言いながらも一生懸命、完璧にやっちゃうタイプかも。

──きっと演技にしても、得意なピアノにしても、裏で必死に練習してると思うんです。それもあって、生田さんって努力が見えない人なんですよね。努力してることを表に出さないというか。

そうなんですかね？ 確かに自分で客観的にメイキング映像とか観てると……私、ぜんぜん苦労してないように見えるんです。

──自分で自分のことが？

はい……なんだろう。例えばレッスン中に倒れてる子がいると「この子、こんなにがんばってるんだな」っていうことが目に見えてわかるんですけど、私はそんなふうにならないし、がんばってるところを撮られた記憶がないんですよね（笑）。

──でも一生懸命やってるわけですよね？ そのがんばってる姿を他人に見せたくないんでしょうか？

見せたくないっていうよりも……私は家に帰ってからもピアノを練習したり勉強したりするので、そこが見えないだけなんですよね。当たり前なんですけど。例えばライブでピアノを弾くことになったとき、普段のレッスンではみんなと一緒に歌やダンスの練習をするけど、私はそのあとに家でピアノの練習をするわけです。周りのみんなは「いくちゃんならできるよ。大丈夫！」って言ってくれて本当にありがたいんですけど、そう思われてる以上やっぱりやらなきゃいけないわけで。

──誰かが代わりにやってくれるわけでもなく。

そう。できませんと言って泣いてもそれは違うし。まあだから……うん。がんばるしかないんです。