ナタリー PowerPush - 日本マドンナ

リスナーを目覚めさせる爆弾「バンドやめろ」

親に申し訳ないと思わないの?

──このアルバムは、タイトルにもなっている1曲目の「バンドやめろ」が全体像を導いていったんですか?

あんな そう。

──この曲はどんな出来事をきっかけに生まれたんですか?

あんな その話かー(笑)。これは、あるバンドと対バンした後、「お疲れさまでした」って言いにいったら、そのバンドから「そんな歌を歌って親に申し訳ないと思わないの?」って言われて。

まりな ヘラヘラしながらね。

──ああ、その出来事がそのままビデオクリップになってるんだ。

あんな そう。あんな感じで言われて。「えー!? こいつなんなの!?」って思って曲を書いたんです。曲ができて、まりなに電話して。「曲名は?」って聞かれて「『バンドやめろ』だよ」って言ったら「わかった。やろう!」って。まだ聴いてないのに(笑)。

まりな すぐにあのときのことを歌ってるんだってわかって。「やろう!」って言いました。もうね、天才なんですよ、この子!

──「オデッセイ・1985・SEX」は遠藤ミチロウさんのカバーだけど、見事に自分たちのものにしてるなと思った。

さとこ ミチロウさんのトリビュートアルバム(2010年12月リリースの「ロマンチスト~THE STALIN・遠藤ミチロウTribute Album~」と「青鬼赤鬼~ザ・スターリン・遠藤ミチロウ還暦&30周年トリビュートアルバム~」)が出たじゃないですか。あのとき「私たちも参加したかった!」って言っていて。

あんな 自分たちの中ではすっかり声がかかるものだと思っていたんだけど。

まりな あれ!? 誘われなかった!って(笑)

さとこ 自分たちがカバーするならこの曲だなと思って、勝手に練習していたんです。

──この曲、鳴らしていて気持ちいいでしょう?

あんな 最高! 歌えば歌うほどいい曲だなって思う。この曲は一発録音しました。

まりな 勢いが大事だからね。

「死ね」って言われたほうが安心する

──「死ねと言われて安心した」は学生時代に作った曲ですか?

あんな そうです。これは高校生のときに作った曲で。ライブを観にいって、幸せオーラをまき散らすようなバンドがいたんですよ。「ありがとう! みんなで楽しもうね!」って言うようなバンドで。そのときに「ああ、私は逆に『死ね』って言われたほうが安心するな」と思って。Theピーズの「シニタイヤツハシネ」っていう曲があるじゃないですか。私は、あの曲を聴いてすごく救われたんですよ。すごく安心した。

──「大丈夫だよ」とか言われるよりも。

あんな そう。

まりな 「あ、死んでいいんだな」って思えるよね。そう言われたほうが安心する。

──いつでも死ねると思えるからこそ、おもいっきり生きることもできる、と。

あんな そうそう。この曲もそういう思いで書きました。

──ラストの「これしかないのに」は、さっきの虚無感の話にもつながってくるけど、音楽をやってる自分さえどうでもよくなるような瞬間を描いていて。でも、それを突き詰めたらやっぱり自分には音楽しかないんだっていう結論を出してる曲ですよね。

あんな うん、そうですね。

──この曲があるからこそ、1曲目の「バンドやめろ」の「ギター一つしかないなら 歌う場所も一つしかないなら お前には譲りたくないな 覚悟がないならさっさと今すぐ バンド辞めろ!」っていうフレーズがより強く響く。

あんな 音楽をやっていて、音楽から離れてしまいたくなる瞬間もあって。ライブをやっていても、前のほうで聴いてないお客さんもいたりして。「こんなにやっても伝わらないんだ」って意味のないことをやってる感覚に陥るときがあるんですよね。そんなときはすごく悲しくなって、虚無になる。でも、考えれば考えるほどこんな私から音楽を取っちゃったらホントに何もなくなると思って「これしかないのに」って言葉が出てきたんです。

リスナーがハッ!と目覚めるような爆弾に

──このアルバムをリスナーにどう投げたいと思いますか?

あんな 投げたところで、思うことはみんな違うから。リスナーに届くまでに私たちの熱い思いを捻られたり、崩されたりすることもあると思うし。だから、なんとも言えないけど、このアルバムをリスナーが受け取ったときにその人がハッ!と目覚めるような爆弾になったらうれしいなと思います。でも、私たちからリスナーにお願いすることは何もないです。

──これからバンドでやってみたいことは?

あんな 女性限定ライブをやりたい。もっと女の人にライブを観てもらいたいんですよ。「生理」って曲があるんですけど、ああいうのは女の子に語りかけるように書いた曲なので。

──女だからこそ表現できる音楽をやっている自負もあるし。

あんな そうそう。そういう音楽をやってるから、もっと女の人に聴いてほしい。ガールズバンドって、恋愛の歌が多かったりとかするじゃないですか。そんなの聴きたくないし、みんなもっと本能が見えるような歌を歌えばいいのにって思うから。あとは、また新しいアルバムを作りたいし、もっといいライブをしていきたいですね。それだけでいいです。

インタビュー写真

日本マドンナ「バンドやめろ」ビデオクリップ

ニューアルバム「バンドやめろ」 / 2012年6月6日発売 / 1890円(税込) / redrec / sputniklab inc. / RCSP-0031 / Amazon.co.jpへ

CD収録曲
  1. バンドやめろ
  2. 愛ドル
  3. メディアダンス
  4. 死ねと言われて安心した
  5. オデッセイ・1985・SEX
  6. おまえを墓場にぶち込みたい
  7. どうせ血と骨と肉のかたまり
  8. これしかないのに
日本マドンナ「バンドやめろ」発売記念ツアー

2012年7月5日(木)愛知県 名古屋CLUB ROCK'N'ROLL
OPEN 18:30 / START 19:00
<出演者>
日本マドンナ / THE 抱きしめるズ / ファンシーマルコポーロ(オープニングアクト)

2012年7月6日(金)大阪府 十三FANDANGO
OPEN 18:30 / START 19:00
<出演者>
日本マドンナ / THE 抱きしめるズ

2012年7月19日(木)東京都 新宿red cloth
OPEN 18:30 / START 19:00
※ワンマンライブ

料金:全公演前売2000円 / 当日2500円(各公演ともドリンク代別途要)

日本マドンナ(にっぽんまどんな)

あんな(Vo, B)、まりな(G)、さとこ(Dr)の3人からなるロックバンド。2009年3月に高校生だった3人が出会い、バンドを結成する。直後から精力的なライブ活動を展開し、同年開催のアマチュアアーティストコンテスト「RO69JACK 09/10」で優勝。年末の「COUNTDOWN JAPAN 09/10」に出演を果たした。2010年7月、初の全国流通音源であるミニアルバム「卒業制作」をリリース。2011年1月の2ndミニアルバム「月経前症候群~PMS~」を経て、2012年6月に3rdミニアルバム「バンドやめろ」を発表。反骨精神と初期衝動あふれる歌詞、荒々しいガレージサウンド、エネルギッシュなライブで人気を獲得している。