モヤモヤを残して終わる狂気の世界
──最後の「紅い絆」は、今回収録された5曲の中では異質ですね。
自分の内面を晒すというよりは、狂気じみた世界の歌とでも言いましょうか。これをアルバムの最後に持ってくるというのが、私としてはけっこう気に入っています。ある種のモヤモヤ感を残して終わるので、そこで皆さんが何を思うのか、気になります。
──トラックもヘビーでアグレッシブというか、もっともメタル色が強くて。
かなり重たいです。でも前々からこういうサウンドの曲も歌いたいと思っていたので、自分としてはすごくうれしかったし、またやりたかったことが叶いました。しかも、この曲ではボーカルにエフェクトもガンガンかけてもらったので、それも含めて楽しかったですね。
──この「紅い絆」はニノミヤさんが声優として出演するテレビアニメ「カオルの大切なモノ」の主題歌でもあるんですよね。
そうなんです。原作はLINEマンガで連載している「鬼畜島」というマンガで、かなりグロテスクで猟奇的なお話なんですよ。その印象がとても強かったので、私が書いた歌詞の原案もそこそこ狂気じみてはいたんですけど、作詞・作曲・編曲のDjeDjeさんがその狂気を極限まで増幅してくださって。
──中二病的であり、宗教的でもある歌詞ですが、ニノミヤさんご自身と重なる部分はあるんですか?
原作は私の日常とはかけ離れたファンタジーではあるものの、作品と私の共通点を見つけることはできるというか。例えば「鬼畜島」には狂信者みたいな人が出てくるんですけど、何かに依存してしまう心とか、漠然とした不安とか、そういうキャラクターの根っこにある感情は理解できるんです。あと、善人に見えていたキャラクターも危機に瀕したときにエゴ丸出しの身勝手な人間に豹変してしまったりして。同じように、私自身も追い詰められたらどうなるかわからないなと感じたり。
陰キャなりに成長できた
──ニノミヤさんはデビューアルバムから“陰キャ”を貫きつつ、以前のインタビューで「作詞は自分を見つめ直す作業」ともおっしゃっていましたが、ご自身の陰キャ性に何か変化が見られたりは?
うーん……作詞して自分を見つめ直すたびに自分の嫌な部分がどんどん見えてきちゃって、たぶんこのネガティブな性格は一生かかっても変えられないんだなと思いましたね。じゃあ、変えられない自分の内面とどう向き合えばいいんだろうと考えたとき、私にはそれを音楽として表現するという手段があるので、自分のことを赤裸々に伝えていくことが私のやるべきことであるし、やりたいことでもあると再確認しまして。
──はい。
その結果、自分の心により素直になることを意識したというか……やっぱり絶対に他人に見せたくない部分もあるんですけど、その「見せたくない」という気持ちもひっくるめて表現できるのが音楽の強みでもあるのかなと。今回、“ロック”というテーマで、曲によっては今まで以上に強めの言葉で歌いつつ、その一方でまだまだ自分が気付いてない、言語化できていない性質とか感情もたくさんあると思ったんです。それをいかに表現していくかが当面の課題というか、今、私が目指していることではありますね。
──それって、自分の知られざるマイナス面を発掘していく行為でもあるわけですよね?
そうなんですよ(笑)。だからすごく恥ずかしいんですけど、それをやりたいと思えるようになったということは、陰キャなりに少しは成長できたと言えるのかもしれません。