はみ出したくてもはみ出せない自分
──次の5曲目の「私だけの、革命。」と、9曲目の「光なくても」はニノミヤさんお一人で作詞をなさっていますね。そしてどちらの曲も作曲・編曲は佐藤純一(fhána)さんです。
まず「私だけの、革命。」は、すごく自分と向き合った曲というか。1人で作詞をするにあたってスタッフさんに相談したところ「そのままのニノミヤユイを書けばいいよ」と言われたので、「そのままの私ってなんだろう?」と自分を見つめ直す作業から始まったんです。そこでまた自分の弱さを再認識したりして苦しい部分もあったんですけど、その必死さみたいなものが伝わればいいなと思います。
──「乱反射↘↑↗」にも反抗心みたいなものが表れていましたが、それが「私だけの、革命。」ではより外向きになっているように感じました。
やっぱり「普通」とか「正しさ」という言葉に縛られたくないと思う自分がいて。でも、そこからはみ出したくてもはみ出せない自分も同時にいて……。
──校則とかもいやいや守ってる感じなんですか?
そうですね。堂々と校則を破ってる人たちを見て「あの人もやってるんだから、私も……」と思うけど、いざとなると「やっぱり怒られたらどうしよう」とビクビクしちゃうっていう。「そういうとこだぞ!」といつも情けなくなるんですけど、その弱さを強さに変えるようにして歌詞を書いた曲とも言えますね。曲調もシンプルにカッコいいというか、すごくタイトな曲なので。
──先の「愛とか感情」とはまたタイプの違うピアノロックですね。
だから強い言葉が似合うと思って。「革命」というのも、自分の中で何かを変えられる人間になりたいという気持ちを表そうとして出てきた言葉ですね。
──一方の「光なくても」はプレーンなバラードです。
「私だけの、革命。」の歌詞が弱さを強さに変えて打ち出したものだとしたら、この「光なくても」は弱さを弱さのまま打ち出したというか。自分の抱えている不安やつらさをそのまま吐き出そうとしたので、これこそ本当に必死で書いた歌詞ですね。
──そうなんですね。「だけど愛したいよ 私を」とあるように、自己肯定感のある歌詞だとも思ったのですが。
確かに、自分を全肯定はできないけど、ある程度は肯定したいという気持ちは表れているかもしれません。曲調的にも優しいバラードなので、歌詞も全体的に柔らかい感じにしようと心がけていましたね。
──ボーカルも柔らかいですよね。
ありがとうございます。「私だけの、革命。」と「光なくても」は対になっていると思ったので、その差をはっきりつけたくて。佐藤さんもそういう方向でディレクションしてくださったので、すごくいい感じに仕上がったんじゃないかと。あと、たぶん佐藤さんは、一番たくさんお話しさせていただいた作家さんなんですよ。そのおかげで、最初の打ち合わせから作詞、レコーディングまで、自分が楽曲制作に深く関われたという達成感がありましたね。
アナグラムになりそうでならない自分
──このアルバムにはバグベアさんと佐藤さん以外にも個性的な作家さんが参加されていますが、2曲目の「ヤミノニヲイ」の作詞・作曲はカノエラナさんですね。曲名の「ヤミノニヲイ」が「ニノミヤユイ」のアナグラムにギリギリなっていないという。
そうなんです(笑)。アナグラムになりそうでならないのもまた私らしいなと思って。カノエさんとも直接お話しさせていただいたんですけど、なんだかお姉さんみたいな親しみを感じたんです。
──僕は一度だけカノエさんを取材したことがあるのですが、ニノミヤさんと波長が合いそうな気がします。
私は人見知りで緊張しいなんですけど、カノエさんは第一印象から「この人は大丈夫だ!」と思えたので、すごくお話ししやすかったです。私のパーソナルな部分や好きな曲をお伝えすると「うんうん、わかるわかる」とニコニコしながら聞いてくださって。実際、できあがった歌詞を拝見したとき「これ、私が書いたのかな?」と思ったくらい、私のことをわかってくださっているんです。
──「ヤミノニヲイ」の歌詞はカノエさんから見たニノミヤさんだと思いましたが、それが当たっていると。
当たってますね。特に1番Aメロの「楽しいことは嫌いじゃない けれどもやっぱり自信が無い」「矛盾を抱えて生きてます “嫌われたくない”」とかは本当にその通りです。自分の中にあるちぐはぐな部分というか、未整理で複雑な部分をすごくキレイに言い当てられているようで、びっくりしました。
──楽曲は、最近のカノエさんらしい大人っぽいジャズナンバーですね。
私も、本格的なジャズを聴いてきたわけではないんですけど、いわゆるジャズロックみたいな曲はすごく好きで歌ってみたいジャンルの1つだったので、それが叶ってうれしかったです。おしゃれで、リズムも小気味よくて、歌っていてすごく楽しい曲ですね。
──ニノミヤさんのボーカルも大人っぽいですよね。まだ18歳なのに、と言ったら失礼かもしれませんが。
私は地声がわりと低めで、自分でも落ち着いてるように聞こえる声だなと思っていて。それがうまくハマってくれたのかもしれませんね。
──続く3曲目の「Lemon Gelato」もジャジーな曲ですが、よりポップ。なので「ヤミノニヲイ」との対比も面白いですね。
「Lemon Gelato」はアルバムの中で唯一、女の子らしさを前面に押し出した曲ですね。さっきも言ったように「普通」とか「正しさ」というものに対して反抗している自分もいるけれど、ちょっと大人ぶってみたい年頃の女の子としての自分もいて。
──「Lemon Gelato」のボーカルには闇や陰がないですよね。
わりと平和に、夢を見るような気持ちで歌えましたし、「こういう自分もいるんだよ」というのをお見せできたと思います。
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聴いてくれる人に「刺され!」