ナタリー PowerPush - 人間椅子×シソンヌ
シソンヌ・じろう、憧れの和嶋慎治と初対面
苦しくても続けてこれたのは鈴木くんがいたからですね
じろう 長い活動の間に「もうやめようかなー」って思ったこと、ありました?
和嶋 やっぱり頭をよぎったことはあったね。すごく売れてたわけでもないからさ、金銭的な面で苦しくって、10年以上ずっとアルバイトしてたもん。で、毎日アルバイトをしてると生活に追われてつらいんですよ。その合間にライブをやって、練習やって、っていうのが続いたんだけど、僕らの苦しさが表に出ると、やっぱりお客さんが減るんだよね。動員が落ち込んじゃって、あのときはつらかったな。「俺、いつまでやれるかな」って思ってた。
──それでも続けられたのはなんでですか?
和嶋 ひと言で言うなら、鈴木くんがいたからですね。同郷の彼がいて、一緒に夢を追ってる感じがあったからやめなかった。
じろう あー。
和嶋 あと、自分から表現活動を取っちゃったら、もう何も残らないなと思って。30過ぎてもまだアルバイトしてたから、今ここでバンドやめちゃったら普通に就職もできないし、どっちにしろ路頭に迷うと。だったら自分が一番やりたいことは音楽活動だって思い直して、それで続けてきましたね。苦しいときに続けようと思えたのは、その2つの理由からです。
じろう いい話っすねえ。鈴木さんとは今でも津軽弁でしゃべりますか?
和嶋 もちろんもちろん。
じろう その関係がいいですよね。僕も津軽弁でしゃべりたくなることがすごくあるんです。標準語だとなんだか本音でしゃべれないっていうか、殻をかぶって話してるような気持ちになるんですよね。
和嶋 確かに。で、地元に帰ったときに津軽弁の女の子と話すと、かわいいなって思うよね(笑)。
じろう 街歩いてる女の子の会話、聞き耳立てちゃいます(笑)。
和嶋 たまに東京で、青森出身って言われたから津軽弁で話しかけても、津軽弁で乗ってこない人っているよね。
じろう いますいます。せっかく歩み寄ってるのに(笑)。郷土愛がない人ってたまにいるんすよ。
和嶋 そういうときに津軽弁で返してくれる人は、「あっ、青森への愛を持ってる人なんだ」って思えるもんね(笑)。方言って、相手とのコミュニケーションで懐に入る、すごくいいツールですよ。
大友克洋に返す言葉がなかった
和嶋 ちなみにじろうくんは、どういう経緯で芸人になったんですか?
じろう もともと英語の仕事をしようと思って外国語大学の短大に通ってたんですけど、そのときにシティボーイズにハマって、役者になろうと思って東京に来たんですよ。で、自分らで劇場を借りてお芝居をやってたんですけど、いつまでやっても埒が明かなかったから、NSCっていう吉本の養成所に入って。「これでダメだったら諦めよう」って思ってたのが、だらだら今も続いてる、みたいな感じです。
和嶋 なるほどね。東京では吉本に入る前に何年間ぐらい芝居をやってたの?
じろう 4~5年ちょっとですかね。
和嶋 がんばりましたね。売れない時代って絶対大事だと思うんですよね。下積みっていうかさ。そういう苦しみがわかってるからできることってあると思う。僕らはイカ天のおかげでデビューできたんですよ。あの番組がなかったらたぶん現在の僕はいないので、本当にラッキーだったと思ってるんだけど、下積みせずにデビューしちゃったことについて、自分でも「あっ、まだ早かったかな」って思ってたんです。当時テレビとかラジオにいくつか出させていただいて、あるときラジオの収録に行ったら、僕のほかに大友克洋さんがゲストだったんですよ。
じろう 「AKIRA」のマンガ家さんですね。
和嶋 そう。大友さんと同じテーブルに着いたら「おっ、デビューしたんだって?」って言われて、「はい、デビューさせてもらいました」って答えたら、「君、まだ全然苦労してないだろ」って。返す言葉がなかった。大友さんはすごく長い下積みの時期があって「AKIRA」で売れたっていう人だからさ。「俺、確かに苦労してねえわ」とか思って、それちょっとコンプレックスだったのよ。
じろう あー、はい。
和嶋 僕らもその後、売れない時代が続いて、今にして思えばホントよかったと思ってんだよ。苦しんだ10数年があってよかった。だから俺は今「あれから苦労しました」って大友さんに言いたいんすけど(笑)。じろうくんも、苦しんで芝居をやってた経験はすごい財産ですよ、きっと。
じろう そうですね。最近、深夜番組にちょこちょこ呼んでもらえるようになったんすけど、そこでやってることって、あの頃に考えてたものを形にして出してるだけなんですよ。
和嶋 わかります。確かに僕も、今作品として書いてるのは、売れない頃に悩んでたことだったりする。じろうくんもそういう下積みがあるなら大丈夫です。これからますますご活躍できますよ。
じろう がんばります(笑)。
人間椅子は悪天候のほうが合ってる
──お笑いのファンに人間椅子をオススメするとしたら、どうすればいいと思います?
じろう うーん、若い女の子って今、あんまり激しい音楽を聴かないんですよね。でも観に行ったら絶対好きになると思うんですけどね。僕らって吉本の中ではわりと特殊な芸人で、ファンの方もほかと比べて「普通じゃないものが好き」っていう人が多いと思うんですよ。
和嶋 あー、芸人の中でもサブカル寄りなんですね。
じろう はい。「普通じゃないものが好き」な人たちだから、僕が本気で熱を持ってオススメしたら、興味を持ってくれるんじゃないかと思うんですけどね……。
和嶋 そんな! そこまで真剣になってもらわなくていいですよ! まず自分の芸をさ、一生懸命やってください(笑)。
じろう いやいや、ホントに知ってほしいんですよ! どうやって推せば好きになるんだろうなー。
和嶋 最近はフェス好きの女の子がすごく増えてるから、そういう人たちにアピールできればなと思ってますね。僕らとしては。
──ただ人間椅子って、自然に囲まれて青空の下でライブをやってる姿があんまりイメージできないです(笑)。
和嶋 できないね(笑)。
じろう 雨降ってたら似合いそうな感じがしますよね(笑)。
和嶋 そうそう。悪天候のほうが合ってる(笑)。もしくは夜ですね。
──例えば、今回のアルバムで興味を持ってくれた人に、次に聴くアルバムとしてどれをオススメしますか?
じろう えー、どれを薦めればいいんだろうなあ……。やっぱり僕は「疾風怒濤」がすごくよかったんすよ。20年以上活動してて、初めて出したライブアルバム。
和嶋 うん。あれはいいです。ちょうどあの頃からお客さんが増えだして、僕らの状況が上向きになっていったので、そういう勢いも感じられると思います。あのCDを聴いていただければ、演奏力が一応そこそこあるんだってこともわかると思うので(笑)。
じろう 当時のインタビューで和嶋さんが「今まで納得できるものができなかったから、ずっとライブアルバムを出さなかった」とおっしゃっていたのを見て、これだけ長く活動してるのに一度も納得できなかったのかってビックリして。
和嶋 なんかね、このあたりの頃からイケる予感がしだしたんだよね。それで、出すなら今かなって思って。
──「疾風怒濤」の時期と比べて、今はさらによくなってると思います?
和嶋 思います。ライブやってて楽しいもんね。ホントに。
じろう そうですよね。また観に行きたいですよ。
和嶋 ぜひ! そうそうそう、僕もじろうくんのライブ観たいです。
じろう あー、ほんとですか! 8月に中野で5日間やるんですよ。お盆とかぶっちゃってるんですけど、ねぶたは終わってる時期なんで(笑)、よろしくお願いします!
- 人間椅子「なまはげ」(6/25発売AL「無頼豊饒」より)
- 人間椅子 ニューアルバム「無頼豊饒」/ 2014年6月25日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ
- 初回限定盤 [CD+DVD] 4800円 / TKCA-74080
- 通常盤 [CD] 3086円 / TKCA-74085
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CD収録曲
- 表徴の帝国
- なまはげ
- 地獄の料理人
- 迷信
- 生まれ出づる魂
- 悉有仏性(しつうぶっしょう)
- 宇宙船弥勒号(うちゅうせんみろくごう)
- リジイア
- ミス・アンドロイド
- グスコーブドリ
- がらんどうの地球
- 結婚狂想曲
- 隷従の叫び
初回限定盤DVD収録内容「『バンド生活二十五年~猟奇の果~』@TSUTAYA O-EAST 2014/1/18より」
- 新調きゅらきゅきゅ節
- 爆弾行進曲
- 時間からの影
- 怪人二十面相
- 九相図のスキャット
- ねぷたのもんどりこ
- 品川心中
- 踊る一寸法師
- 相剋の家
- 蜘蛛の糸
- 針の山
- 猟奇が街にやって来る
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人間椅子(ニンゲンイス)
和嶋慎治(G, Vo)、鈴木研一(B, Vo)、ナカジマノブ(Dr, Vo)による3ピースバンド。1989年に出演したTBSテレビ系「平成名物TV イカすバンド天国」で高い評価を獲得し、1990年7月にメルダックより「人間失格」でメジャーデビューを果たす。その後インディーズでの活動や、ドラマーの交代などを経ながらも、コンスタントにライブやリリースを重ねていく。Black Sabbath風のハードロックと地元・青森の津軽民謡を掛けあわせた独自のサウンドや、江戸川乱歩などに影響を受けた文学的な歌詞、確かなテクニックに裏打ちされたライブパフォーマンスで、音楽ファンの厚い支持を集め続けている。2012年、ももいろクローバーZのシングル「サラバ、愛しき悲しみたちよ」に収録された「黒い週末」に和嶋がギターで参加したことが話題に。2013年にはオジー・オズボーンのオーガナイズにより千葉・幕張メッセで開催されたロックフェス「OZZFEST JAPAN 2013」に出演し、そこでのパフォーマンスが大きな評判を呼ぶ。また2014年には、ふんどしの普及に貢献した著名人を表彰する「BEST FUNDOSHIST AWARD 2013」を受賞。同年6月にアルバム「無頼豊饒」をリリースし、8月からは結成25周年を記念したワンマンツアーを敢行する。
- 人間椅子ワンマンツアー「二十五周年記念ツアー ~無頼豊饒~」
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- 2014年8月20日(水)宮城県 enn 2nd
- 2014年8月22日(金)青森県 青森Quarter
- 2014年8月24日(日)北海道 BESSIE HALL
- 2014年8月30日(土)熊本県 DRUM Be-9 V1
- 2014年8月31日(日)福岡県 DRUM Be-1
- 2014年9月3日(水)広島県 HIROSHIMA BACK BEAT
- 2014年9月4日(木)香川県 高松MONSTER
- 2014年9月12日(金)大阪府 Shangri-La
- 2014年9月14日(日)愛知県 ElectricLadyLand
- 2014年9月20日(土)東京都 LIQUIDROOM ebisu
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シソンヌ
じろう、長谷川忍の2人によって2006年に東京NSCで結成された、現在「よしもとで一番単独ライブに芸人が観に来る芸人」と言われる実力派コントコンビ。2012年と2013年に若手お笑い芸人のコンクール「ABCお笑いグランプリ」にて2年連続で決勝進出を果たしている。また2013年のTBS「キングオブコント2013」でも準決勝に進出。現在は毎日放送のドラマ「新解釈・日本史」などにレギュラー出演している。8月13日から17日まで、東京・中野ザ・ポケットにてコント公演「シソンヌライブ『deux』」を開催することが決定している。
- シソンヌコントライブ「deux」
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- 2014年8月13日(水) START 19:00
- 2014年8月14日(木) START 19:00
- 2014年8月15日(金) START 19:00
- 2014年8月16日(土) START 14:00 / 18:00
- 2014年8月17日(日) START 12:00 / 16:00
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会場:東京都 中野ザ・ポケット
料金:前売3500円 当日4000円
チケット:チケットよしもと、チケットぴあ、イープラス、ローソンチケットにて発売中。
問合せ:チケットよしもと 0570-550-100(10:00~19:00)