ナタリー PowerPush - 人間椅子
和嶋慎治と大槻ケンヂのサブカルバンド人生
僕らは時代を切り取らないから、いつの時代にも隅にいる
──人間椅子と筋肉少女帯の話をすると、昨年5月に赤坂BLITZで対バンライブがありましたね。
大槻 そうそう。発表したとたん満員になってね。これは世代的なもので、懐かしさで完売したのかなと最初は思ったんです。でもそのときに、両方のメンバーでなかばシャレでやってる、BLACK SABBATHならぬブラック菩薩っていうバンドがあるんですけど。
和嶋 赤坂BLITZで、そんな隠し芸的なことをなぜかやってしまいましたね(笑)。
大槻 内田くんがギター弾いて、(BLACK SABBATHの)「アイアンマン」をやったら、イントロのフレーズで、会場中から「ウォーオーオオオー」ってすごい大合唱が起こったの。それ見たときに、ヘヴィメタル、ヘヴィロックっていう共通する部分を支持する層が意外といるんだなってわかってビックリしたの。
和嶋 あれはすごかったね。
大槻 でもさ、温かい目で見てくれるお客さんが増えたね。昔と違うなって思う。
和嶋 増えましたね。今、温かいですよ。ヤジ飛ばす人もいないもんね。
大槻 いないね。あと、「本当にあなたたちに興味がありません。次のバンドを待ってます」って目で見てる最前列の人とかね(笑)。
和嶋 そういう人いたね(笑)。昔のほうがそういうのあからさまだったよね。今は、たとえそうであっても、一緒に場を楽しんでくれてる感がありますね。
大槻 お客さんも、対バンの楽しみ方をわかってきたのかなって。
──じゃあ今はバンド活動もやりやすい環境になったと。
和嶋 それはもうね、ハイ(笑)。動員も増えてるし、ありがたいです。筋少も若いお客さんいるでしょ。
大槻 うん、10代の子とかいますよ。
──そういう若い層からも支持される理由は、どのあたりにあると思います?
大槻 僕が思うには、時代を歌ったバンドは、特に青春の時代ですよね、時代を切り取ったがゆえに、時代が経つとやはり古びてしまうんですよね。今、80年代の肩パットのジャケット着たポップスバンドを見たときの、ひえーって感じ。でも、人間椅子も筋肉少女帯も、時代を切り取らないというか、時代に沿わないんですよね。その分、メインに浮上することはないんだけど(笑)。
和嶋 必ず横のほうだよね(笑)。
大槻 そうそう。なんだけども、メインじゃないがゆえに、いつの時代にも隅にいる。どんな時代にも裏道はある、ってことですよ(笑)。
バンド以外の事業で一発当てるとか、我々にはなさそうだね
和嶋 でもメインじゃないにしても、こうやって長いこと活動できているのはいいことですよね。
大槻 いいことですよ。だって25年も経つと、それこそ故郷に帰って音楽やってない人もたくさんいるし。
和嶋 同期とかあの頃のバンドで解散したバンドなんてたくさんいるし。
大槻 いるね。あと、違うことで当ててたりもするじゃない。下北で何軒もお店やってたりさ。
和嶋 その人生は成功してますよ。
大槻 我々は、そういうのなさそうだね(笑)。
和嶋 はい(笑)。
──音楽中心の人生をこれからも続けていくわけですね。
和嶋 そうですね。でも、バンドやるって意外とエネルギー使うから、あんまりほかのことができないんですよね。だからそれほどお金にならなくて。
大槻 外国のミュージシャンが意外なことやってるよね。(THE ROLLING STONESの)チャーリー・ワッツが犬のブリーダーだったり。KISSのジーン・シモンズと対談したことがあるけど、音楽の話よりも「中国の土地を買うといいぜ。もうじき地価が上がるから」って話を中心にしましたけど(笑)。
──ジーン・シモンズは、かなりのビジネスマンとして有名ですよね。
大槻 まあ、人間椅子と筋少はそういう感じはないですよ。バンド人生ですね。
和嶋 サブカルですからね。
収録曲
- 此岸御詠歌
- 黒百合日記
- 地獄変
- 桜爛漫
- ねぷたのもんどりこ
- 新調きゅらきゅきゅ節
- 猫じゃ猫じゃ
- 蜘蛛の糸
- 十三世紀の花嫁
- 月のモナリザ
- 時間からの影
- 人生万歳
- 衛星になった男
- 筋肉少女帯ニューアルバム「公式セルフカバーベスト 4半世紀」 / 2013年5月29日発売 / 3000円 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ / TKCA-73905
- 筋肉少女帯ニューアルバム「公式セルフカバーベスト 4半世紀」
収録曲
- 中2病の神ドロシー ~筋肉少女帯メジャーデビュー25th記念曲
- 妖精対弓道部 ~「妖精対弓道部」主題歌
- 日本印度化計画
- 踊るダメ人間
- 釈迦
- 香菜、頭をよくしてあげよう
- 機械
- 再殺部隊
- 蜘蛛の糸
- キノコパワー
- パノラマ島へ帰る
- くるくる少女
- 孤島の鬼
人間椅子(にんげんいす)
和嶋慎治 (G, Vo)、鈴木研一(B, Vo)、ナカジマノブ(Dr, Vo)による3ピースバンド。1989年に出演したTBSテレビ系「平成名物TV イカすバンド天国」で高い評価を獲得し、1990年7月にメルダックより「人間失格」でメジャーデビューを果たす。その後インディーズでの活動や、ドラマーの交代などを経ながらも、コンスタントにライブやリリースを重ねていく。確かなテクニックに裏打ちされたライブパフォーマンスや、ハードロックを基調とした独自のサウンド、文学的な歌詞などで、音楽ファンの厚い支持を集め続けている。2012年、ももいろクローバーZのシングル「サラバ、愛しき悲しみたちよ」に収録された「黒い週末」に和嶋がギターで参加したことが話題に。2013年にはオジー・オズボーンのオーガナイズにより千葉・幕張メッセで開催されたロックフェス「OZZFEST JAPAN 2013」に出演し、同年8月にアルバム「萬燈籠」をリリースした。
筋肉少女帯(きんにくしょうじょたい)
1982年に中学の同級生だった大槻ケンヂ(Vo)と内田雄一郎(B)によって結成。インディーズでの活動を経て、1988年にアルバム「仏陀L」にてメジャーデビューを果たす。1989年に橘高文彦(G)と本城聡章(G)が加入し、「日本印度化計画」「これでいいのだ」「踊るダメ人間」などの名曲を発表。特に「元祖高木ブー伝説」はチャートトップ10入りを記録し、大きな話題に。大槻による不条理&幻想的な詩世界とテクニカルなメタルサウンドが好評を博すものの、1998年7月のライブをもって活動を凍結。各メンバーのソロ活動を経て、2006年末に大槻・内田・橘高・本城の4人で活動再開を果たす。2007年9月には約10年ぶりのオリジナルアルバム「新人」をリリース。日本武道館公演や「FUJI ROCK FESTIVAL」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」といった大型イベントへの出演など、精力的なライブ活動を展開する。2013年にはメジャーデビュー25周年を記念して、新録音によるセルフカバーベストアルバム「公式セルフカバーベスト 4半世紀」を発表した。