ナタリー PowerPush - 人間椅子
和嶋慎治と大槻ケンヂのサブカルバンド人生
BLACK SABBATHと地元・青森の津軽民謡と江戸川乱歩を掛け合わせた、独自すぎるサウンドを貫き続け、ヘビーさとおどろおどろしさにさらに磨きをかけたニューアルバム「萬燈籠」を完成させた人間椅子。そして、メジャーデビュー25周年を迎え、記念アルバム「公式セルフカバーベスト 4半世紀」をリリースした筋肉少女帯。80年代終わりから90年代初頭にかけて巻き起こった「イカ天」ブーム、バンドブームの中でも、ひときわ異彩を放ち、今、再び注目を集める両者である。長きにわたって交流のある、人間椅子の和嶋慎治(G, Vo)と筋肉少女帯の大槻ケンヂ(Vo)の対談が実現。息もピッタリな2人のトークをご堪能あれ。
取材・文 / 土屋恵介 撮影 / 小坂茂雄
おごりグセのある人、おごられクセのある人
──お2人の出会いはいつ頃ですか?
大槻 僕は「イカ天」で人間椅子を見て、それからどこで会ったっけ?
和嶋 たぶん、ちゃんと挨拶したのは、「ヒットスタジオR&N」っていう「夜のヒットスタジオ」のロックバージョンの番組があって、それで一緒になったんです。それがデビューしてすぐだったから、90年かな。
大槻 その頃よく、マサコさんとかと飲んだりしたよね。
和嶋 したした。お好み焼き屋の2階で飲んだの覚えてる(笑)。
大槻 それ明け方でしょ。あのときは、みうらじゅんさんが「君は千手観音」って曲を作って大仏連合でデーモン小暮閣下の番組(「ロック鳴缶II」)に出たとき。人間椅子が演奏して、僕もゲストボーカルで、元K-1の佐竹雅昭さんも叫び担当として出て、終わったあと全員で高円寺の沖縄料理屋で飲んで、それから一番星ってお好み焼き屋に行って朝まで。
和嶋 あー、そうですね。
大槻 あと、一時期ワジー(和嶋)と近所に住んでたときもあったよね。
和嶋 高円寺近辺でね。
大槻 でも、その頃は全然飲み行ったりはしてないよね(笑)。
和嶋 仕事でたまに会うくらいで。何か距離を取りながら(笑)。
大槻 僕ら社交性があまりないので。
和嶋 僕も若いときはもっと人見知りで、街角で大槻くん見かけても声かけられなくて(笑)。
大槻 わりと最近、(人間椅子のドラマー、ナカジマ)ノブさんに、突然「メシ食いに行きましょう」って誘われたよ。彼は社交的じゃないですか。
和嶋 ノブくんは社交的ですね。
大槻 そしたら、オレ先輩なのに、うどんすきをおごってもらっちゃったんだよね。お代をって言ったら、「いいです、僕払っときました」って。何か借りを返さないとなー。
和嶋 そういう意味ではさ、人によって、おごりグセのある人と、おごられクセのある人ってありますよね。
大槻 オレどっちもないな(笑)。
和嶋 僕、どっちかというと、おごられクセの人なんですよ。それはよくないなと思って、最近は出すようにしてます。年取った人間の務めかなって。
大槻 あれをやりたいんだよね。若いバンドとばったりごはん屋で会って、がんばりたまえとか言って、オレが先に帰って、その子らがお会計しようと思ったら、「先ほど、大槻さんにお代はいただいております」っていうの(笑)。そのチャンスをずっと探ってたの。この間、中野のカレー屋さんで知ってる若いバンドの子と一緒になってさ。
和嶋 おー、おごったんですか。
大槻 それがさあ、オレが先にカレー屋さん出ちゃって20歩くらい歩いたときに、「あー、オレはなぜ払っておかなかったんだー」って思ったんだよね(笑)。
和嶋 あれはクセですよ。じゃないとすぐ出てこないんですよ。僕は、飲んだときは気前よくなるから、最近クセつけてます。で、家に帰って「なんでこんな金ないんだ?」ってことはよくあるんですけど(笑)。でも、だんだん、おごることができるようになりました(笑)。
大槻 僕もおごれるようにがんばらないと(笑)。
みうらじゅんさんがこっそり「OZZFEST」に来て泣いたって
──人間椅子は5月に「OZZFEST JAPAN」のステージに立ちましたね。
大槻 僕、「OZZFEST」観に行ったですよ。
和嶋 ありがとうございます。
──大槻さんは「OZZFEST」での人間椅子のライブはどうでしたか?
大槻 いやー、すごくカッコよかった。でもあれだね、スタンディングだとワーッて人が前に集まって、出られない状況になるじゃない。あれ怖いよね。お客さんよく平気だなって。
和嶋 人の波に巻き込まれて、自分じゃどうしようもない状況ですよね。
大槻 暴動に巻き込まれた一般人みたいになって、怯えてたらステージにスキンヘッドの鈴木(研一、人間椅子のベース&ボーカル)くんが出てきて、なおさら怖くてさ(笑)。
和嶋 すごく内輪の話だけど「OZZFEST」のとき、大槻くんと内田(雄一郎、筋肉少女帯のベース)くんと喜国(雅彦、マンガ家)さんが3人で話してたでしょ。みんな見てて、すごく目立ってたみたいね。
大槻 そうなの? みんな人間椅子を観に来てたんだよね。あと、みうらじゅんさんに「OZZFEST」来てくださいって、ワジーが電話したんでしょ?
和嶋 うん、オレ招待したよ。
大槻 で、みうらさん「OZZFEST」が、小津安次郎の映画をいっぱい観る「小津フェス」なのかと思って(笑)、チケットを喜国さんにあげたって。でも、結局みうらさん来たんだよね。
和嶋 うん、来てくれましたよ。僕らを観て帰りましたよ。
──Twitterでも話題になってましたね。みうらさんが喜国さんにチケットあげて、でも、みうらさんはこっそり来て、憧れのBLACK SABBATHと同じステージに立つ人間椅子の晴れ舞台を観て泣いたって話が。
大槻 そうそう。みうらさんが言ってたから、それホント。最近年取ると涙もろくなるって(笑)。人間椅子ががんばってる姿を観て泣けてきたって。
和嶋 みうらさんが言ってたんだ? ホントの話なんだ。
大槻 もうね、今ノリにノってますよ人間椅子は。
収録曲
- 此岸御詠歌
- 黒百合日記
- 地獄変
- 桜爛漫
- ねぷたのもんどりこ
- 新調きゅらきゅきゅ節
- 猫じゃ猫じゃ
- 蜘蛛の糸
- 十三世紀の花嫁
- 月のモナリザ
- 時間からの影
- 人生万歳
- 衛星になった男
- 筋肉少女帯ニューアルバム「公式セルフカバーベスト 4半世紀」 / 2013年5月29日発売 / 3000円 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ / TKCA-73905
- 筋肉少女帯ニューアルバム「公式セルフカバーベスト 4半世紀」
収録曲
- 中2病の神ドロシー ~筋肉少女帯メジャーデビュー25th記念曲
- 妖精対弓道部 ~「妖精対弓道部」主題歌
- 日本印度化計画
- 踊るダメ人間
- 釈迦
- 香菜、頭をよくしてあげよう
- 機械
- 再殺部隊
- 蜘蛛の糸
- キノコパワー
- パノラマ島へ帰る
- くるくる少女
- 孤島の鬼
人間椅子(にんげんいす)
和嶋慎治 (G, Vo)、鈴木研一(B, Vo)、ナカジマノブ(Dr, Vo)による3ピースバンド。1989年に出演したTBSテレビ系「平成名物TV イカすバンド天国」で高い評価を獲得し、1990年7月にメルダックより「人間失格」でメジャーデビューを果たす。その後インディーズでの活動や、ドラマーの交代などを経ながらも、コンスタントにライブやリリースを重ねていく。確かなテクニックに裏打ちされたライブパフォーマンスや、ハードロックを基調とした独自のサウンド、文学的な歌詞などで、音楽ファンの厚い支持を集め続けている。2012年、ももいろクローバーZのシングル「サラバ、愛しき悲しみたちよ」に収録された「黒い週末」に和嶋がギターで参加したことが話題に。2013年にはオジー・オズボーンのオーガナイズにより千葉・幕張メッセで開催されたロックフェス「OZZFEST JAPAN 2013」に出演し、同年8月にアルバム「萬燈籠」をリリースした。
筋肉少女帯(きんにくしょうじょたい)
1982年に中学の同級生だった大槻ケンヂ(Vo)と内田雄一郎(B)によって結成。インディーズでの活動を経て、1988年にアルバム「仏陀L」にてメジャーデビューを果たす。1989年に橘高文彦(G)と本城聡章(G)が加入し、「日本印度化計画」「これでいいのだ」「踊るダメ人間」などの名曲を発表。特に「元祖高木ブー伝説」はチャートトップ10入りを記録し、大きな話題に。大槻による不条理&幻想的な詩世界とテクニカルなメタルサウンドが好評を博すものの、1998年7月のライブをもって活動を凍結。各メンバーのソロ活動を経て、2006年末に大槻・内田・橘高・本城の4人で活動再開を果たす。2007年9月には約10年ぶりのオリジナルアルバム「新人」をリリース。日本武道館公演や「FUJI ROCK FESTIVAL」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」といった大型イベントへの出演など、精力的なライブ活動を展開する。2013年にはメジャーデビュー25周年を記念して、新録音によるセルフカバーベストアルバム「公式セルフカバーベスト 4半世紀」を発表した。