ナタリー PowerPush - NIKIIE
自分の闇を肯定する「CHROMATOGRAPHY」
NIKIIE史上一番優しい「光の月」
──続いての「光の月」は、優しさに満ちたピアノがものすごく印象的な1曲です。
この曲は「Running Bird」と「harmonic harmonist」でギターを弾いてくださった出羽(良彰)さんに初めてアレンジをお願いしました。元々、私のデモにはピアノのリフがあったんですけど、出羽さんが考えてくれたピアノのフレーズがすごくステキだったので。それを譜面に落としてもらって弾いたんですけど、難しかったんですよね。
──どういった難しさだったんですか?
この曲のイントロのピアノは、強く響かせるのではなく、ハンマーが当たるか当たらないかのギリギリの響きが一番合う感じだったんですよ。だからもうほんとに優しく弾かなくちゃいけなくって。それがすごく難しかったんです。「まだ強い、まだ強い」みたいな感じで、空き時間もずっと練習してました。NIKIIE史上、一番優しく弾きました(笑)。
──全体的に物憂げな雰囲気がありつつ、でもすごくキレイな世界観を感じさせるサウンドが素晴らしいですよね。
歌詞だけ見ると、割と朝焼けに近い感じというか、希望が見えてパーッと開いていく感じがあると思うんですよ。でも、アレンジでは真っ暗な部屋の中に上から少しずつ光が降りてくるような感じをイメージしてもらいました。なので、広がっていく音像というよりは、ものすごく近い感じがあると思うんです。かと思えば、リバーブで音を遠くへ飛ばしてみたりもしていて。そういうバランス感を大事にしましたね。
「Everytime」のリズムが自分の中に入ってくる
──「Everytime」はNIKIIEさんとNIKI BANDでアレンジされたナンバーですね。
この曲もギターで書きました。頭はちょっと自信がなくてネガティブな感じで始まるんですけど、サビで急に明るいメロディに変化して開けていく流れですね。私の中に全体のイメージが強くあったので、それを男らしい音を奏でる方々に再現してもらいました。
──4つ打ちのビート感もデモの段階からイメージしていたんですか?
そうですね。その4つ打ちのリズムと、アコギをミュートで弾いてもらうっていうイメージがまずあったんです。あとはもうスタジオに集まってセッションで作っていきました。それぞれのミュージシャンの方々の手クセというか、引き出しを思う存分使っていただいてできたアレンジだと思います。
──この曲はライブでもすでに披露されているそうですね。
やりました。イントロからBメロまで盛り上がりを引っ張る曲なので、みんな「どう来るの?」っていう感じで聴いてましたけど、サビでパッと開ける感じのギャップを楽しんでくれてる感じは伝わってきましたね。夏フェスなんかでもやっていく中で、自分自身のカラダにこの曲のリズムがどんどん入ってきていたのを実感していたので、次のライブではもっと広がった表現ができそうな気がしてます。
「harmonic harmonist」で誓ったこと
──そしてラストは「harmonic harmonist」。僕、これ一番好きでした。メロディがすごくいい。この曲ではNIKIIEさんの決意が歌われていますよね。
はい。自分にとっての誓いの歌、宣誓する歌だと思います。「hachimitsu e.p.」を出したあと、キャンペーンやツアーで全国を回っていく中で、私は表現する立場でいられてるんだなっていうことを改めて実感したんですよ。で、そういう場所にいる人間だからこそ、聴いてくれてる人以上に夢を見ていたいなって思ったし、好きなものや愛してるものをちゃんと自覚していたいなって思ったんです。そういう今後の姿勢をフラットに表現した曲なんですよね。
──途中で心臓の鼓動のような音が入っているのもすごく効果的ですよね。NIKIIEさんの生きた意志が感じられるというか。
あそこは頼んでなかったんですけど、善太郎さんが作ってくれていて。この曲はBメロが最後に出てきたりとか、ちょっとスタンダードではない自由な構成なので、そういう心臓の鼓動のようなセクションを入れてくれたことで、より曲として広がった感じがしましたね。
見にアルバム「CHROMATOGRAPHY」 / 2012年9月19日発売 / 日本コロムビア
CD収録曲
- Duty Friend
- Runnning Bird
- 光の月
- Everytime
- harmonic harmonist
初回限定盤DVD収録内容
- ito.
- 3sec.
- Duty Friend
- Everytime
- good night my sweet home
NIKIIE(にきー)
1987年茨城県生まれの女性シンガーソングライター。4歳からピアノを弾き、16歳の夏から作詞作曲を始める。高校時代のバンド活動を経て、17歳よりピアノ弾き語りでソロ活動を開始。高校卒業後に上京し、本格的にライブ活動を始める。精力的なライブ活動が現在のレーベルの目に留まり、2010年12月にシングル「春夏秋冬」で日本コロムビアよりメジャーデビュー。3rdシングル「紫陽花」は、東日本大震災の発生を受けフリーダウンロードと無料CD配布の形でリリースされた。2011年7月、1stフルアルバム「*(NOTES)」を発表し、これに伴う初の全国ツアーを大成功に収める。2012年には新曲「Duty Friend」がアニメ「LUPIN the Third -峰不二子という女-」のエンディングテーマに起用され話題に。同年9月には同曲を含むミニアルバム「CHROMATOGRAPHY」を発表。