ナタリー PowerPush - NIKIIE

自分の闇を肯定する「CHROMATOGRAPHY」

「Duty Friend」=義理友

──今回の作品を作っていく中ではどんな楽しさがありましたか?

どの作品でもそうなんですけど、アレンジしていく段階で、感覚で伝えていたものがどんどん具現化されていく楽しさはやっぱりありましたね。そういった中で「Duty Friend」なんかは今までになかったアレンジだし、サックスを使うことも初めてだったので、どんなアプローチになるかっていう部分で学ぶことがすごく多かったです。歌入れでは自分の知らない一面を知ることもできて、それが活力に代わってもいきましたし、ものすごく楽しい時間でした。

──「Duty Friend」はかなり衝撃的なトライですよね。歌声も含め、NIKIIEさんの新たな魅力がグッと詰まっていると思います。

この曲はジャジーでファンクなコードの積み重ねだったので、そういった雰囲気に合った深く太い声で歌うのもいいとは思うんですけど、今回の場合は歌詞的にちょっと違うかなって思ったんです。なので、ちょっとアンニュイな感じを出すように、けだるそうに歌ってみました。

──そもそも最初にこの曲ができたときはどんなイメージだったんですか?

この曲はドラムのループに乗せたギターのカッティングで作ったんですよ。ほんとにシンプルに作っていたので、アレンジはどうにでもなるかなとは思ってました。ただ、最初に鳴らしていたリズムがちょっとR&Bっぽい雰囲気だったので、メロディラインや歌詞の運びはそこに影響されたところもあります。なので、ちょっとファンクなブラックミュージック的アレンジはぴったりだったと思いますね。この曲が呼んでいたアレンジだったというか。

──SOIL & "PIMP" SESSIONSの元晴さんによるサックスがものすごくいい味を出してますよね。

カッコいいですよね。ボツになったテイクもものすごく良かったので、もったいないなあって思いつつ。曲頭のむせびなくような雰囲気はすごくこだわって録っていただきました。

──この曲のタイトルは“義理友(ギリトモ)”みたいなイメージですかね?

そうですそうです! 義理友です。キツイですよねえ(笑)。女の子同士の友達関係を歌った曲なんですけど、私自身そういうことで悩むことが多いんですよ。女の子はグループで行動するけど、そこからちょっと外れると怒られたり嫉妬されたり無視されたり。しかもそれをあんまり表面に出さないっていう。それがすごく苦しいなってずっと思ってたんですけど、そういうことって私だけじゃなくて結構みんなが経験してることだっていうことを知って。だったらこれは曲として形にしておこうって思ったんです。

「Running Bird」は覚悟の歌

──2曲目の「Running Bird」は、飛べなければ走ればいいっていうメッセージがNIKIIEさんっぽいなあと思いました。

あははは(笑)。私って、どこか足りてない感が常につきまとってるんですよ。私なんかの分際でみたいな気持ちというか、やりたいと思ったことでも自分にはできるはずがないって思ってしまうんです。実際そうやってあきらめてきたことも多いんですけど、振り返ってみればすごくもったいないことをしてきたなって思うんです。だから、自分で制限を作って無理やりあきらめさせるのではなく、他人とどんなに形が違ったとしても自分がやりたいと思うことは貫いていこう。そうすれば必ず自分だけの形で目的地に到達できるんじゃないかなと思って。その覚悟を歌った曲なんですよね。

──心地よい流れを描くサウンドがメッセージをしっかり運んできてくれますね。

今回はギターで書いた曲がとても多いんですけど、これもギターで作りました。デモで弾いてたアコギのリフを(渡辺)善太郎さんが生かしてアレンジしてくれたんですよ。頭から盛り上がるのではなく、徐々に覚悟を決めていく感じが出せたのが良かったなって思いますね。後半に向けて強さが増していくような。

──この曲で描かれているような覚悟を持って生きると、人生が大きく変わってきそうですよね。

そうですね。ただ、やると決断するまではすごくつらいと思う。あきらめたり手放したりするほうが絶対ラクだから。でも決めたからにはもうやるしかないんで進んでいけるようになるんだと思います。私自身、この曲を書いたからといってそういうことが全て解決したわけじゃないので、これからも常に葛藤を繰り返して生きていくんだと思うんですけど。

──これからはこの曲がNIKIIEさんにとっての指針になっていくんでしょうね。

うん。そういう決断を必要とするシチュエーションになったときに、この覚悟を思い出せますからね。こういう曲ができたことがうれしいです。

見にアルバム「CHROMATOGRAPHY」 / 2012年9月19日発売 / 日本コロムビア

CD収録曲
  1. Duty Friend
  2. Runnning Bird
  3. 光の月
  4. Everytime
  5. harmonic harmonist
初回限定盤DVD収録内容
  1. ito.
  2. 3sec.
  3. Duty Friend
  4. Everytime
  5. good night my sweet home
NIKIIE(にきー)

1987年茨城県生まれの女性シンガーソングライター。4歳からピアノを弾き、16歳の夏から作詞作曲を始める。高校時代のバンド活動を経て、17歳よりピアノ弾き語りでソロ活動を開始。高校卒業後に上京し、本格的にライブ活動を始める。精力的なライブ活動が現在のレーベルの目に留まり、2010年12月にシングル「春夏秋冬」で日本コロムビアよりメジャーデビュー。3rdシングル「紫陽花」は、東日本大震災の発生を受けフリーダウンロードと無料CD配布の形でリリースされた。2011年7月、1stフルアルバム「*(NOTES)」を発表し、これに伴う初の全国ツアーを大成功に収める。2012年には新曲「Duty Friend」がアニメ「LUPIN the Third -峰不二子という女-」のエンディングテーマに起用され話題に。同年9月には同曲を含むミニアルバム「CHROMATOGRAPHY」を発表。