ナタリー PowerPush - 新山詩織
「ひとりごと」に込めた願いごと+私の好きな4作品
新山詩織がニューシングル「ひとりごと」を11月13日にリリースする。4月のメジャーデビューから3作目となる今作では、前2作「ゆれるユレル」「Don't Cry」とは異なり、新山が自問自答しながら書き上げた強い言葉が並んでいる。小さい頃から対人関係に悩み、傷付き、自己嫌悪に陥っていたという彼女から、このような前向きな歌詞が生まれたのはなぜなのか。今回はその意識変化の理由について、新山本人に話を聞いた。
また後半では新山が愛聴するCD作品について尋ねた。彼女はロック好き少女の顔をのぞかせながら思いの丈を語ってくれた。
取材・文 / 伊藤実菜子
夏フェスの経験
──今年の夏は大型フェスに初出演しましたが、ステージに立ってみていかがでした?
「JOIN ALIVE」も「ROCK IN JAPAN FES」もずっと憧れのフェスだったので、今まで観客として楽しんでた自分が今度はステージに立って歌うっていうことに、当日は興奮とうれしさと「どんなふうになるんだろう」っていう不安が入り混じった不思議な気持ちでした。ライブ中は今までと同じようにやったけど、終わったあとは自分がどんなふうに歌えばいいのかっていうのをまた考えたりするようにもなって。
──具体的にどういうことを考えたんですか?
単純に、どうやったら今まで以上に自分をうまく出していけるかっていうことですね。やっぱり緊張はするけど、それは見せずにもっと堂々としていたいし、完全に「自分だけのステージ」っていうものを作っていきたいなと思いました。
──そうなんですね。ところで詩織さんが憧れているチバユウスケ(The Birthday)さんとは「JOIN ALIVE」で出演日が同じだったそうですが、お話できました?
いや、全然です。自分のバンドメンバーが「さっきいたよ」って言ってくれたりもしたんですけど、見かけることすらなくて。自分にはまだ早い、って神様が会わないようにしてくれたのかも(笑)。
レコーディング2日前に歌詞を書き直した
──「ひとりごと」の歌詞はこれまでのシングル曲「ゆれるユレル」「Don't Cry」に比べると、前を向き始めた印象があって。今まではつらいことやモヤモヤする気持ちを歌っていましたが、今回はそこから抜け出すための答えを見つけようとする姿勢が見えます。
実は「ひとりごと」の歌詞は、これの前にまた別のテーマで書いていたものがあって。レコーディングの2、3日前ぐらいまでその歌詞でいこうとしてたんですけど、ギリギリまで見直してたら「自分が今歌いたいこととなんか違うな」っていう思いが出てきて、全部書き直すことにしたんです。ちょっと1から書いてみようと思ってその日の夜のうちに書き終えたのがこの歌詞です。
──書き直す前の歌詞はどんなテーマだったんですか?
初めて渋谷駅のハチ公口から出て、スクランブル交差点に立ったときの気持ちを書いたものだったんですけど。周りと自分を比べている気持ち……周りと変に差を感じてる自分のこととか、人とのすれ違いとか、そういうことを「交差点」をキーワードに書いてました。
──その歌詞が今歌いたいことではないと思ったのはどうしてですか?
はっきり言葉にするのは難しいんですけど……なんか違うと思って。でも書き直したくても言葉が全然出てこなくて、どうしようどうしようってため息ばっかりついてたんですけど、ふとした瞬間についたため息と一緒に自分の中にあった気持ちがバーッと出てきて。衝動的に「だからさ」を書いたときと同じ感じで、ため息っていう言葉から本当に一気に書けた。
自分はどうありたいのか
──人とのすれ違いを書いた詞を「なんか違う」と思ったというのは、今までの詩織さんからしたら大きな変化なんじゃないでしょうか。前の詞を書いてから書き直すまでに、日常生活で何かが起こったりしたんですか?
特別なことはなかったと思うんですけど。たぶん今までとは違う正直な気持ちが、ちょうど今のタイミングで出てきたんだろうなって思います。
──正直な気持ちとは?
これから自分はたくさんの人にどんなことを歌っていきたいんだろうとか、どうありたいんだろうっていう。今まで自分の日常には学生生活っていうものが一番にあって、その中でのできごとを何よりも一番に考えていたんですけど、当たり前だけどそれがずっと続くわけじゃない。だから、それがなくなったあと自分は何を歌いたいのかっていうことを考えて、それを自分に質問しながら歌詞を書いていった感覚でした。
──なるほど。前2作は学校が舞台だったけど今回は学校じゃないので、卒業が近いことが関係してるのかなって思ってたんですけど、卒業後の自分を見据えながら書いたということなんですね。
きっとそうだと思います。言葉の表現とかは考えながら書いたけど、自分から出てきた気持ちそのままです。それに今までは完全に自分に向かって励ますような歌詞を書いてたけど、今回は初めて、今思ってることを誰かに伝えたいと思って書きました。歌詞の「誰も知らない笑顔の花」っていうのは聴いてくれる人たちの例えで。
──そうなんですね。ではこの曲はリスナーへ向けた、シンガーソングライターとしての決意表明とも言えますね。
そうですね。自分の新たなスタートになる曲だと思ってます。
収録曲
- ひとりごと
- イージュー★ライダー
- ひとりごと-instrumental-
ライブスケジュール
- 第13回青少年のためのコンサート
- 2013年12月14日(土)
新潟県 三条市中央公民館大ホール
OPEN 14:30 / START 15:00
新山詩織(にいやましおり)
1996年生まれのシンガーソングライター。幼少期より父親の影響でブルース、パンク、ロックを聴いて育つ。2012年、ビーイング主催の新人発掘オーディション「Treasure Hunt ~ビーイングオーディション2012~」に「詩織」名義で出場。オリジナル曲「だからさ」と椎名林檎「丸の内サディスティック」を弾き語りで披露してグランプリを獲得する。同年12月、新山詩織としてアーティストデビュー。2013年4月に笹路正徳をサウンドプロデューサーに迎えたメジャー1stシングル「ゆれるユレル」をリリースし、7月には映画「絶叫学級」の主題歌として書き下ろした「Don't Cry」を2ndシングルとして発表した。11月13日、3rdシングル「ひとりごと」をリリース。タイトル曲はTBS系「CDTV」の11月度エンディングテーマに採用されている。