新浜レオン|木梨憲武&所ジョージが惚れ込んだ新星にインタビュー、目指すは演歌・歌謡界の“甲子園” (2/2)

すべては演歌・歌謡曲を若い世代に広めるため

──大学時代、ミスターコンテストで優勝されたことも大きな転機だったと思います。硬派な野球青年だった新浜さんが、なぜコンテストに出場したのでしょうか?

野球をやっていたから今と違ってガッチリしたキャッチャー体型で色黒の短髪でしたし、自分の容姿に1mmも自信がなかったんです。今でもネット検索すると当時、僕が出したエントリー用紙が出てくるんですけど「よくこれでグランプリ獲れたな」って呆れるような中身で(笑)。だけど僕は当時から「演歌・歌謡曲の素晴らしさを若い世代にどうにかして伝えたい」という使命感を持っていたんですよ。審査員や観客はみんな大学生だから、若い人にアピールするには格好の場。自己PRで演歌・歌謡曲を歌うこともできるので、これはいいなと考えたんです。

──若い世代に演歌・歌謡曲の素晴らしさを伝えたい、という意志は現在も新浜さんの中で一貫していますよね。

小さい頃から車に乗れば演歌が流れていましたし、テレビでも歌謡番組を観ることがすごく多かった。自分としては演歌・歌謡曲が流れている環境は当たり前だったんですけど、学校には演歌の話をする人が誰もいないんです。「演歌が好きな僕=昭和の人間」みたいな捉えられ方をされて、挙句に父親が「伯方の塩」で知られていたものだから、あだ名は「塩野郎」(笑)。僕からすると演歌や歌謡曲には素晴らしい歌がいっぱいあるのに、ある種の偏見に悔しい思いを長らく抱えていまして。だから若い世代に対しても演歌・歌謡曲の素晴らしさを伝えていきたいということは、素人時代からずっと考えていたことなんです。

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「こんな見た目なのに演歌・歌謡曲?」

──その後、新浜さんはレコード会社や芸能プロダクションにデモテープをたくさん送り、2019年にビーイング(現:B ZONE)からのデビューが決まりました。それまで、ビーイングは会社としても演歌・歌謡曲を手がけたことがなかったと伺っています。

ビーイングは、B'zさんや倉木麻衣さんが在籍されていることで有名な会社ですよね。社内で周りを見渡しても演歌・歌謡曲の先輩なんていないんです。逆に言うと、僕としてはそれがよかった部分もありまして。繰り返しになりますが、僕は若い世代にも演歌・歌謡曲の魅力を伝えていきたいわけじゃないですか。ビーイングに演歌・歌謡曲のノウハウがないからこそ、新しいことに挑戦できるという可能性を感じたんですよ。

──確かに既存のアプローチとは違う方法論での活動が可能かもしれませんね。

演歌・歌謡曲の界隈があるとしたら、その中で僕はかなり特殊な立ち位置だと思うんですよ。例えば今でも歌のディレクションをしてくれるのはポップス畑の方で、演歌・歌謡曲ジャンルの楽曲を担当するのは僕が初めてだそうです。あと演歌・歌謡曲のアーティストがよく出る雑誌や番組が存在するんですけど、僕は逆にそういった方々が出ないような場所にも踏み込めるんじゃないかと考えていまして。

──女性誌でアイドルさながらのグラビアを展開するなど、マルチに活動されていますよね。前作「捕まえて、今夜。」はTikTokで大バズリしましたし。そのあたりはある程度、戦略的に仕掛けているということでしょうか?

デビューから5年間活動してきましたけど、「いやあ、うちは演歌とか歌謡曲は扱っていないんでね。ちょっと厳しいです」って門前払いされることも少なからずあるんですよ。でもそこで愚痴ってばかりいても仕方ないから、「JUNON」さんみたいな雑誌に取り上げていただいたり、僕なりに演歌・歌謡曲の枠を広げようという気持ちでやっているんです。衣装とかビジュアル面に関しても今の人が見て普通にカッコいいと思うセンスを持っていないとダメだと思うし、逆に「えっ!? 新浜レオンって人、こんな見た目なのに演歌・歌謡曲を歌っているの?」って驚かれるくらいでちょうどいいんじゃないですかね。そういう感覚は活動するうえで大切にしたいと考えています。

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──正直、そこは世間に伝わり切っていない部分もあると思うんです。例えば演歌の世界では第7世代と呼ばれるイキのいい若手が人気ですが、それも広く音楽ファン全般に知られているわけではないですし。

今、若い人の間でレトロなものが流行っているじゃないですか。昭和っぽい純喫茶で写真を撮る人が増えたりとか。僕自身も平成生まれなので昭和をリアルタイムで知っているわけじゃないんですけど、なんだか1周回って新しく感じる。温故知新と言えばいいのかな。それは今回のシングル「全てあげよう」でも意識していて。西城秀樹さんのイメージを前面に打ち出し、衣装や振付、MVの撮り方も70~80年代の雰囲気にあえて寄せています。当時を知っている人には「懐かしい」、知らない人には「新しい」。そう感じていただけるのが理想です。

「変わった」のではなく「広がった」

──演歌や歌謡曲って“お年寄りが聴く音楽”という偏見もあると思うんです。今、新浜さんのファン層はどんな感じですか?

おかげさまで、だいぶ広がったんじゃないかと思います。サンリオさんとコラボして「れおすけ」というキャラクターを制作させていただいたり、その流れでサンリオピューロランドや大分のハーモニーランドでも歌わせていただきましたし。そういうところで小さいお子さんがワーッと集まってくる光景を目にすると、音楽ジャンルに年齢なんて関係ないと痛感するんです。ありがたいことにTikTokの再生数が伸びたことで、イベントを開催すると高校生が来て踊ってくれたりもしますし。もちろんそれと同時に80代、90代の方もいらっしゃいますから、ファンの方の年齢が「変わった」というよりは「広がった」感覚がありますね。

──ともすると保守的なイメージの強い演歌・歌謡曲業界にあって、風雲児的な役割を果たしているのかもしれません。

誤解を恐れずに言えば、僕は演歌・歌謡曲を心から愛していますが、だからこそジャンルの枠を取っ払いたいとも考えているんですよ。「新浜レオンってなんの歌手なの?」って聞かれたら、確かに「演歌・歌謡曲」ってことになるのかもしれません。だけど自分の意識としては、そうしたジャンル分けは二の次で。それよりもサンリオさんとコラボしたり、「名探偵コナン 犯人の犯沢さん」の主題歌を歌うことでアニメファンの方にも知ってもらったりして、より多くの方々に知っていただくことがはるかに大事なので、既存の枠組みにとらわれず「広げていく」発想は常に持っていたいし、挑戦する心は失わずに活動していこうと考えています。

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演歌・歌謡曲界の“甲子園”を目指して

──演歌・歌謡曲界に新風を巻き起こす新浜さんですが、このジャンルの伝統で守っていきたいことはありますか?

演歌・歌謡曲界では、“キャンペーン回り”がすごく重要になるんです。メディアやネットに頼る“空中戦”よりも、全国のショッピングモールやレコード店をくまなく回ることが大事なので。だから最終的には人と人なんですよね。握手させてもらって、歌わせてもらって、感謝の気持ちをお伝えして……これは昔からの演歌・歌謡曲の変わらない伝統だと思っています。幸い、自分は体育会系出身なので体力には自信があるし、挨拶などの礼儀も叩き込まれてきたので、これからも自分から皆さんに会いに行くことを軸に活動していきたいですね。最近は「全てあげよう」もリリースされたのでキャンペーンが続いているんですけど、木梨さんと所さんから遠隔操作でアドバイスされるんですよ。

──遠隔操作とは?

キャンペーンで歌っている映像は、すべてお二人に送っていまして。その映像を観た木梨さんと所さんから「もっと客席に近寄ったほうがいい」とか指令が出されるんです(笑)。本当にありがたい話ですよね。恵まれていますよ、僕は。木梨さんからは「とにかく今年は『全てあげよう』を歌いまくるんだ。この曲を持って全国に行け」とも言われていまして。こうなった以上、やっぱり今年の年末は紅白(「NHK紅白歌合戦」)に行きたいです。

──その言葉を待っていました!

高校球児が甲子園を目指すように、演歌・歌謡曲の歌手が紅白を目指すのは当然のこと。真っ白な硬球がマイクに変わっても、僕の気持ちは変わりません。デビューして今年の5月で6年目になりますが、コロナの問題があったので、僕はキャンペーン回りができない時期が長かったんですよ。ようやく全国でマスクやパーテーションなしで歌えるようになってきているので、ここからが本当のスタートだなという気持ちもあるんです。第2のデビューという気持ちで突っ走レオン!……って感じですかね(笑)。

──キャッチーに締めていただいて助かります(笑)。

でも本当に皆さんの温かい声援あってこそだと思っていますので、これからも末永くよろしくお願いします!

新浜レオン

プロフィール

新浜レオン(ニイハマレオン)

1996年5月11日生まれ。父は歌手の髙城靖雄。2019年5月、1stシングル「離さない 離さない」をリリースしB'zや倉木麻衣が所属するレーベル・ビーイング(現:B ZONE)初の演歌・歌謡曲歌手としてデビュー。同年11月に「第61回 日本レコード大賞」で新人賞を受賞する。2023年5月に発表した「捕まえて、今夜。」は「名探偵コナン」の公式スピンオフ作品「名探偵コナン 犯人の犯沢さん」のオープニングテーマに。曲中の“窓ふきダンス”がTikTokを中心に話題を集め、同曲を使用した動画の再生回数が1億回を超えるヒットを記録した。2024年3月27日、木梨憲武がプロデュース、所ジョージが作詞作曲を手がけた6thシングル「全てあげよう」をリリースした。