音楽ナタリー Power Push - NIGO
BILLIE IDLEとHONEST BOYZ、2つの音楽プロジェクトが目指す世界
アイドルがアイドルを辞めたら次に何をやるんだろう
──話が前後してしまいましたが、BiS解散後、NIGOさんのルーツである1980年代をテーマにしたBILLIE IDLEが始まりました。
曲を作っているケビン・マークスは若いので、80年代を知りません。だから「僕はこういうものが好きでこういうことがやりたい」っていうのを説明して、彼らなりの解釈で曲ができていきました。それが80年代っぽいけど今っぽくもあって、すごくハマりました。アイドルってルックスでファンが付いたりもしますけど、そういう部分ではなくて、80年代は楽曲がよくて売れるというところがあった。それは本来あるべきで、そうあってほしい姿ですよね。
──歌を大切にしたユニットですよね。
BILLIE IDLEのメンバーはもともと歌がうまいですし、生歌にこだわってトレーニングをさせてきました。そこはやるからにはキチッとしたい、ライブでCDかけた上からの口パクというのはちょっとないかなと。僕らの時代はそうやってちゃんと歌うのが普通だったけど、今はCDをかけてフリだけするのが当たり前になってきちゃってる気がするんです。音楽そのものがすべて軽くなってしまったと思います。
──BILLIE IDLEはライブの数も絞っています。今のアイドルはとにかく数をこなすのが普通という傾向ですけど。
そうですね。本人たちはもっとやりたいと言っていますが、BiSでやってきたようなことはやらなくていいかなと思っています。特に(ファーストサマー)ウイカとノンちゃん(ヒラノノゾミ)には次のステップに行ってほしいし、僕はその部分はサポートしたい。やれチェキとか、やれ握手とか、それをしないとCDは売れないのかって思うと複雑な気持ちなんですけど、BiSにいた2人は当時けっこう苦労してきているので、あれをまたやりたいとは思っていないと思うんですよね(笑)。
──アイドルから流れてきたファンからすると、CDを買うと特典が付いてきたり握手をするのが普通で、何もないと損した気分になったりするんですよね。
面白いですよね。僕らはジャケ買いするくらい、その物自体が欲しかったんですけど、それが変わってきたんでしょうね。若い人にも刺さってほしいですけど、同じ時代を生きた音楽好きな30~40代の人に刺さったらいいなって思っています。「あの青春をもう一度」的なグループでもあるので(笑)。「BiSのメンバーがアイドルを辞めて、その後何もやらずに遊んでいる」っていうのに引っ掛けて「IDLE」なんですけど、「アイドルがアイドルを辞めたら次に何をやるんだろう」っていうテーマもあって、いろんな意味で実験的なプロジェクトではあります。
──1stアルバム(2015年発売「IDLE GOSSIP」)のブックレットの写真を見ると、もろにSigue Sigue Sputnikだったりして。
そのあたりもわかってもらえるとうれしいなと。今の時代の表現物には絶対元ネタがあるので、重要なのはそこをどうやって深く料理していくかだと思います。そういう意味でも80年代はネタの宝庫ですね。
BILLIE IDLEのニューアルバムはかなりロック寄り
ところで、BILLIE IDLEは次のアルバムが10月に出るんですよ。
──そうなんですか!
実は、このインタビューで初めて話す情報が多くなると思います。BILLIE IDLEはアルバムを2枚出して、正直やりつくしたかなと思っていたんですけど、「いや、まだまだ俺の80年代はどこかにある!」と思って(笑)。いろいろ探していたら、まだあったんですよ。今度のアルバムはかなりロック寄りです。昔ってへヴィメタルだけど歌謡っぽい曲がけっこうありましたよね。今回はわりとそういうロックをやります。それから、ツアーもあります。小さめのライブハウスを回るので、ちょっとお客さんが体を動かせるようなコンセプトです。怪我をしない程度にお願いします(笑)。
──次のアルバムは激しい感じになりそうなんですね。
かなり振り切ってます。「LONDON NITE」でお決まりの曲がかかるとみんながウォーウォーって大騒ぎする感じ、やっぱりBILLIE IDLEにはそういう感じがいいのかもって思ってます。
──BILLIE IDLEはどちらかというとクールな印象があるんですけど、フィジカル寄りになっていくのでしょうか?
野音までを第1章として、3rdアルバムから変えていきたいっていうのがあります。曲で言うと「be my boy」が合ってると思う。お客さんを見ていてもあの曲は盛り上がってるし、そっち側に振り切ってみようかなと。ただ、そうするとBiSっぽくなってしまうので、バランスは取りつつBILLIEらしさを追求しました。実は今回けっこうケビンにダメ出しをして、ドラムのフィルまで細かく指示して直してもらいました。
──逆にそれまではダメ出しはしてこなかった?
そうですね、思った以上のものが上がってきていたので。でもやっぱり……ちょっとうるさかったのかな(笑)。HONESTでもちょくちょく言うので、うるさいと思われてるかもしれない(笑)。でも音楽が好きで、DJとしても25年くらいのキャリアがあっていろいろ聴いてきたので、好みはありますよね。
BILLIE IDLEからメンバーが勇退し、新メンバーが加入します
──とにかく、これまで以上にこだわりを持った作品になりそうだということですね。
はい。もう1つ初出しの情報をいいですか? ヤスイユウヒがグループを勇退することになりました。本人と話し合って、彼女の気持ちを尊重して、こういう形になりました。
──そうなんですか……。かなり面白くて貴重な存在でしたよね。
そうですね、いいキャラクターで、ヤスイのファンも多かったですし。ウイカにして、ヤスイはBILLIE IDLEの中心人物で、「ヤスイで持っている」って言っていたくらいなので。とはいえBILLIE IDLEも前に進んでいかないといけない。ただ、3人だと成立しない部分もあると思っていて、そこにこれも偶然なんですけど、野音のときにメンバーのモモセモモの妹が観に来ていたんですよ。
──!?
バックステージで初めて挨拶しました。で、その後ヤスイが抜けることになって、どうしようかと考えていました。オーディションはどこもやっているし、そういうことをやらないで新しいメンバーを探したほうがいいんじゃないかと思っていたときに、「そういえばモモセの妹が東京に出てくると言っていたかも」と。その後本人とまた会って、ちょっと歌ってもらったら、けっこううまかったんです。それで「グループの中に姉妹がいてもいいかも」と。
──それは驚きの展開です。
こういう出会いも大事にしていきたいので。野音で出会わなかったら思い付きもしなかったし、これも何かの縁かなと。正直かなりバタバタでしたけどね。本当につい最近決まったことです。名前は「アキラ」です。
──おお……1人だけ短いんですか(笑)。
それもカッコよくないですか?
──本人のモチベーションはどうなんでしょうか。急にスカウトされたわけですよね。
もともと興味はあったみたいです。ボイトレにも通い始めましたが、なかなかいい感じです。ビッグニュースになりましたか?(笑)
──3rdアルバム、ツアー、そしてメンバーの脱退&加入と、かなり盛りだくさんですよ。
IDLE FELLASっていうファンクラブの子たちを大切にしているので、まずはその子たちの前でアキラのお披露目をして、一般の皆さんにはナタリーのフェス(「@JAM×ナタリー EXPO 2016」)でお披露目という流れになると思います。
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プロフィール
NIGO(ニゴー)
クリエイティブディレクター。
裏原宿系ファッションの火付け役となったファッションデザイナーである傍ら、1989年よりDJとしても活躍。2002年にVERBAL(m-flo、PKCZ)、RYO-Z(RIP SLYME)、ILMARI(RIP SLYME)、WISEとともにTERIYAKI BOYZを結成し、アドロック(Beastie Boys)、The Neptunes、Daft Punk、マーク・ロンソン、DJシャドウらがプロデュースを務めたアルバム「BEEF or CHICKEN」をDef Jam Recordingsからリリースした。その後もTERIYAKI BOYZはコンスタントに活動を続け、2007年にはカニエ・ウェストがプロデュースを手がけたシングル「I STILL LOVE H.E.R. feat. KANYE WEST」が話題に。2009年1月にはファレル・ウィリアムスが運営するSTAR TRAKレーベルから2ndアルバム「SERIOUS JAPANESE」を発表した。2015年には元BiSのファーストサマーウイカ&ヒラノノゾミと、モモセモモ、ヤスイユウヒからなるガールズユニット・BILLIE IDLE を渡辺淳之介と共同でプロデュース。2016年からNAOTO(EXILE、三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE)、VERBAL(m-flo、PKCZ)、SWAY(DOBERMAN INFINITY)、MANDY(関口メンディー / GENERATIONS from EXILE TRIBE、EXILE)と共に新ユニット・HONEST BOYZを結成した。
BILLIE IDLE(ビリーアイドル)
ファーストサマーウイカ、ヒラノノゾミ、モモセモモ、ヤスイユウヒの4人からなるガールズユニット。NIGOと元BiSマネージャーの渡辺淳之介の共同プロデュースにより「ネオ80's」をテーマにしたサウンドとビジュアルイメージで独自の世界観を追究している。2015年4月に1stアルバム「IDLE GOSSIP」でCDデビューを果たし、同年4月には東京・ラフォーレミュージアム原宿、5月には大阪・ROCKTOWNにて単独ライブを開催した。さらに9月には2ndアルバム「ROCK"N"ROLL IDLE」を完成させ、そのアルバムを引っさげたレコ発ワンマンライブを10月に東京・ラフォーレミュージアム原宿で開催。12月にはBILLIE IDLE主催のイベント「BILLIE IDLE presents Brand-new Idle Society」が行われ、BILLIE IDLE、LUI FRONTiC 赤羽 JAPAN、POP、テンテンコ、Maison book girlというかつての盟友が集結した。そのメンバーで2016年2月よりツアー「Brand-new Idle Society presents ANARCHY TOUR」を行い、4月に東京・日比谷野外大音楽堂でツアーファイナル「ANARCHY TOUR FINAL IDLE is DEAD!?」を実施。4月6日にメンバーのソロ曲を収めた「"4 in 1" THE OFFICIAL BOOTLEG」をリリースした。
HONEST BOYZ(オネストボーイズ)
NIGO(TERIYAKI BOYZ)、NAOTO(EXILE、三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE)、VERBAL(m-flo、PKCZ)、SWAY(DOBERMAN INFINITY)、MANDY(関口メンディー / GENERATIONS from EXILE TRIBE、EXILE)により2016年に結成されたユニット。NAOTO主演のテレビ東京系ドラマ「ナイトヒーローNAOTO」の主題歌として書き下ろした「PART TIME HERO」を6月に配信リリースし、7月7日に7inchアナログを777枚限定で発売した。また、「a-nation island」の一環として7月29日に東京・国立代々木競技場第一体育館で行われた音楽イベント「OTO_MATSURI」にシークレットゲストとして出演し、お披露目ライブを行った。