音楽ナタリー Power Push - NIGO
BILLIE IDLEとHONEST BOYZ、2つの音楽プロジェクトが目指す世界
ファッションデザイナーとしてさまざまなアパレルブランドを展開しつつ、DJや音楽プロデューサーとしても活躍するNIGO。彼は昨年から、元BiSのファーストサマーウイカとヒラノノゾミをメンバーに擁するガールズユニット・BILLIE IDLEを渡辺淳之介と共同でプロデュースし、さらに今年からNAOTO(EXILE、三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE)、VERBAL(m-flo、PKCZ)、SWAY(DOBERMAN INFINITY)、MANDY(関口メンディー / GENERATIONS from EXILE TRIBE、EXILE)と共に新ユニット・HONEST BOYZを結成した。
音楽ナタリーでは今回、この2つのプロジェクトの現状について話を聞くべくNIGOへのインタビューを実施。すると彼の口から、BILLIE IDLEの今後に関する驚きの新事実が語られることになった。
取材・文 / 南波一海 撮影 / 小原泰広
BiSのライブは「LONDON NITE」と空気感が似ていた
──NIGOさんの音楽のキャリアを遡ると、まずMo'Waxとのコラボがありましたよね。
はい。すごいさかのぼりましたね(笑)。
──そこからTERIYAKI BOYZに至るまで、基本的にはずっとヒップホップをやっていたと思うんです。なので、BILLIE IDLEを始められたときには驚きました。
なるほど。そこはけっこう明快で、80年代にチェッカーズでファッションとか音楽に目覚めたんです。当時はロカビリー……、エルヴィス・プレスリーとかバディ・ホリーとかを聴いていたんですけど、86~87年にRun DMCとか、日本で言うとTINNIE PUNXやいとうせいこうさんの存在を知って。そこから歌謡っぽいメジャーなものからアングラなものに移行していって、ヒップホップを聴くようになって、DJを始めたんです。
──では、ヒップホップ以前のルーツは?
もともと80年代の歌謡曲が大好きだったんですよね。曲もいいし、街の雰囲気であるとか、80'sが強烈に好きだったので。ちょっと話が違うのですが、80年代の頃は50年代のものがすごくカッコいいものとされていて。例えば原宿だったらピンクドラゴンがあって、ロカビリースタイルが流行っていましたし。で、80年代から見た50年代は30年前で、2010年代から30年さかのぼると80年代なんですよね。
──なるほど。
今は音楽もファッションもそうですけど、80年代が青春だった人がメインで活躍していますよね。僕は子供の頃に「そういう服、お父さんとお母さんが若い頃に着てた」とか言われてたんですけど、なんのこっちゃわかりませんでした。それが30年経って今になって、やっと意味がわかりましたね(笑)。自分もラフォーレにお店を出して、近年は80'sをテーマにやっているので、そういうコンセプトの中でBILLIE IDLEが生まれたんです。以前、レーベルをやっていたときに女の子のプロデュースをやっていましたが、ここまで本格的なのは初めてかもしれないです。挑戦でもありますけど、楽しくやっています。あまりオフィシャルに語ることもしませんでしたが、実はBILLIE IDLEを始めてから、僕ずっと裏方として細部までグループに関わってきました。
──渡辺淳之介さんのキャラが強いですもんね。
彼はSex Pistolsで言ったらマルコム・マクラーレンのような存在なので、アーティストと並列もしくはそれ以上の存在。ただ、BILLIE IDLEは渡辺くんが100%ディレクションをやっているグループとは確実に一線を画してます。彼も僕に合わせてくれていて、このコンセプトを楽しんで、ある意味勉強しながらやっているのではないでしょうか。彼とのプロジェクトは自分もかなり勉強になっています。そもそも、僕がBiSに引っかかったきっかけはプロレスなんですけど。
──DDTの企画から興味を持たれたんですよね。
はい。自分で興業をやっていたくらいプロレスが好きなんですけど、BiSがDDTの試合に出演したのを観て、「何これ!?」って感じになってどんどん掘って、普通にチケットを買ってライブを観に行きました。僕は東京に出てきてすぐ、大貫憲章さんの「LONDON NITE」で遊んでいて、そこに集まっていた人たちに会場の空気感が似ているなあと思ったんです。楽しんで暴れているというか。そこにすごく引っかかって、アイドルとは違うアプローチにハマりました。前半はリアルタイムでは観ていませんが、後半はずっと追いかけて、地方も行ったりしてました。
「またBiSをやればいいのに」ってずっと言ってました
──BiSを通じて、渡辺さんとの交流が深まったわけですね。
若い世代で面白い人ってなかなか現れなくて、ファッションは今もそうなんですけど……裏原のカルチャーを作った人たちが強烈なので、その壁をぶち破って出てくる人がいませんよね。僕は若い人が好きなので、いつも探してはいるのですが、やっぱりいなくて。そこで出会ったのが渡辺くんでした。
──BiSの解散は早々に決まっていたわけですが、BILLIE IDLEの構想はどのくらいから立ち上がったのでしょうか。
わりと早い段階でしたね。解散の後メンバーはどうするのか渡辺くんに聞いたら、「何も決まってないです」って。「本当に何も決まっていないのなら、新しいグループやってもいいかな?」みたいな話をしたら、「全然手伝うし、やりましょう」と。それでいざBILLIE IDLEを始めてみたら、本当に彼らしいんですけど、僕はBiSHのことをまったく知らされていませんでした(笑)。
──(笑)。
正直、そういうことを教えてくれないで一緒にやっていくのは厳しいなあと感じて、その後からちゃんと情報共有してもらうことにしました(笑)。
──渡辺さんはBiSも再び始めることになりましたしね。
さすがにそれは聞いてました(笑)。もともと日比谷野音(参照:元BiSメンバーが集結「ANARCHY TOUR FINAL」最後はやっぱりあの曲)で「nerve」はやりたいと思っていました。ラフォーレのイベント(参照:元BiSメンバーが合同で全国ツアー敢行、ファイナルは日比谷野音)で元メンバーが集まって、彼女たちが参加した「どうせ消えてしまう命なら…」が発売され、日比谷野音でのイベントに至る流れは作っていました。ラフォーレのイベントで「nerve」をやらなかったので、野音でもやらないだろうとみんな思ったでしょうが、それでもチケット買って来てくれた人たちに何かサプライズをという気持ちは強かったです。日比谷の客入れの時間に逆回転の「nerve」がかかっていたりとか、当日も実は伏線みたいなものは張っていました。最後に全員で「nerve」をやるときに出てきたプールイだけが「IDOL」って書かれたTシャツを着ていたのは、またプールイがBiSをやると聞いていたからです。TERIYAKI BOYZもHONEST BOYZも、メンバーはみんな二足のわらじです。三代目(J Soul Brothers)をやりながらHONESTもやるNAOTOくんって面白いし、僕は「またBiSをやればいいのに」っていつも言ってました。本音は野音のあとにオリジナルメンバーで再結成してほしかったのですが、そこは叶わずでしたね。あの野音での爆発力……「nerve」がかかったときは本当にカオス状態になったので、今でももったいない気持ちでいっぱいですが、プールイの新生BiSには期待してますし、ほかのメンバーのグループも応援したいです。
──メンバーのソロ集「"4 in 1" THE OFFICIAL BOOTLEG」に元BiSのメンバーが集まった「どうせ消えてしまう命なら...」が収録されていますが、この曲に参加しなかったプールイだけが結果的にBiSをやるというのも面白い流れですよね。
そうですね。プールイにもシングルに参加してもらって、プロデュースも松隈(ケンタ)さんで、“事実上の再結成”を盤の上でやろうというのがもともとのアイデアでした。結局諸事情によりプールイの参加はなくなりましたが、彼女がまた新たにBiSをやるのはその時点では想像もしていなかったし、ある意味偶然でしたけど、結果すごくよかったのではと思っています。
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プロフィール
NIGO(ニゴー)
クリエイティブディレクター。
裏原宿系ファッションの火付け役となったファッションデザイナーである傍ら、1989年よりDJとしても活躍。2002年にVERBAL(m-flo、PKCZ)、RYO-Z(RIP SLYME)、ILMARI(RIP SLYME)、WISEとともにTERIYAKI BOYZを結成し、アドロック(Beastie Boys)、The Neptunes、Daft Punk、マーク・ロンソン、DJシャドウらがプロデュースを務めたアルバム「BEEF or CHICKEN」をDef Jam Recordingsからリリースした。その後もTERIYAKI BOYZはコンスタントに活動を続け、2007年にはカニエ・ウェストがプロデュースを手がけたシングル「I STILL LOVE H.E.R. feat. KANYE WEST」が話題に。2009年1月にはファレル・ウィリアムスが運営するSTAR TRAKレーベルから2ndアルバム「SERIOUS JAPANESE」を発表した。2015年には元BiSのファーストサマーウイカ&ヒラノノゾミと、モモセモモ、ヤスイユウヒからなるガールズユニット・BILLIE IDLE を渡辺淳之介と共同でプロデュース。2016年からNAOTO(EXILE、三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE)、VERBAL(m-flo、PKCZ)、SWAY(DOBERMAN INFINITY)、MANDY(関口メンディー / GENERATIONS from EXILE TRIBE、EXILE)と共に新ユニット・HONEST BOYZを結成した。
BILLIE IDLE(ビリーアイドル)
ファーストサマーウイカ、ヒラノノゾミ、モモセモモ、ヤスイユウヒの4人からなるガールズユニット。NIGOと元BiSマネージャーの渡辺淳之介の共同プロデュースにより「ネオ80's」をテーマにしたサウンドとビジュアルイメージで独自の世界観を追究している。2015年4月に1stアルバム「IDLE GOSSIP」でCDデビューを果たし、同年4月には東京・ラフォーレミュージアム原宿、5月には大阪・ROCKTOWNにて単独ライブを開催した。さらに9月には2ndアルバム「ROCK"N"ROLL IDLE」を完成させ、そのアルバムを引っさげたレコ発ワンマンライブを10月に東京・ラフォーレミュージアム原宿で開催。12月にはBILLIE IDLE主催のイベント「BILLIE IDLE presents Brand-new Idle Society」が行われ、BILLIE IDLE、LUI FRONTiC 赤羽 JAPAN、POP、テンテンコ、Maison book girlというかつての盟友が集結した。そのメンバーで2016年2月よりツアー「Brand-new Idle Society presents ANARCHY TOUR」を行い、4月に東京・日比谷野外大音楽堂でツアーファイナル「ANARCHY TOUR FINAL IDLE is DEAD!?」を実施。4月6日にメンバーのソロ曲を収めた「"4 in 1" THE OFFICIAL BOOTLEG」をリリースした。
HONEST BOYZ(オネストボーイズ)
NIGO(TERIYAKI BOYZ)、NAOTO(EXILE、三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE)、VERBAL(m-flo、PKCZ)、SWAY(DOBERMAN INFINITY)、MANDY(関口メンディー / GENERATIONS from EXILE TRIBE、EXILE)により2016年に結成されたユニット。NAOTO主演のテレビ東京系ドラマ「ナイトヒーローNAOTO」の主題歌として書き下ろした「PART TIME HERO」を6月に配信リリースし、7月7日に7inchアナログを777枚限定で発売した。また、「a-nation island」の一環として7月29日に東京・国立代々木競技場第一体育館で行われた音楽イベント「OTO_MATSURI」にシークレットゲストとして出演し、お披露目ライブを行った。