音楽ナタリー PowerPush - ニコナタ(音楽)小林幸子×武田晃1等陸佐(陸上自衛隊中央音楽隊隊長)対談
すべては音楽のために
誰が何を歌い、何を演奏するのか
──そして小林さんも中央音楽隊さんも昨年に引き続き、今年も春のニコニコ動画系音楽フェスである「超音楽祭」に出演します。
武田 繰り返しになってしまうんですけど、もちろん公務だからという側面もあるものの、去年お客さんのあの反応を味わってしまった以上、いち奏者としても「超会議」の音楽イベントは出てみたいステージなんです。去年の「ニコニコ超パーティー」で我々が演奏したのはボーカロイドの楽曲やゲームの楽曲のカバーなんですけど、カバー曲はあくまでオリジナル曲ありきのものですから。だから本番前は「あっ、自衛隊の人がボカロ曲やゲームの曲を演奏するのね」「ふーん、これはこれでいいんじゃない?」という反応が返ってくるのかな?と思っていたんですけど、実際にステージに立ってみたら、皆さん、オリジナル曲を聴いたときのような反応を返してくださったんですよ。
小林 私の「千本桜」だって言ってしまえば初音ミクちゃんのカバーなのに、全力でサイリウムを振って一体になって聴いてくれるんですよ。
武田 我々のステージのときにも「ザナルカンドにて」(ゲーム「ファイナルファンタジーX」の劇中曲)を聴いて涙を浮かべてくださる方もいて。それには本当に驚きました。
小林 ただその曲にしても、ボカロ曲にしても、オリジナル曲の段階で、すでに完成されたもの、素晴らしいものとして存在しているわけじゃないですか。だから中途半端にカバーしてしまっていたら、隊長の言う通り「ふーん」で終わっていたかもしれない。「やっぱりオリジナルのほうがいいね」って。でもそうならなかったのは、文句なしに国内トップレベルの吹奏楽団が自信を持ってその実力を発揮なさっていたからなんですよね。
武田 ありがとうございます。ただ、それはむしろ小林さんに申し上げたいことですから(笑)。オリジナルの「千本桜」を作った方も聴いていた方も、まさか近い将来大スターがこの曲を歌うことになるなんて思っていなかったはずで。なのにその小林さんが完全に「千本桜」をご自分のものになさっているから、皆さんビックリするし、感動するんですよ。
小林 ありがとうございます(笑)。
ネットと「超音楽祭」が音楽や人の枠組みを変える
──そのカバー曲を選ぶ基準ってどこにあるんですか?
小林 もちろんいろんな方に意見を聞いたりもします。でも最終的には私は以前お話した通り、自分自身が楽しめて面白いと思える曲かどうか。あと好き嫌いもあるかな(笑)。
武田 ははははは(笑)。我々も基本的にはそうですね。確かに吹奏楽団で演奏して映えるのか? 吹奏楽用のスコアを書けるタイプの曲か?っていう技術的なことは考えます。これは管楽器じゃなくてバイオリンで弾いたほうが映えるんじゃないか?みたいなことも考えるには考えるんですけど、最終的には演奏したいかどうか? いい曲だと思えるか?という感性の話になってしまいますね。
小林 曲は隊長が選ぶんですか?
武田 私の場合もありますし、あとは企画係というセクションがありまして。そこの連中が「次はこの曲どうでしょう?」って提案をしてくることもあります。
──ではお2人は今年の「超音楽祭」ではどのような楽曲を?
小林 ナイショです(笑)。また例によって面白い曲を面白いことをしながら歌うと思いますよ。
──対する中央音楽隊さんはどのようなセットリストに……。
武田 ナイショです(笑)。
──じゃあどんなステージになりそうか、ヒントだけでも(笑)。
武田 去年はすべての曲を短くつないでメドレー形式で演奏したんですけど、今年は全曲フルで聴いていただく予定になっています。
──その「メドレー形式でプレイしてみよう」「今年はフルレングスを聴かせよう」っていう構成はどなたのアイデアなんですか?
武田 「超音楽祭」スタッフさんにもアドバイスをいただきました。
小林 私とまったく一緒です(笑)。
武田 去年のメドレーも「超パーティー」のスタッフさんにいろいろアドバイスをいただいて決めたんですよ。
小林 餅は餅屋ですから。知っている人、詳しい人の意見に素直に耳を傾けたほうが絶対にいいものができあがるんですよね。
武田 それにコラボしたほうが楽しいんですよね。我々だけの力や知恵だけでは知り得ないこと、体験し得ないことを知ったり体験したりすることができるわけですから。
小林 今回こうやって対談をセッティングしていただけたのだって、ネットが生んだコラボの1つですもんね。私が「小林と申します」って自衛隊にご挨拶に伺っても隊長とお話なんてできるわけないじゃないですか。でも「ニコニコ動画」や「ボーカロイド」が私たちをつなげてくれた上に、演歌歌手と自衛隊の方の意外な共通点をたくさん見つけてくれたわけでしょ。だから私、ネットや「超音楽祭」みたいなイベントにはホントに期待してるんですよ。こういう取り組みがきっかけになって音楽の枠組みとか人と人との繋がり方って絶対に大きく変わっていくはずですから。
次のページ » 航空中央音楽隊指揮者・五味渕敦2等空尉メールインタビュー
開催期間
2015年4月25日(土)、4月26日(日)
会場
幕張メッセ国際展示場1~11ホール、イベントホール
4月25日(土)出演者
アイドルマスター / 藍井エイル / アップアップガールズ(仮)/ 妖~AYAKASHI~ / 仮面ライアー217 / GARNiDELiA / ℃-ute / Gero / 超特急 / バーレスクTOKYO / 藤巻亮太(レミオロメン)/ まじ娘 / 松岡充 / みうめ / むすめん。 / ROOT FIVE / REVALCY / 古坂大魔王
4月26日(日)出演者
アルスマグナ / __(アンダーバー)/ OxT(オーイシマサヨシxTom-H@ck)/ kain / 黒崎真音 / 航空中央音楽隊 / 小林幸子 / ZAQ / Juice=Juice / SUPER☆GiRLS / でんぱ組.inc / 9nine / 松下 / RAB(リアルアキバボーイズ)/ 陸上自衛隊中央音楽隊 / 古坂大魔王
小林幸子(コバヤシサチコ)
1953年生まれの女性ボーカリスト。1963年、9歳で作曲家古賀政男に師事し、1964年シングル「ウソツキ鴎」でデビュー。同曲が20万枚の大ヒットを記録する。1979年1月リリースの「おもいで酒」が200万枚を超えるセールスを記録し、同年末「NHK紅白歌合戦」に初出場を果たす。以来「もしかして」「雪椿」「越後絶唱」などヒット曲の数々を引っさげ、現在までに同番組に33回出演し、1980年代末頃からはステージ演出にも注力。NHKホールのステージをフル活用した舞台装置と衣装が年末の風物詩のひとつと目されるようになる。他方、コメディやバラエティ番組、テレビドラマなどにも出演。また「ポケットモンスター」シリーズ初の劇場用作品「ミュウツーの逆襲」の主題歌を歌ったほか「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶジャングル」では主題歌を担当すると同時に声優として登場するなど、その多岐にわたる活動を通じて幅広い年齢層の人気を獲得する。さらに2012年、ニコニコ生放送「小林幸子降臨!『茨の木』夢は捨てずに生放送」「ニコニコ大忘年会2012 in nicofarre」に登場。2013年には歌ってみた動画「ぼくとわたしとニコニコ動画を夏感満載で歌ってみた」を投稿するなどニコニコ動画を積極的に活用。ネットユーザーの多大な人気を集めている。そして2014年4月には千葉・幕張メッセでの「ニコニコ超会議2014」内の音楽系ステージイベント「ニコニコ超パーティーIII」に出演し、2015年4月の同所での「超音楽祭2015」にも登場する。
2015年5月29日更新