音楽ナタリー PowerPush - ニコナタ(音楽)小林幸子×武田晃1等陸佐(陸上自衛隊中央音楽隊隊長)対談
すべては音楽のために
4月25、26日に千葉・幕張メッセで開催される「ニコニコ超会議2015」内の音楽系ステージイベント「超音楽祭2015」。「ニコニコ超会議」では毎年、音楽系ステージイベントを開催しており、昨年の「ニコニコ超パーティーIII」では小林幸子と陸上自衛隊中央音楽隊が出演し、大きな話題を集めていた。そして今年も小林、中央音楽隊が継続出演。さらに航空自衛隊所属の吹奏楽団・航空中央音楽隊の初出演も決定している。
そこでニコニコ動画とナタリーのコラボレーション連載企画「ニコナタ」では「超音楽祭2015」の特集を展開。小林とともに陸上自衛隊朝霞駐屯地を訪れ、陸上自衛隊中央音楽隊隊長である武田晃1等陸佐と彼女の対談を実施するとともに、航空中央音楽隊で指揮者を務める五味渕敦2等空尉のメールインタビューを行った。3者の「超音楽祭」に出演する経緯とその意気込み、そしてニコニコ動画、ネットカルチャーに対する思いとは?
取材・文 / 成松哲 撮影 / 小坂茂雄(P1~3)
舞台裏でのハイタッチで仲間になれた
──まずお2人と、ニコニコ動画との関わりについて伺わせてください。
小林幸子 たぶんみんなもそうだと思うんですけど、中央音楽隊さんとニコニコの関わりにはすごく興味ありますよね。今日のために、隊長の過去のインタビュー(参照:ニコナタ(音楽)陸上自衛隊中央音楽隊隊長インタビュー)を読んでみたんですけど「ネットのユーザーやニコニコ動画と一緒に何かをできることがすごくうれしい」ってお話をなさっていて。私もホントにそう思っているから、同じ気持ちですごくうれしかったんですけど、去年、皆さんが「ニコニコ超パーティー」に出たのって本当に果敢な挑戦だなって思ってますから。
武田 でも私も小林さんの「千本桜」の歌ってみた動画を観たときに「えっ、小林さんがこれ歌うんだ!」って驚いたんですよ。実力派歌手の方がボーカロイド楽曲に果敢に挑戦する。その柔軟性は本当にすごいなって。
小林 これは以前、ナタリーさんでお話したことではあるんですけど(参照:ニコナタ(音楽)小林幸子インタビュー)、私、面白そうだったらなんでもやってしまうタイプなので(笑)。でも奇遇というか、私が隊長や中央音楽隊を見て感じていたことを、私を見た隊長もお感じになってたんですね。
──ただ、はた目にはちょっと不思議なんですよ。小林さんが動画を投稿して「超パーティー」に出演することや、同じく中央音楽隊が「超パーティー」に出演することって我々にとって“異例”ではあっても、その一方で2組とも屈指のプレイヤーでいらっしゃるだけに、それほど“果敢”な挑戦だったのかな?って。
武田 いや。我々が普段演奏するのは国家的行事ですから。そういう公的な場所では知られた存在ではあるんですけど、ネットユーザーの皆さんに近い場所ではあまり活動していないだけに「ニコニコ超パーティー」に出演するということは知らない世界に踏み出すようなものだったんです。
小林 まさにそうなんですよね。私も演歌の世界の住人ですから。ネットの世界の子たち、ボカロとかニコ動を支持している子たちは演歌はほとんど聴いていない。その世界で小林幸子という存在をどれだけわかってもらえるのかはやっぱり疑問だったし、だからこそ受け入れてもらえたときはすごくうれしくて。隊長も、去年の「超パーティー」のときに受け入れられたってお感じになったことはありましたか?
武田 そうですね。去年「ニコニコ超パーティー」の舞台裏を歩いていたら、出演者の皆さんからハイタッチを求められましたから(笑)。
小林 そのハイタッチを求めた子って勇気ありますねえ(笑)。
武田 ははははは(笑)。でもそこでハイタッチできたことで、「超パーティー」の世界の皆さんと仲間になれた気がしてすごく楽しかったんです。
“任務”と“枠組み”を思考し続ける
小林 中央音楽隊さんには自衛隊員としての任務や枠組みというものがあって、それを守らなければならないし、実際に守っていらっしゃるんだけど、その一方で「超パーティー」のみんなとハイタッチしたように、任務の中に楽しみを見つけることや、枠組みのあり方についてすごく考えてもいらっしゃる。それってやっぱり“果敢”なことだと思うんです。
武田 ありがとうございます。中央音楽隊の任務の1つに陸上自衛隊の広報活動というものがあるから去年の「超パーティー」にも出演したんですけど、これが数年前であれば、確かに出演要請をお断りしていた可能性もあるんです。まだネットの世界=少数派の世界というイメージがありましたから。でも今はネットで音楽や映像を楽しむことは全然少数派の趣味ではないですよね。だからこそ中央音楽隊に出演要請があったとき、我々を統括する防衛省陸上幕僚監部は「広報効果が高い」という判断をしたんでしょうね。
──やっぱり小林さんの言う通り、イマドキの社会のあり方に合わせて、枠組みをアップデートしている。
小林 「官僚」とか「お役所」っていうとお堅い保守的なイメージを抱きがちだからこそ、その柔軟さが私たちにとっては新鮮だし、素敵なんですよね。
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開催期間
2015年4月25日(土)、4月26日(日)
会場
幕張メッセ国際展示場1~11ホール、イベントホール
4月25日(土)出演者
アイドルマスター / 藍井エイル / アップアップガールズ(仮)/ 妖~AYAKASHI~ / 仮面ライアー217 / GARNiDELiA / ℃-ute / Gero / 超特急 / バーレスクTOKYO / 藤巻亮太(レミオロメン)/ まじ娘 / 松岡充 / みうめ / むすめん。 / ROOT FIVE / REVALCY / 古坂大魔王
4月26日(日)出演者
アルスマグナ / __(アンダーバー)/ OxT(オーイシマサヨシxTom-H@ck)/ kain / 黒崎真音 / 航空中央音楽隊 / 小林幸子 / ZAQ / Juice=Juice / SUPER☆GiRLS / でんぱ組.inc / 9nine / 松下 / RAB(リアルアキバボーイズ)/ 陸上自衛隊中央音楽隊 / 古坂大魔王
小林幸子(コバヤシサチコ)
1953年生まれの女性ボーカリスト。1963年、9歳で作曲家古賀政男に師事し、1964年シングル「ウソツキ鴎」でデビュー。同曲が20万枚の大ヒットを記録する。1979年1月リリースの「おもいで酒」が200万枚を超えるセールスを記録し、同年末「NHK紅白歌合戦」に初出場を果たす。以来「もしかして」「雪椿」「越後絶唱」などヒット曲の数々を引っさげ、現在までに同番組に33回出演し、1980年代末頃からはステージ演出にも注力。NHKホールのステージをフル活用した舞台装置と衣装が年末の風物詩のひとつと目されるようになる。他方、コメディやバラエティ番組、テレビドラマなどにも出演。また「ポケットモンスター」シリーズ初の劇場用作品「ミュウツーの逆襲」の主題歌を歌ったほか「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶジャングル」では主題歌を担当すると同時に声優として登場するなど、その多岐にわたる活動を通じて幅広い年齢層の人気を獲得する。さらに2012年、ニコニコ生放送「小林幸子降臨!『茨の木』夢は捨てずに生放送」「ニコニコ大忘年会2012 in nicofarre」に登場。2013年には歌ってみた動画「ぼくとわたしとニコニコ動画を夏感満載で歌ってみた」を投稿するなどニコニコ動画を積極的に活用。ネットユーザーの多大な人気を集めている。そして2014年4月には千葉・幕張メッセでの「ニコニコ超会議2014」内の音楽系ステージイベント「ニコニコ超パーティーIII」に出演し、2015年4月の同所での「超音楽祭2015」にも登場する。
2015年5月29日更新