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木根尚登、超会議で生“ゲワイ”
4月25、26日に千葉・幕張メッセ国際展示場1~11ホールで開催されるイベント「ニコニコ超会議2015」に、TM NETWORKの木根尚登が登場する。
昨年10月、突如ニコニコ動画に自身の演奏を収めた動画「TM NETWORKの木根尚登が全力でGet Wildを弾いてみた」をアップした木根。ニコ動ユーザーから“ゲワイ”の愛称で親しまれるTMの名曲「Get Wild」を木根本人が演奏したその動画は、瞬く間に大きな話題を集めた。この反響を受け、「ニコニコ超会議2015」ではニコ動発のコンサート企画「事務員Gとゆかいな仲間たち」とのコラボレーションによる生“ゲワイ”がステージ上で展開される。
ナタリーでは「ニコニコ超会議2015」開催を前に、木根へのインタビューを実施。“弾いてみた”動画投稿の経緯をはじめ、気になるエピソードの数々について自ら語ってもらった。
取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / 笹森健一
まるで1つのシナリオのように
──木根さんがニコニコ動画にアップした“弾いてみた”動画は大きな波紋を呼びました(参照:木根尚登が全力で「Get Wild」を弾いてみた)。あの動画が今回の「ニコニコ超会議」出演のきっかけになると思うのですが、改めて事のあらましを掘り下げておきたいと思いまして。
ここ2、3年はソロでテレビに出させていただく機会も多くて。そんな中、ある番組を通じて「木根はエアギターだ」というのが話題になったんです。僕も番組を盛り上げるためについ「そうです、弾いてません!」「松本くん(B'zの松本孝弘。かつてTM NETWORKのサポートギタリストを務めていた)が弾いてます!」なんて言っちゃって(笑)。
──放送後すぐにネットで話題になりました。
大阪のローカル番組だったから、全国に広まるような話じゃないと思ってたんだけど……今はそんなの全然関係ないんですよね。思いのほか広がりすぎちゃって、困ったなと。細かいとこ説明するのもめんどくさいでしょ? そんなときに“弾いてみた”の話をいただいて……まるで「超会議」に出るまでが1つのシナリオのようにうまーく乗せてもらって、ありがたい限りです。
──“弾いてみた”に挑戦したのは、TMの30周年特番で再びエアギターの話が上がったのがきっかけなんですよね。それ以前はニコ動やニコニコ生放送についてどんな印象を持ってましたか?
ニコ動は僕らと仲のいい作詞家の小室みつ子さんがすごく詳しくて。彼女がニコニコ生放送で「小室みつ子のGet Wild」という番組をやっていて、僕も何度かゲストに呼ばれたんです(参照:小室みつ子と木根尚登がニコニコ生放送でGet Wild)。それが最初のニコ生出演ですね。そのときに視聴者が「88888888」とか盛り上がってるのを初めて観て、すごいなと思いましたよ。
──そうやって一般ユーザーが作り上げた世界に、TM NETWORKのメンバーがいわゆる“降臨”したことが新鮮だったし、ましてや木根さんが“弾いてみた”動画をアップするなんて思わなかったから、当然大きな話題になりました。
以前ニコ動で、僕らの曲をファンの人がみんなで歌おうと盛り上がってくれたことがあって。“fanksfes”(参照:#fanksfes - ニコニコ動画:GINZA)なんて言って、ネットで集まった人たちがTMの曲をカバーしているのを観たときに、もはやプロとアマの境目はなくて、一緒に音楽を共有できる時代になったんだなと感じました。
反応は気になるものですよ
──自分の曲を見ず知らずの他人が一方的に歌ったり弾いたりしているのって、普通に楽しめるものですか?
ええ、楽しいし、うれしいですよ。
──プロの目線で「ここはこうしたらいいのに」とか「コードが違う」とか、細かいところが気になるようなことは?
いえいえ。もちろんプロとしてやるんだったら細かいチェックも必要ですけど、皆さん楽しむことを大前提にやっているので、自由に表現してもらったほうが観ていて楽しいですね。
──ご自身で“弾いてみた”をアップした感想はいかがですか? 視聴者のリアクションや再生回数が可視化されるのは新鮮な体験だったんじゃないかと思いますけど。
……なんでしょうね、あの数字というのはいつからかとても気になるものになってきましたよね。小室(哲哉)くんはこの間「僕の(Twitter)フォロワーがちょっと減っちゃった」なんて言ってましたけど(笑)。
──意外に細かくチェックしてるんですね(笑)。
フォロワーは何十万人もいるから少し減ったくらいじゃわかんないと思うんだけど、彼はちゃんと気にしてるの。でもそれはすごくわかりますよ。例えばMVを上げても、この曲は何回再生されたけどこの曲はこうだった、とか。やっぱり気になるものですよ、何かをやったあとの反応というのは。あんまり気にしたくはないですけどね。
傷付けられる言葉もあるけど、100倍応援の声が届く
──ニコ動は特にはっきり可視化されてしまいますけど、リアクションには賞賛もあれば辛辣なコメントも並びますよね。批判や罵倒みたいなコメントは気になりませんか?
さすがにね、エアギターのときはけっこうヒドいのもありましたよ(笑)。最終的には「詐欺だ」って言われましたから(笑)。詐欺と言ってる人の話を聞くと、どうやら「木根はギタリストだと言いながらレコーディングでは違う人が弾いていたから詐欺罪に当たる」と言うんですよ。でもレコードには演奏している人のクレジットがちゃんと出ている。僕が「ギターソロまで弾いてます」って言ってるんなら詐欺だし、僕じゃないですよというのは常に公にしてきたはずなんだけど、これが広まらなかったんですね。
──確かに、FANKS(TMファンの総称)なら説明不要ですけど、あのバキバキのギターソロも含めて「TMのギターは全部ギタリストの木根尚登が弾いている」と思っていた人も多いかもしれないですよね。
傷付けられる言葉もあるんだけどね、その100倍応援の声が届くんです。僕が“弾いてみた”を上げたときね、GLAYのHISASHIくんからTwitterで「ありがとう」ってメッセージが来たんですよ。初めはその「ありがとう」の意味がわからなかったんだけど、疑惑を自ら晴らしてくれてありがとうという気持ちだったらしくて。それはなんだかうれしかったですね。HISASHIくんとはもともとそんなに交流はなくて、Twitterでちょっとやりとりする程度だったんですよ。そうやって遠くから応援したり、一緒になって悔しがってくれている人がいるとわかるのも、またインターネットならではですからね。
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4月25日(土)出演者
木根尚登(TM NETWORK)/ HISASHI(GLAY)/ 事務員G / てっぺい先生 / めんどくせぇP / ファミ箏 / フリーザック / Rio.T / Lowland Jazz / れゐてる / 三代 / mao / [TEST] / ショボン
4月26日(日)出演者
私立恵比寿中学 / 氏家克典 / 桐子(KiRiKo)/ 大凶作 / 東京アクティブNEETs / マツケん(マツケン先生)/ サムライ・オブ・ロック / ショボン / mao / [TEST] / 三代 / 事務員G
木根尚登(キネナオト)
小室哲哉(Key)、宇都宮隆(Vo)とともに、TM NETWORKのギタリストとして1984年にメジャーデビュー。シンセサイザーを多用したきらびやかでポップなサウンドが徐々に注目を集め、1987年にはテレビアニメ「シティーハンター」のエンディングテーマとなった10thシングル「Get Wild」が大ヒットを記録した。1989年にはTM NETWORKの6thアルバム「CAROL ~A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991~」と連動したオリジナルストーリー「CAROL」で小説家デビュー。翌1990年にはニッポン放送「木根尚登のオールナイトニッポン」でパーソナリティを務める。1992年12月には初のソロシングル「泣かないで」を発表。また作曲家としても活躍し、渡辺美里、浅香唯、椎名へきる、南野陽子、吉田栄作ら多数のアーティストに楽曲を提供している。現在もTM NETWORKでの活動と並行して、ソロアーティスト、小説家、音楽プロデューサー、ラジオパーソナリティ、俳優とマルチな才能を発揮している。
2015年5月29日更新