音楽ナタリー Power Push - NICO Touches the Walls

目指すは“孤高のロース” 新作「渦と渦」を肉に例えて解説

味付けはヒマラヤ岩塩と粗挽き黒コショウ

──前作「まっすぐなうた」も、素を表すようなモードでしたよね? 自分たちのありのままの思いを表現するというか。

NICO Touches the Walls

光村 そう。どちらも自分たちがどういう“肉”なのか見つめながら曲を作った感じですね。今まではホルモンとか珍しい部位を目指してたけど、改めて肉はロースだろうと気付いた。そもそも、この流れはアコースティックアルバム「Howdy!! We are ACO Touches the Walls」からのものなんです。

古村 あとサウンド的に「渦と渦」は、脂が多くてあっという間に焦げちゃう豚トロなんですよ。「渦と渦」って異様に速い曲で193BPMもあって、始まったら止まってる暇がないくらいの勢いで突っ走るんです。

光村 一度網に乗せたら目が離せないという意味では、どの肉にも共通してるね。演奏するのも聴くのも集中力が必要な曲というか。

坂倉 で、歌詞はユッケですね。みっちゃんがバンドやリスナーに対して思ってることが、比喩もなく生々しく出ているという点で。まあ、噛み応えは圧があって……シャトーブリアンとか?

光村 シャトーブリアンは違うだろ! あんなにほろほろ口の中で溶ける肉はないよ!(笑) さてはシャトーブリアンを食べたことがないな?

対馬 むしろステーキハウスとかで出てくる、ゴリゴリした噛み応えのある熟成肉でしょ。

坂倉心悟(B)

坂倉 言葉のイメージで言いました、ごめんなさい……。

光村対馬 わははははは(笑)。

光村 素材の味を生かした曲だから、味付けは塩コショウで。ただオリエンタルなフレーズを取り入れた間奏や多重のコーラスがDメロに入ってるところは、海外のエスニックなテイストを効かせているかな。ヒマラヤの岩塩みたいな。

坂倉 ヒマラヤの岩塩ってどんな味なの?

光村 ほんのりピンクの岩塩で、粗挽きにするとガリッと噛み応えがあるんだよね。塩味が強め。で、コショウは粗挽きの黒コショウでハードな感じ。全体的に「渦と渦」は、ガッツリとNICO Touches the Wallsっていう素材を味わっていただける曲になってると思います。

実はレア曲「僕は30になるけれど」

──続いてカップリングの「僕は30になるけれど」の解説をお願いします。

NICO Touches the Walls

光村 この曲は20代最後のオリジナル曲になることを意識して、ツアー中に作ったんですよね。20代の最後らしい、今しか歌えない曲をカップリングに入れたいという話から制作がスタートして。で、なんとなくアコースティックギターを弾きながら歌う曲かなと思ってたんです。一聴するとシンプルだし、メロディもキャッチーで聴きやすい曲なんだけど、ビートにもサビの展開にも凝ったし、何よりも僕らにしては珍しくめちゃくちゃ隙間がある曲になってます。

──確かに音数はかなり少ないですね。

光村 「渦と渦」が定番のロースだとしたら、こっちはもう少し凝ったカットをしてる。部位で言えばシンシンですかね。ちょっと赤身が多くて、しかもレアな部位。繊細な味も特長なんですよ。

──シンプルなように聞こえて、実は細かい部分で凝ってると。

光村 そうそう。何も説明を受けずに食べたら、「これロースかな?」って感じるような味なんだけど、味わっていくとちょっと風味が違う。シンシンってシンタマっていう箇所の中心部にある部位で、同じくこの曲にも自分たちの芯の部分を曲に込められた気がしてます。

対馬 シンシンっていうのは俺も同意だな。

光村 あとはスパイスとして、曲の随所に登場するフルくんのスライドギターが効いてますね。あの音で曲が引き締まってる。

古村大介(G)

古村 そうだね。シンシンってあまりタレに付けず、肉の味を生かすような食べ方がおいしいと思うんです。でも、これまでと同じような味付けにはしたくなくて、今まで挑戦したことのない味付けを考えたら、スライドギターになったんです。

──アコースティックギターをベースにしたカントリー調の曲だからマッチしてますよね。

坂倉 そうですね。塩コショウで味付けして、ピリッとしたホースラディッシュと一緒に食べるイメージというか。

──ちなみにこの曲は「切っても切っても切れない関係なんです」「とても君と離れらんないよ 君の中で 俺は生きてる」といった歌詞が印象的で、リスナーに向けて「これからもよろしく」と伝えているような気がしました。

光村 間違いないです。30代のNICO Touches the Wallsもよろしくっていうメッセージを込めたんで。

──ツアー中に作ったことが、曲調や歌詞に影響を与えた部分はありますか?

光村 ありますね。ツアー初日から20代最後のツアーだってMCで言ってたし、それを自覚しながら4人で全国を回って、お客さんとコミュニケーションをする中で曲が降りてきたんですよね。1人でじっくり作ってたら、もうちょっと内省的な暗い曲になってたかもしれない(笑)。

ニューシングル「渦と渦」 / 2015年9月2日発売 / Ki/oon Music
初回限定盤 [CD+DVD] / 1800円 / KSCL-2623~4
通常盤 [CD] / 1300円 / KSCL-2625
期間生産限定盤 [CD] 1500円 / KSCL-2626~7
CD収録曲
  1. 渦と渦
  2. 僕は30になるけれど
  3. ラーメンたべたい
  4. 渦と渦(inst)(期間生産限定盤のみ収録)
  5. 渦と渦(89sec ver.)(期間生産限定盤のみ収録)
初回限定盤DVD 収録内容

アコタッチと呼んでみて☆vol.5

  • まっすぐなうた
  • 夏の大三角形
期間生産限定盤DVD 収録内容
  • 「アルスラーン戦記」ノンクレジットOP映像
NICO Touches the Walls LIVE SPECIAL 2015“渦と渦~西の渦~”
2015年12月23日(水・祝)大阪府 大阪城ホール
NICO Touches the Walls LIVE SPECIAL 2016“渦と渦~東の渦~”
2016年1月8日(金)東京都 日本武道館
NICO Touches the Walls(ニコタッチズザウォールズ)

NICO Touches the Walls

2004年4月に光村龍哉(Vo, G)、古村大介(G)、坂倉心悟(B)の3人で結成。同年7月に対馬祥太郎(Dr)が加入し、2005年に東京・渋谷と千葉・柏を中心にライブ活動をスタートさせる。2007年11月にミニアルバム「How are you?」でメジャーデビューを果たし、2008年9月に1stフルアルバム「Who are you?」をリリース。2010年3月には初の東京・日本武道館ワンマンライブを開催した。以降もコンスタントに作品を発表し、2014年2月に初のベストアルバム「ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ベスト」をリリースした。2014年8月には2度目となる日本武道館単独公演を大成功に収めた。2015年1月に過去2回の日本武道館単独公演の模様を映像化した作品をリリース。2月に新たな試みとなるアコースティックアルバム「Howdy!! We are ACO Touches the Walls」を、同年6月にシングル「まっすぐなうた」、9月にシングル「渦と渦」を発表した。2015年12月には初の大阪・大阪城ホール単独公演、2016年1月には3度目となる日本武道館公演を控えている。