音楽ナタリー Power Push - NICO Touches the Walls

“間違ってた”4人の「まっすぐなうた」

NICO Touches the Wallsの2015年第1弾シングル「まっすぐなうた」が、リリースされた。

本作の表題曲は豪快なギターがイントロを飾り、「間違ってた なんか全部間違ってた」という光村龍哉(Vo, G)のシャウトから幕を開けるロックチューン。曲の長さは3分台と、近年のNICOには珍しい、勢いで突っ走るタイプのナンバーだ。

常に試行錯誤を繰り返しながら、自分たちの音や表現を追求してきたNICO。彼らは一体何を“間違ってた”のか。今回音楽ナタリーは、バンドの近況とともに新曲について聞くためツアー先である宮崎を訪れ、インタビューを行った。彼らの現在のモードを、宮崎・MIYAZAKI WEATHERKING公演の前に撮影されたオフショットの数々とともに楽しんでほしい。

取材・文 / 中野明子

2年ぶりのツアーの感触は……

──先月から2年ぶりの全国ツアーが始まって、この宮崎公演がちょうど折り返し地点です(取材は6月6日に実施)。調子はどうですか?

NICO Touches the Walls

古村大介(G) 悪くないですね。

光村龍哉(Vo, G) 坂倉が結膜炎になったくらいで、全体的にはいい感じですよ。だんだんお客さんとのコミュニケーションが楽しめるようになってきたし。

──初日の東京・豊洲PIT公演(参照:行ってきます!NICO Touches the Walls、2年ぶり全国ツアー豊洲から開幕)は硬かった?

古村 うーん、俺らにしては今までのツアー初日よりは硬くなかったかな。

光村 そうだね。お客さんに届けたいライブのイメージが固まってたからね。ただ、去年2度目の日本武道館公演をやって、東京と大阪のBillboard Liveでアコースティックライブをやって……いろんなタイプのライブを経てからのツアーだから“次のステージ”を見せなきゃって思ってた部分があった。それに東京でのワンマンは何度かやってるから、どれくらい完成度の高いものを見せられるかっていうので、少し緊張感はありましたね。

古村 で、豊洲の次の浜松は数年ぶりだったから、それはそれでまた違った雰囲気で。

光村 ひさびさに行く地域では完成度の高いものを見せるというより、この1、2年で自分たちがやってきたことを表現することを考えてますね。待っててくれたお客さんも、俺らのパフォーマンスを受け入れてくれてた感じがします。

──来ているお客さんの層に変化はありましたか?

光村 一番感じるのは男の子が増えたことかな。

──同性のお客さんが増えた理由に思い当たる節はありますか?

光村龍哉(Vo, G)

光村 この数年、等身大で音楽をやってるからじゃないですか。男の子って、ものすごい嘘のない等身大の人か、ものすごいスーパーヒーローにしか興味がないものだから。

対馬祥太郎(Dr) あはははは(笑)。

光村 例えるなら、等身大を感じさせるトム・ハンクスか、超人のウルトラマンかって話ですよ。

坂倉心悟(B) わかるわかる。

──等身大の自分たちが、同性のリスナーにも伝わっている手応えがあると。今回のツアーではニューシングルから「まっすぐなうた」と「いいこになっちゃいけないの」の2曲を演奏していますが、それぞれの曲の反応はどうですか?

光村 「いいこになっちゃいけないの」は、俺たちの得意技というか。今までの曲で言うなら「妄想隊員A」とか、「バニーガールとダニーボーイ」とか、ライブでロックっぽい盛り上がりを見せるダンスナンバーと同じ系統なんで、リリース前にも関わらず反応がいいですね。

──一方で「まっすぐなうた」は?

光村 こっちは今まで見られなかった反応がありますね。3分ちょっとで駆け抜けるようなタイプの曲って、ここ最近は出してなかったから。ライブでも抑揚のある曲をやることが多かったし。ただひたすら音の塊をお客さんにぶつけてる感じなんですね。俺らが今感じてる思いが詰め込まれた曲なんで、それをお客さんにまっすぐ受け取ってもらってる。そんな感じです。

全部間違ってた!

──「まっすぐなうた」は「間違ってた なんか全部間違ってた」という今までの自分たちを否定するような歌い出しから始まりますよね。そこには今の光村さんや、バンドの思いが出てるのかなと感じたんですが。

光村 そうですね。ホントに今の自分の思いを清々しく書いた感じですね。ただ、このフレーズができた時点で自分としてはすっきりしすぎちゃって、曲を完結させるまでに時間がかかったんですけど。

古村大介(G)

──どうしてこういう曲が生まれたんでしょうか?

光村 2014年から2015年の年明けにかけて、ベスト盤(「ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ベスト」)を出したり、アコースティックアルバム(「Howdy!! We are ACO Touches the Walls」)を作ったり、音楽的な面でバンドとしていろんな可能性を探っていた時期だったんです。それを経て、次はどういうことをしようかというのはすごく悩んだんですよね。特に自分たちにとってはアコースティックアルバムを作ったのが大きくて。バンドが丸裸にされて、歌い方も演奏も見直さなきゃいけなかったし。で、もう1回エレキギターを持ったときにどんな音を鳴らせばいいのか……。新しいジャンルの音楽を取り入れて、「NICOすごい!」って思ってもらいたくて、いろいろ作ってみたけどしっくりこなくて。ひとまず何も考えずに作ろうと思って、無意識に出てきたのが冒頭の歌詞とメロディだったんです。

坂倉 エレキを持ったときに鳴らしたいサウンドの上に、素直な言葉が乗ってる印象でしたね。

古村 最初にこの曲を聴いたときはすごいびっくりしたんですよ。最近の俺らにはない短さで、ひたすら勢いのあるタイプだったし。一番大きいのは歌詞のインパクトですけどね(笑)。

光村 歌詞は自分たちを否定するところから始まるけど、ネガティブなものではなくて、これは「間違ってたことに気付けてよかった」っていう歌だから。3人に曲を渡すときに「ものすごいポジティブな歌なんだ」ってことは説明しました。中でも対馬くんは説明しなくてもわかってくれた感じはありましたね。

ニューシングル「まっすぐなうた」2015年6月24日発売 / Ki/oon Music
初回限定盤 [CD+DVD] 1800円 / KSCL-2593~4 / Amazon.co.jp
通常盤 [CD] 1300円 / KSCL-2595 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. まっすぐなうた
  2. いいこになっちゃいけないの
  3. 夢で逢えたら
初回限定盤DVD収録内容

"Ready Set Go!! Count Down Live 2014→2015"より

  1. ホログラム
  2. TOKYO Dreamer
  3. バイシクル
  4. 天地ガエシ
NICO Touches the Walls(ニコタッチズザウォールズ)

2004年4月に光村龍哉(Vo, G)、古村大介(G)、坂倉心悟(B)の3人で結成。同年7月に対馬祥太郎(Dr)が加入し、2005年から東京・渋谷と千葉・柏を中心にライブ活動をスタートさせる。2007年11月にミニアルバム「How are you?」でメジャーデビューを果たし、2008年9月に1stフルアルバム「Who are you?」をリリース。2010年3月には初の日本武道館ワンマンライブを開催した。以降もコンスタントに作品を発表し、2014年2月に初のベストアルバム「ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ベスト」をリリースした。2014年8月には2度目となる日本武道館単独公演を大成功を収めた。2015年1月に過去2回の日本武道館単独公演の模様を映像化した作品をリリース。2月に新たな試みとなるアコースティックアルバム「Howdy!! We are ACO Touches the Walls」を、同年6月にシングル「まっすぐなうた」を発表した。