ナタリー PowerPush - NICO Touches the Walls
葛藤の新アンセム「Mr. ECHO」
まだ計算の余地がある
──カップリングの「チェインリアクション」は坂倉さんと古村さんのコンビによる楽曲で、ギミックに富んだ変則的なロックチューンですよね。これはどんな形で作ったんですか?
坂倉 去年、もっと本格的に曲が作れるように打ち込みとかの環境を整えたんですよ。で、ある日「一緒に曲を作ろうよ」ってフルくんが家に来て、そのときに作った曲がこれ。2人の共作はこれが初めてですね。
古村 去年のツアー(「NICO Touches the Walls TOUR 2012 "ALGORHYTMIQUE"」)に向けて書き下ろした曲です。
──ツアー全公演で披露してましたもんね。お客さんの反応もよかったですし。
古村 変拍子だし、どうノればいいかわからないって感じで、最初のほうはポカーンとされてましたけど(笑)。
──ちなみに2人の作業分担は決まってたんですか?
古村 特には。ちょっとずつ2人で作っていったんですよ。イントロはツアータイトルの「ALGORHYTMIQUE」(※アルゴリズムとリトミックを合体させた造語)にちなんで数学的な音を意識して。まずはイントロのギター掛け合いのパートを作って、次にAメロを作って、Bメロ作って……。そのあとでメロディを付けてという感じで、曲の流れの通りに作っていきました。
坂倉 僕が煮詰まると、フルくんのスイッチが入って……交互にフレーズを重ねながら作りましたね。
光村 2人とも学生時代理系だったんで、俺のボーカルの一番気持ちがいい音が出るのはどこなんだってところから考えるんですよ。2人が「初めて一緒に作りました」ってデモを送ってきたから歌ってみたんだけど、すごい歌いやすいの。
古村 かなり計算しました。「あの曲で一番高いのはここでしょ? で、今がここだから、みっちゃんが出せる音より2音高い」とか言って歌のキーを決めていったんだよね。
──作ったあとでキーを下げる形もあると思うのですが。
坂倉 今回はキーの幅を決めた中で作ることに挑戦してみたくて。
光村 自分とは真逆の作り方ですね。俺は浮かんできたもの優先して、ちょっとくらい高くてもがんばって声を出すんですけど、2人は俺の歌声を研究しつくして曲を作ってる。なんてめんどくさいやり方をするんだろうって。
古村 俺らとしては、みっちゃんにどんぴしゃにハマる形にしたかったんですよ。
──(笑)。この曲はアレンジが込み入っていて、リズムも複雑だし、プレイヤーとしてのNICOを楽しめる曲になってますよね。
光村 演奏してて一番楽しいタイプの曲ですね。
坂倉 でもツアーの最初のほうはお客さんはノリにくいのかなあという感じはしましたね。2~3回と来てる人たちに浸透して、終盤で受け入れられたのかなっていう気がしましたね。
光村 自分たちが演奏してて楽しいタイプの曲って、リズムもアレンジもわりとひねくれた感じになっていくんです。
──2人で作ってみて課題が見えたところもありますか?
古村 リスナーからの受け入れられ方も含めて、まだ計算できる部分はあると思いましたね。
坂倉 でも計算しつくした結果、すごい単純なアレンジになったりして(笑)。次もがんばりますよ。
アルバムは「ラーメン二郎」の濃さ
──今作の初回限定盤に付くDVDには、2012年のライブ映像の中から選りすぐりのパフォーマンスが収められています。自分たちとしてアピールしたいポイントはありますか?
光村 僕の髪型が時期によってどんどん短くなっていくことかな(笑)。あとNICOの幅の広さっていうか、陰と陽が感じられると思う。パーティ的な「手をたたけ」からディープなアレンジの「ラッパと娘」まで、俺らの“サウンドの武器”が網羅されてる。中でも「ラッパと娘」は途中でパートチェンジしてるし、NICOの自由奔放なライブの雰囲気も味わえるかと。
坂倉 んー、俺は「キューン20」(2012年4月26日に東京・LIQUIDROOM ebisuで開催)の「image training」を一番見てほしいかな。「image training」って去年はこのときくらいしかやってなくて。改めてめっちゃいい曲だなって噛み締めながら観てました。
古村 俺はそれぞれに思い出があるんで、ひと言では言えないんですけど……。あえて言うなら、夏フェス(「HIGHER GROUND」。2012年7月28日に福岡・海の中道海浜公園野外劇場で開催)の映像かな。明らかにほかの映像と汗の量が違うところとか(笑)。特にみっちゃんのね。
光村 かたくなに去年の夏フェスは上着を着てましたからね。すげえ暑いのに上着を着ている俺も見どころです(笑)。
──さて、ニューシングルに続いて来月アルバムが出ます。先日無事完成したそうですが、どんなアルバムになりましたか?
光村 濃さで言えば「ラーメン二郎」レベルですね。胃薬片手に聴いてほしい感じ(笑)。シングルがまったくアルバムの予告編になってないような、極端で予想外のアルバムなんで、ぜひ楽しみにしていてください。
- ニューシングル「Mr. ECHO」 / 2013年3月27日発売 / Ki/oon Music9
- ニューシングル「Mr. ECHO」
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 1680円 / KSCL-2226~7
- 通常盤 [CD] / 1223円 / KSCL-2228
CD収録曲
- Mr. ECHO
- チェインリアクション
- SWEET MEMORIES
初回限定盤DVD収録内容
- image training(from “キューン20 イヤーズ&デイズ” 2012.4.26 @LIQUIDROOM)
- 夏の大三角形(from “FREE LIVE in 代々木公園” 2012.5.16 @代々木公園 野外ステージ)
- 手をたたけ(from “HIGHER GROUND” 2012.7.28 @海の中道海浜公園 野外劇場)
- ラッパと娘(from “ALGORHYTMIQUE” 2012.11.16 @Zepp Tokyo)
NICO Touches the Walls
(にこたっちずざうぉーるず)
2004年4月に光村龍哉(Vo, G)、古村大介(G)、坂倉心悟(B)の3人で結成。同年7月に対馬祥太郎(Dr)が加入し、現在の編成となる。2005年から渋谷と千葉・柏を中心にライブ活動をスタートさせる。2006年2月に初のミニアルバム「Walls Is Beginning」をインディーズレーベルから発表し、翌2007年11月にミニアルバム「How are you?」でメジャーデビューを果たす。2008年9月に1stフルアルバム「Who are you?」、2009年11月に2ndフルアルバム「オーロラ」をリリース。2010年3月には初の日本武道館ワンマンライブを開催した。2011年4月には3rdアルバム「PASSENGER」、7月にシングル「手をたたけ」、12月に4thアルバム「HUMANIA」を発表し、それぞれの作品でバンドの新たな音楽性を提示する。2012年には幕張メッセイベントホールでワンマンライブを実施し、成功を収めているほか、「夏の大三角形」「夢1号」というシングルを2作発表。2013年3月にニューシングル「Mr. ECHO」をリリースした。4月には5thアルバム「Shout to the Walls!」を発表する。