ナタリー PowerPush - 二千花
体温と手触りを伝えるメロディ 新曲「リバーズエッジ」リリース
歌詞は「カウボーイが傷心旅行してるイメージ」
――一方、カップリングの「Nowhere Cowboy」はタイトル曲とはガラッと雰囲気の違う、楽しい1曲になっています。
野村 しばらくシリアスなシングルが続いてたんで、二千花はこんなこともやるんだっていうところを見せられたらなぁと。あとは自分たちも楽しみたかったっていうところで。
――サウンドの方向性は?
野村 宮本一粋はもともとオーディションでジャクソン・ファイブの「ABC」を歌ってグランプリを獲ったこともあって、ああいうアメリカのリズムは原点みたいな部分もあるんです。なので、それを二千花でもいい形でできたらいいなと思っていたんです。そういう部分で、今回は軽い実験作というか、毛色の違ったものを作ってみたらわりとおもしろい形でできたんですよね。ただ1曲目で難航したんで、時間がとにかくなかったんですよ。スタジオに入ったはいいけど、テンポも決まってなければ何もできてない状態で。でも、“まぁいっか”みたいなノリで作っていきました。
宮本 セッションっぽい感じだったよね。
野村 歌だけ録って、それを家に持って帰って口ドラムとか、ふざけた音をいっぱい入れて。時間があればもっと詰めていったと思うんですけど、でもそれがなかったから隙間がある感じになりましたね。これはこれでおもしろいと思うんですけど。
――うん、ラフなスタイルが似合う曲だと思います。
宮本 私も好きですねぇ。メロディが跳ねる感じで、すごく楽しげ。でも私はそこにどこか気だるい要素を入れたいなって思ったんですよ。キャピキャピ歌うとかわいらしい曲になっちゃうから、あえて歌い方でギャップを。カウボーイが傷心旅行してるイメージの歌詞も気に入ってます。
野村 ギャグソングですね、これは(笑)。ただ、ドラマの主題歌っていう、二千花を知ってもらえるチャンスをいただけたタイミングで、同時にこういうおもしろい曲を出せたのは良かったですね。音楽に対する気持ちはどんどんマジメにはなってますけど、表現に対しての自由度とか楽しさみたいなものは広くなってきてるのかなって思いますね。
今年は思い切ったことをしたい
――このシングルから幕を開ける09年。何か目標はありますか?
野村 二千花らしさは大事にしつつ、いろんなことをやりたいと思ってます。ダンスミュージックでもいいかなとかも思ってますし。人間、そんなに外そうと思っても外せなかったりするじゃないですか。だからこそ、ちっちゃな振り幅ではなく、思い切ったことをしたほうがいいのかなぁって。2枚目のアルバムに向けておもしろいものを作って行きたいですね。
宮本 私もいろんな曲を歌いたいっていうのはもちろんなんですけど、今年はライブの年にしたいんですよね。ライブが一番大事だなって去年、気づいたんで。
野村 おっせぇな(笑)。
宮本 いやいや、いろいろあったんですって(笑)。今年はほんとにどこでも歌わせてもらいますみたいな感じでいきたいですね。ライブという中で今までの二千花とは違う、新しい見せ方やパフォーマンスができたらいいなって。
――そういえば宮本さんは「MUSIC SCAPE ~YOUR SCREEN」というカバー曲集で課外活動もしてますよね。マドンナの「Crazy For You」やダニエル・パウターの「bad day」、the indigoの田岡美樹さんとのコラボでスウィング・アウト・シスターの「Now You’re Not Here」を歌われています。
宮本 いい意味で二千花のレコーディングとは真逆だったんですよ。その場の空気やノリを大事にして、感覚的に歌う感じで。自分のクセを抑えてクールに歌ったりもしたので、また新しい自分の声を発見できたりもしました。すごくイイ経験でしたね。またこういう機会があれば、ぜひ参加してパワーアップしたいなって。
――そこで得たものを二千花にフィードバックできますもんね。
野村 どんどん修行積めばいいんじゃないですかね。フロントに立つ人間にとって、雰囲気や呼吸のスピード、歌い方っていうのは、場数をこなしていかないと絶対身につかないものだと思うので。この3年間はずっと僕としかやっていないので、また違うものを吸収していくのはすごくイイことだと思うから。課外活動に関してはいちリスナーとして、親戚のおっちゃんみたいな気持ちで聴きますんで(笑)。
宮本 とか言って、めっちゃダメ出しされそう。怖い~(笑)。
二千花(にちか)
2006年にギタリスト/作曲家として活躍する野村陽一郎が、ボーカリストの宮本一粋に出会ったことをきっかけに結成。2007年2月にシングル「エーデルワイス」でデビュー。全国26局のラジオ局でパワープレイを獲得し、リスナーの間で話題となる。同年7月には、気鋭のクリエイター集団STUDIO 4℃が制作する「Genius Party」の主題歌を手がけ、同時期からライブ活動をスタート。 一度聴いたら忘れられない宮本の独特の歌声は、野村の作り出す楽曲の魅力を倍増させ、聴き手の心にしみわたる。