ナタリー PowerPush - 二千花
体温と手触りを伝えるメロディ 新曲「リバーズエッジ」リリース
心の中にスーッと染み込むエバーグリーンなメロディを生み出す野村陽一郎と、聴く者の感情を心地良く揺さぶる奇跡の歌声を持った宮本一粋による2人組ユニット、二千花(にちか)がニューシングル「リバーズエッジ」をリリースする。
読売テレビ・日本テレビ系全国ネットドラマ「リセット」の主題歌となっている本作は、誰しもの記憶の中にあるような懐かしい景色を呼び起こしながら、揺れ動く感情を描き出す。そして、弱さや痛みを受け入れるからこそ見えてくる、その先にある強さをしっかりと教えてくれる。日々の生活でがんじがらめになっている人たちの心のモヤモヤは、この曲できっと優しく“リセット”されることだろう―――。
取材・文/もりひでゆき インタビュー撮影/平沼久奈
それまでに作っていた曲たちとは違う匂いがした
――現在放映中のドラマ「リセット」の主題歌になっている新曲「リバーズエッジ」が、いよいよシングルとしてリリースされることになりました。この曲はドラマの内容を反映して制作されたものなんですか?
野村 そうですね。台本をいただいてから制作をするっていう、二千花としては初めての経験で。
――やっぱり通常の曲作りとは違うものですか?
野村 何度もつまづいて、何曲もボツを作りました(笑)。普段は自分たちの内から出る衝動みたいなものを音楽にするのが常なんですけど、今回は外から来たものに対して作るっていうことで、多少の違いはありましたね。結局、自由なものを作るっていうぶんには、そんなに変わりはないんでしょうけど、ちょっと足かせになってしまったというか。
――確かに、意識しすぎると縛られてしまいますよね。
野村 最初はそこまで意識してたつもりではないんですけど、シングルになるものを書かなきゃとか、少しでも二千花らしいものを出さなきゃとか、余計なイメージがジャマになっていって。今までの制作の中では一番、難航しました。
――宮本さんは台本からどんなものを受け取りましたか?
宮本 人間のそのまんまの部分……悪く言えばキタナイ部分だったり、弱い部分だったりっていう、そういう部分が出ていたので、すごく共感できる台本でしたね。なので、あんまり熱すぎる曲っていうよりは、優しくささやきかけるような曲が合うんじゃないかなぁって、そのときに感じていました。
――なるほど。仕上がった楽曲を聴かせていただくと、そのイメージはそのまま形になっている印象ですね。3拍子のリズムがすごく柔らかな印象で。
野村 いつか3拍子の曲を書きたいなと思っていたんですけど、今回はフラッと自然な形で出てきました。20曲くらい作った中で、これが一番最後にできた曲だったんですけど。
――ボツを重ねていた中で生まれたこの曲には大きな手ごたえがあったんじゃないですか?
野村 自分の世界の相当底のほうにいた曲なので、自分ではジャッジできなかったですね。ただ、それまでに作っていた曲たちとは違う匂いがするなっていう感覚はありました。締め切りも迫ってきて、間に合うかどうかっていうプレッシャーが大きくなっていたときだったんですけど、もうどうにでもなれと思って一回、寝たんですよ(笑)。それこそ気持ちをリセットするつもりで。で、その後に楽な気持ちで書いたのがこの曲なんです。
自分の体温にすごく合うメロディ
――そうして生まれた曲を最初に聴いたとき、宮本さんはどう感じました?
宮本 陽一郎くんの声が入ってるデモテープを聴いたとき、メロディは優しいんだけど、どこか内にある芯の強さみたいなものが出てるなって思いました。ただフワフワしてるだけのメロディじゃないなって。あとは、やっぱり3拍子の曲だから、サビの部分とかでは前へ前へ訴えかけるような言葉が合うんじゃないかなぁとかも思ったり。すごくいろんなインスピレーションを与えてもらえましたね。
――その瞬間に、どう歌おうっていうイメージも膨らみました?
宮本 デモを聴いた段階ではそんなにイメージはなかったんですけど、仮歌を録る段階で自分の体温にすごく合うメロディだなって感じたんですよ。なので、ホントにリラックスして、自分のそのままの声で歌うっていうことを心がけましたね。
――宮本さんの体温に合うメロディっていうのは、曲作りの段階からイメージしているものなんですか?
野村 そうですね。もうアルバムを1枚制作してますし、出会ってから3年くらい経ってるんで、彼女の得意、不得意っていうものは自分が一番よく知っているつもりで書いてますからね。そこは今の段階で一番ハマるものっていうのは常に考えてます。
――アレンジに関しては、どんな部分を大事に進めましたか?
野村 アレンジもけっこう悩んだんですけど、でもわりとオーソドックスなものにしようっていうのは思ってました。あと、やっぱりどっかに二千花らしさみたいなサウンドのテイストを残したいと思っていたので、印象的なイントロを作りたいなっていうこととか。
――確かに、曲の世界へと一気に引き込まれる素敵なイントロですよね。
野村 歌い始めのところにポツリポツリと雫が落ちるようなイメージのメロディと歌詞と歌い方があるので、そこに持っていかせるまでの導入部分としてのイントロの役割が大きいと感じていたんです。出だしで引き込めるような、そんな何かを模索しながらアレンジは進めていきましたね。
二千花(にちか)
2006年にギタリスト/作曲家として活躍する野村陽一郎が、ボーカリストの宮本一粋に出会ったことをきっかけに結成。2007年2月にシングル「エーデルワイス」でデビュー。全国26局のラジオ局でパワープレイを獲得し、リスナーの間で話題となる。同年7月には、気鋭のクリエイター集団STUDIO 4℃が制作する「Genius Party」の主題歌を手がけ、同時期からライブ活動をスタート。 一度聴いたら忘れられない宮本の独特の歌声は、野村の作り出す楽曲の魅力を倍増させ、聴き手の心にしみわたる。