ナタリー PowerPush - ナイス橋本
新作は友情コラボが光る1枚「あなたをもっと好きになる」
音楽に対しての誠実さ
——アルバムの最後にはオリジナルのソロ曲「一筋の光」も入っていまして。ファンにとっては、ついに新曲が聴けた!という感じだと思うのですが。
新曲はシングルで出そうかっていう話もあったんですけどね。でも時間が空いたし、ネタ的にはフィーチャリングとか賑やかした作品を出したほうが面白いかなと思って。
——なるほど。
それで、そのアルバムの最後に1曲自分のやつを入れて。次の作品へ向けて、最後は自分にしようと。
——ありのままの自分を肯定して、そこから希望を見出していくような歌ですよね。
「結局、ナイス橋本って何ぞや?」って思ったら、そんな感じなのかなって思って。こういうのが俺らしいのかなって。だって「キミは君★」っていう曲でデビューして、これも……。
——「僕は僕」!
ね? 変わんねーなって思って(笑)。昔は、同じこと何回言ってんだよ!? って思ってイヤだったんですよ。同じタイトルとか同じ意味を使った曲を書くのが。でも、書いてると結局それになるんですよね。それで、「わかった! 自分はこれなんだ」って思って。そんなことばっかり考えてるんだったら、そこはもう裸で行こうと。しかも、これを好きだって言ってくれるファンの人がいるんだったら……。
——もうそこを貫こうと。
はい。そこが僕の生き方だったり、僕っていう存在なんだろうなって思えて。あえて認められるようになったというか。
——無理に幅を広げるのではなく?
たぶん広がっていくと思うんですよ。いろんな人に会ったり、経験が増えていくと。自然と変わっていくものだから、焦らずに、自分なりに書けるものをやるのが一番誠実なのかなぁと思って。
——誠実に歌に向きあっている、と。
うん、誠実なところだけは曲げちゃダメなんじゃないかなって思います。だから、自分の曲を後になって聴きたくない、とかね。そりゃあ出来不出来はありますよ。だけど、過去を振り返っても、僕は自分の曲ずっと聴きますからね。聴けるっていうか。そこはやっぱり自分で折り合いをつけて作ってるから、曲に対してのそういう誠実さは常にありますね。
——パッケージとして出すときは、必ず納得して出せていると。
まぁ100%の納得っていうのはたぶんないと思うんですよ。それで満足しちゃうと次が出ないから。だいたい70パーセントくらいの満足でいつも出してる感じですね。
——残り30%はあるけど、それはそれでいいんですよね?
そうなんです。次のことも考えてるから。その時はもちろん100%だと思ってるんですけど、不思議なもので、超えてしまうともっと先があるかな、っていう。
——まだ30%あったわ、みたいな(笑)。
そう。たぶんモノ作りをしてる人って、ずっとそういうもんなんじゃないかなって思います。目標って、クリアした瞬間に「あれ、こんな感じだったんだ」って思うじゃないですか? なりたかったものにしてもそうだけど。
——わかります。
悩んでしんどいんだけど、実は振り返ってみるとそこが一番楽しかったりするんですよね。
——そうそう。
で、それがないのが実は一番さびしかったりするから。だからきっと、そういうスタンスで作ってるんだと思いますね。
忘れていた何かを思い出した
——話は変わりますが、今回これだけのクオリティの曲がある中で、最後が自分のソロ曲というのは気負いみたいなものはありませんでした?
まったくないですね。もう、楽しんでやるだけっていう感じで。もちろん聴く人の顔を思い浮かべてはいるんだけど、自分たちもいい意味で気を抜くことが大事だなと思ってやっていたので、全然プレッシャーはなく、サクサクできていきました。「意外とこうやって作ってると楽しいね」って(笑)。
——それって素晴らしいことですよね。
本当に。忘れかけていた何かを思い出しました(笑)。
——最後にファンの方へ向けてのメッセージをお願いします。
作品は、僕の手を離れたらもう聴く人のものだと思っているので。正直、その人の思ったように楽しんでもらうのが一番かなって思ってます。ただ、マイナスなことは考えてないし、楽しく聴いてほしいなと思って作っているので。これでテンションが上がってもらえたら嬉しいですね。
CD収録曲
- あなたをもっと好きになる
feat.コヤマユウ - 拳をあげて feat.ET-KING
- enter the stage feat.風味堂
- チャンス feat.タカチャ
- ココロのそばで feat. note native
- 一筋の光
ナイス橋本(ないすはしもと)
長崎県出身。学生時代から音楽活動を開始し、2001年に神戸のジャズファンクバンドに参加。敬愛するラッパーの名前をとって“ナイス橋本”と名乗り始める。
2004年にバンドを脱退し、ソロアーティストとして始動。FM局に送ったデモCD-Rがオンエアされたことをきっかけに、2006年3月インディーズから「nice to meet you」をリリース。LeadやSMAPらに楽曲提供をしつつ、2006年10月にシングル「キミは君★」でメジャーデビューを果たす。2007年2月に1stアルバム「AFTER THE RAIN」、2008年3月に2ndアルバム「OLD★NEW」を発表。
2009年3月にはET-KING、風味堂、タカチャらとのコラボを中心としたミニアルバム「あなたをもっと好きになる」をリリース。自主企画イベント「Nice To Meet You」も定期開催中。