ナタリー PowerPush - ナイス橋本

新作は友情コラボが光る1枚「あなたをもっと好きになる」

身近な友達をもっと好きになれた

——この曲「あなたをもっと好きになる」をアルバムタイトルにしたのはどうしてですか?

これはねえ、すごく悩んだんですよ。でもよく考えると、結局いろいろな人にオファーをしつつも、決まったのは意外と身近な友達が多かったなってことに気づいて。

——結果的に。

そう。で、作業とかしてるうちに、またそいつらと楽しくやれたっていう感覚があって。だから異性に限らず、友達に対してもっと好きになれたなというか……。フィーチャリングってそういう意味でもあると思って、せっかく「あなたをもっと好きになる」って曲があるんだったら、それは友達を好きになるでもいいし……という意味でつけたんですよね。

——素敵なエピソードですね。で、それをまさに象徴しているようなET-KINGとやった「拳をあげて」なんですけど。これはもう。ET-KINGらしさが全開ですね。

ホントに。彼らとは関西時代からよく飲んでる仲間だし、東京でもよく飲んでるんで。自然な流れで「やろうか!」ってなって。

——フロアで聴いているような感覚でした。

なんかね。男ばっかりでめちゃくちゃ暑苦しかったんですけど(笑)。

——レコーディングも盛り上がったんじゃないですか?

えぇ。楽しかったんですけど、まとめるのが大変でしたね。ビジュアルからして、まとまらないようなやつしかいないので、シャレになんなかったですけど(笑)。

——(笑)。

あいつら金の話しかしないんですよね、どうでもいいんですけど。「橋本さん、儲かってまっか?」って。それをかわすのが大変で(笑)。

——この曲って、シンプルでスッと入ってくるような熱さがありますよね。

そうですね。本当はカッコ悪いんだけど、意外とそういうことをポロッとサビにすると残るなって。シンプルでベストじゃないですか。そういうのが出せたなって思います。

よく「作文みたいだなー」って

——ちょっと話がそれるんですけど、ナイスさんの曲って本当にそういうシンプルな言葉が多いなって思います。

そうですね。あんまり作ったこともできないし、偉そうなことも言えないんですよね。「世界平和」……とか。

——ええ。

そういう柄でもないんで。だから一番真摯に伝わるものって自分が一番思っていることだし、それが一番リスナーにも伝わると思っている。そういうところを追求していくと単純な言葉になっちゃうんですよね。

——言葉のチョイスにしても、温かいものが多いというか。

よく「作文みたいだなー」って自分でも思います。でもそういう感じで書くんですよ、思ってることをダーッて。そのほうが伝わると思うし、それが僕なりの今できる技法というか。

——さきほど作文っておっしゃいましたが、すごくいい意味で私も同感です。あと、すごく個人的な表現なんですけど、絵本を読んでるみたいな感覚になったというか。

あ、それは確かにそうかも。映像があるんですよ、常に自分の中に。なんとなく好きだった風景とか綺麗な風景とか。そういうものをなんとなく文にしていく感じだから、絵本というのは近いかもしれないですね。

下手クソなテイクをあえてOKにした

——またアルバムの話へと戻りますが……3曲目、風味堂との「enter the stage」は、彼らならではのピアノもフィーチャーされていて。パーティっぽくて、ゴキゲンな感じですね。

作業を始める時に、お互いにまず「やりたいことやろうよ」って言ってて。ストレスなくしようって。「いいじゃん、俺の曲だし」って(笑)。で、お互いにあーだこーだ言いながら3日くらいスタジオにこもって作った曲ですね。

——ナイスさんと風味堂の持ち味が絶妙にリンクしてますよね。

元曲は打ち込みとサンプリングで作ってたんですよ。でもそれを、風味堂とやるんだったら全部、生(音)に差し替えようって。ビッグバンドみたいなサウンドも風味堂っぽいですよね。

——今回はなんと風味堂の3人がラップに挑戦していて。彼ら的には壁をひとつ超えたような……。

まぁ、壁を超えたのかマイナスなのかわかんないですけどね(笑)。少なくても彼らにラップさせたのは僕だけでしょう! 下手クソなテイクをあえてOKにしたんです。そっちのほうが面白いと思って。

——なるほど。

普段の風味堂って、すごい綺麗な曲や心に沁みる曲が多いと思うんですけど。でも、僕とのこの曲で彼らがアホなラップしてると思うと、逆に親近感が湧くんじゃないかなって。せっかく一緒にやるんだったら、相手のファンも楽しめるものがいいと思うんですよ。もちろん、僕のファンの方にもそれで風味堂を知ってほしいって思うし、そう考えたらこうなったんです(笑)。

——「やっぱり人生は 気持ちいい!」っていうフレーズですが、人生を“気持ちいい”って表現した人は今までいなかったんじゃないですか?

ああ、俺だけかもしれないですね(笑)。そう言われると嬉しいです。いろいろと悩んだりしますけど、人生は結局、気持ちいいんじゃないなって。パッと思いついたんですよ。

ミニアルバム「あなたをもっと好きになる」 / 2009年3月4日発売 / 1600円(税込) / SPEEDSTAR RECORDS / VICL-63138

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CD収録曲
  1. あなたをもっと好きになる
    feat.コヤマユウ
  2. 拳をあげて feat.ET-KING
  3. enter the stage feat.風味堂
  4. チャンス feat.タカチャ
  5. ココロのそばで feat. note native
  6. 一筋の光
ナイス橋本(ないすはしもと)

長崎県出身。学生時代から音楽活動を開始し、2001年に神戸のジャズファンクバンドに参加。敬愛するラッパーの名前をとって“ナイス橋本”と名乗り始める。

2004年にバンドを脱退し、ソロアーティストとして始動。FM局に送ったデモCD-Rがオンエアされたことをきっかけに、2006年3月インディーズから「nice to meet you」をリリース。LeadやSMAPらに楽曲提供をしつつ、2006年10月にシングル「キミは君★」でメジャーデビューを果たす。2007年2月に1stアルバム「AFTER THE RAIN」、2008年3月に2ndアルバム「OLD★NEW」を発表。

2009年3月にはET-KING、風味堂、タカチャらとのコラボを中心としたミニアルバム「あなたをもっと好きになる」をリリース。自主企画イベント「Nice To Meet You」も定期開催中。