音楽ナタリー PowerPush - NEW BREED

エレクトロ×ラウドの先駆者 12年目の「岐路」に立つ

エレクトロを混ぜたくて電子音を入れたわけじゃない

──全体で見ると、ポップでメロディアスな2曲から始まり全体的にもシャウトや電子音が少なくて、今までとはガラッと変わった印象を受けました。

Tommie-B ほう。 

──あれ? 意図的ではないんですか?

Tommie-B 意図的ではないですね。自然となっているのかもしれませんが。 

Toyo 僕たちは昔から電子音が入った音楽をやっているんですけど、そもそもエレクトロがやりたいからとかエレクトロとメタルを混ぜたいからって理由だけでこういう音楽をやってるわけじゃなくて。

──そうなんですね。

Toyo(Vo)

Toyo 自分たちだけでは奏でられない音を打ち込みで補って、より大きいものにしていくとか、聴いたときの壮大さを出していきたいっていうのがあるんです。2枚目の「the PIONEERS of SENSATION」で一緒にやった、キャメロン・ミゼルっていうプロデューサーはストリングスをすごい取り入れたりしてて、そういうものに影響されたのもあると思うんですけど。だから今作も自分たちの音楽やモードが変わったという感じはしないんです。聴き手からしたらNEW BREEDにはピコピコした音が鳴ってるっていうイメージがあるのかもしれないですけど。

──今作では“ピコピコ”を入れる必要がなくなったということ?

Tommie-B そういうことなんだと思います。確かにエレクトロ要素は少なめかもしれませんが、激しい部分とメロディアスでキャッチーな部分の両方があるのが僕たちのスタイルだと思っていて、そこは今まで通り一貫しているので。

正直、シャウトを丸1日聴けって言われたら無理

──ではできあがったものを聴いたファンの方から「エレクトロが少ない」って思われる不安もなかった?

Tommie-B 特になかったです。電子音にバンドとしてのアイデンティティを感じていれば、全体的にエレクトロ少ないねって意見は自然にバンド内で出てくると思うんですよ。でもそういうの全然なかったし、議題にもならなかった。自分たち的にそこってあんまり意識されてないものだと思ってます。シャウトに関しても同じで。実際のところ、前回のアルバムのPVの曲もシャウト全然ない曲だったりするんで。

Toyo もちろん激しいのもありつつ、だけれどもちゃんとメロディがあって、歌詞もわかるような歌がついている、いわゆるポップといわれるような曲は意識して作ってきました。シャウトだけだとある程度のパイがあっても、ラウド系だったりそのジャンルの中にしか届かないと思うんです。バンドとしてはより多くの人に聴いてもらいたいという思いがあるので。あと単純に自分が歌モノが好きなんですよね。リスナーとしては歌モノしか聴かないですし。

──ちなみに歌モノはどういうアーティストを聴くんですか?

Toyo 最近だとサマソニで観たThe 1975がすごいカッコよくてiTunes Storeで買いました。あとベン・ハワードとかジョン・メイヤーとか、大好きですね。

Tommie-B(B)

Tommie-B 僕はラウドな音楽も聴きますが、けっこうアンビエントとかチルとかが好きで。NEW BREEDではこういう音楽をやってるんですけど……正直、シャウトを丸1日聴けって言われたら無理なんですよね。テンションを上げたいときは聴くんですけど、やっぱり移動中ずっとシャウトとかだったらライブやる前に疲れちゃう(笑)。

Toyo 歌心は欲しいですよね。

──Toyoさんにとっては、シャウトすることとメロディを歌うことの違いって何かありますか?

Toyo 歌のほうがチャレンジングですね。

──というと?

Toyo どちらかというと人に突き刺さったり歌詞がしっかり聞こえたりするのは歌だと思うんです。そういう意味では、シャウトよりも歌のほうがうまさ、技術が必要になってくるんですよね。だからレコーディングでもシャウトはすんなり録れるんですけど、歌は苦労するんですよ。シャウトは1回で終わるのに歌は20回、30回歌い直したりします。

セッティングを超煙たがられた

──NEW BREEDは10年以上ラウドシーンで活動していると思うんですけど、このシーンの遍歴ってどう見てますか?

Toyo 前は僕らのような電子音を取り入れたバンドが本当に少なかったですね。ライブやるときにライブハウスにDI(ダイレクト・インジェクション・ボックス)っていう、電子音をミキサーに送るために使う機材があって、「DIを16個用意してください」「そこから8チャンネル出してください」とか言うんですよ。で、セッティングに30分くらいかかるみたいな。昔はそれを超煙たがられて。そんなことやるバンドほかにいないから。「こんな面倒くさいことすんじゃねー」って怒られる(笑)。今はそれが普通になってきてよかったなと。

──もう怒られないで済みますね(笑)。

Toyo 今はラウドロックでも若手のバンドがすごくがんばっていてうれしく思います。昔はこのシーンに、バンドもお客さんも全然いなくて、僕ら珍しがられてましたからね。今はこういう音楽をやってるバンドが新木場STUDIO COASTとかそういう大きいところでライブをしててますが、昔だったら考えられなかったです。昔から一緒にやってきたCrossfaithが海外であそこまで活躍できてるのも単純にリスペクトです。

左からTommie-B(B)、Toyo(Vo)。

Tommie-B 昔は海外に行くっていうことが1つのステータスでしたけど、Crossfaithが海外に行くっていうことを当たり前にした感じはありますよね。

──そんなシーンの中で、キャリアも人気もあって、新天地に立ったNEW BREEDは、今後何を目指していくんでしょうか?

Toyo 個人的にはもっと歌やメロディを意識してやっていきたいと思っています。

Tommie-B もっと海外でやりたいって気持ちはもちろんあるんですけど、それよりももっとアジア圏っていうものを意識して日本人としてやっていきたいと思っています。よりボーダレスな活動をしていきたいですね。

ライブ情報
NEW BREED presents「The DIVIDE」release show 2014
2014年11月29日(土)大阪府 梅田ZEELA
2014年11月30日(日)愛知県 RAD HALL
2014年12月12日(金)東京都 clubasia
NEW BREED(ニューブリード)

2003年にTama(G)とカナダ生まれカナダ育ちのToyo(Vo)を中心に結成。2004年にTommie-B(B)、翌年にMark(Dr)が合流し現在の編成になる。エレクトロにメタルやスクリーモなどラウドロックを掛け合わせたサウンドのパイオニアとして注目を集め、2010年にZESTONE RECORDSと契約。同年10月にニューヨークの名門スタジオSterling Soundのシニアエンジニアであるライアン・スミスがマスタリングを手がけた1stアルバム「Heart racing moments for all Lovers & Haters」を発表した。2012年にはキャメロン・ミゼルをプロデューサーに迎え2ndアルバム「the PIONEERS of SENSATION」を制作。そこから2年を経た2014年10月、自主レーベル・new born recordsを設立しTRIPLE VISION entertainmentとの共同マネージメントという新体制で新作CD「The DIVIDE」をリリース。