音楽というものは自分ひとりでは成り立たない

──NACの大きな魅力である「アコースティック音楽」の魅力、楽しみ方についてはどうですか？

TOSHI-LOW　アコースティックを語れるほど、別に自分がそんなにアコースティックじゃない出自というか……（笑）。普段エレキでギャーギャーいってる人間がどうなのか？っていう話だけど。でも逆に言ったら、だからこそ客観的に見れるし、あとから入った気持ちよさを実は知ってる気がしていて。大人になって、自分が選んだ、山があって川があって風があって空気があって、みたいな空間で、初めてまた自分も音楽を選ぶ。そういう中で、とげとげしい音楽ももちろん大好きだけども、全く反対側にあるあったかいアコースティックの、木や肌のぬくもりのある音楽を今自分の意志で選んでいるのが、すごい楽しいなって思う。そこまで行くのに、こうやってなかなか素直に言えなくて、「いやいやいや、そんなことねえよ」みたいなことばっかり言ってたけど。やっぱり楽しいし、楽しいということをほかの人にも伝えたいし。安い共感をもらいたいわけじゃないんだけど、初めから音楽というものは自分ひとりでは成り立たないように、やっぱり向こう側にいる誰かひとりに伝えたいという気持ちを、最終的にはアコースティックだろうがガツガツした音楽だろうがあんまり関係なく……やっぱり対象がいる、そこに向けて伝えていきたい。できればそういう気持ちを感じてもらえて、わかってもらえる人がひとりでもいたら、それは素晴しいことだと思う。そういうことを、最近はっきり言えるようになったなとも思う。

──出演者発表はもうちょっと先ですけど、今はいろいろと準備中ですか。

TOSHI-LOW　誰が出るんでしょうね。JUNE、歌えば？

JUNE　歌わないよ！

TOSHI-LOW　歌うか、踊るか（笑）。

JUNE　でもNACで聴くアコースティック音楽って、自分からすると、激しい音楽にあたるというか。ファッションだとか、エレキだからとか、リズムがどうだからっていうだけじゃなくて、内面にある激しさみたいなもので言ったら同じだなあと。……遠藤ミチロウさんが最近アコギでライブをやっていて、「アコギの可能性」みたいなことを言っていて。アコースティックギターに持ち替えたときに内面の激しさをどう表現するか？というのは、ものすごい振り幅、サイズ感があるんじゃないかなと思う。NACは昔からアコースティックな感じのライブをするメンバーが立ち上げたアコースティックなキャンプじゃないのが、自分が一番気に入ってる点なんですよね。日々日常、ステージ上でも何かしら壊しちゃうみたいな人間が、アコースティックセットではどういうライブをやるのかを観てみたいし。「どんな人が出てほしい？」って話になったとき、できるだけいろんなジャンルの人に出てもらったらどうなるんだろうね？みたいな考えが浮かぶのは、多分そこにNACの可能性があるからだと思う。伝統的なアコースティック音楽だとか、カントリーミュージシャンも来ますよみたいな感じじゃなくて、普段そういう音楽をやってない奴にやらせたいんだよねっていうのが、すごくキーになってるから。

TOSHI-LOW　誰をアコースティックにしたら面白いかな？

JUNE　誰だっけな、結構思いついたんだけど。超ベタな、メジャーっぽい人でもいいかもしれない。

TOSHI-LOW　電気グルーヴとかね（笑）。どうやるんだろう（笑）。

JUNE　あと、思いっきりパンクなバンドを、エレキじゃなくしたときに……。

TOSHI-LOW　観てみたいね。

JUNE　考え方はさまざまで、いつもの曲のテンポを落としてみて柔らかく、という発想もあるかもしれないけど、そのまま行け！みたいな感じも観てみたいなと思うし。それが許されるというか、「NACはなんでもありだよね」という空気があるから。

NACはあなたが入って完成する

──では最後にひとことずつ、遊びに来る人たちへのメッセージを。

JUNE　3年目を迎えるNACですけど、今はまだ新たな場所に対する不安がいっぱいで。でも何より作り手全員がどうするこうすると、結構いい歳なのに本気で試行錯誤できる魅力もあって。今年のNACは間違いなく未完成だろうけど、“魅力的な未完成”にはなるんじゃないかなと思うので、ぜひ来てもらいたいし、その未完成の中の重要なパーツとしてその場にいてもらえたらいいかなと思ってます。楽しみにしていてください。

TOSHI-LOW　3年目を迎えまして、新しい場所でめちゃめちゃ不安なんですけれども。そうですね、だから、未完成なフェスを何をもって完成とするかというと、こうやって額（Candle JUNE自作のアート作品。この特集掲載の写真で使用したもの）ができてますんで、その中にあなたが入って完成してもらいたいなと。そんな3年目です。多分来たら、楽しいんじゃないかな。全ては来る人たち1人ひとりの“自分次第”ですけど（笑）。