ナタリー PowerPush - New Acoustic Camp 2011

開催直前キーマンインタビュー

OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND TOSHI-LOWインタビュー

人は死ぬってことを忘れすぎてる

──なるほど。子供連れで参加する人は、自然って素晴らしいだけじゃないってことが子供に教えられますよね。

TOSHI-LOW(Vo)

うん、自然は怖いですよね。今年は、そういうことを再認識するイベントにもなると思っているので。去年もそういう意味合いがなかったとは思わないですけど。遊ぶことは学ぶことであるっていうのはちゃんと言いたくて。俺は田舎育ちなんで、生命の危険を感じる遊び方もしてたんですよ。男の子だからそういうこともするじゃないですか。どんだけ高いところ登れるかとか、どんだけ怖いとこ行けるかとか。だから「New Acoustic Camp」では、コントロールできないものが自然であって、それを感じながら、しかも遊ぶっていうことがしたかった。子供だけじゃなくて、大人もそういう目線になれるだろうし、もちろんちっちゃい子がいればそれを教えてあげればいいと思うし。ホントに、今は、人は死ぬってことを忘れすぎてるんだと思う。3.11が起こったにもかかわらずその事実を再び忘れたら、俺たちは学習しないアホな動物なんだなっていうことが完全に露呈するだけであって。

──人間のかたちをしているだけで、魂がないようなものですね。

ない。震災のあの状況を見てなんとも思わないんだ?ってこと。自分は大丈夫だって思ってる方も多いけど、みんないずれは死ぬわけですからね。でもその中でどうやって生きていくか?ってことは考えなくちゃいけない。楽しいことと厳しいことが両方一緒に存在するっていう意味では、俺たちのやってるこの壮大なくだらない遊びからも学ぶことはあるんじゃないかと思います。

──でもやっぱりそこに音楽があることで初めて、キャンプインしてみよう、行ってみようと思う人のほうが多いわけで。

そうそう。もちろん、自分の行動も全部音楽が中心になってるので。仲間といるときも音楽があるし、ひとりでいるときにも音楽があるし。すべてのきっかけは音楽。地元の仲間とやってるキャンプにだってギター持っていくわけだし、みんな歌うし、酒飲みに行ったって音楽はかけるし、音楽の話するし。だからこのキャンプインは、俺らにしてみればすごい自然なことなんだよね。

楽しめるのも楽しめないのも自分の問題

──こんな面倒くさいイベントよくやりますねって言ってくる人もいませんか?

いるでしょうね。でもそういう人って人間っぽくねえなって思っちゃうんだよね。俺は、音楽やってることも遊ぶことも、「あ、人間っぽくいたいって気持ちの表れなんだな」って、震災があってからよけいに感じるようになって。最初にも話したとおり、特に隠し事もないし、酔ってる姿を見られて嫌いになられてもいいし。「暴言吐かれました」とか「大っきらいです」とか、それでもいいし(笑)。それでも自分らしく振る舞いたい、人間っぽくいたいなあ、っていう感情がもうあふれてきてるので。だから、音楽が楽しめて、いろんな遊びができる「New Acoustic Camp」を今年もう1回やるのは必然だったのかなと。

TOSHI-LOW(Vo)

──「New Acoustic Camp」には、その場で生まれる物語に参加するようなワクワク感がありそうですね。

そういうふうに思ってくれたらうれしいな。音楽をどう受け取るかは、100%受け手に任せるべきだと思っていて。なので勘違いされて嫌われてもいいと思ってるし、「もしかしたらこの歌は今日この日のことなんじゃないか?」って思える瞬間があるかもしれない。そういう曲が1曲でもあって、その思い出を持って帰ってもらえるとうれしい。だから物語に参加するっていうのは大賛成ですね。そこで起こることは自分のものなんだよっていう。もっと言えば、楽しめるのも楽しめないのも自分の問題だってわかると思う。例えばその環境が不便だと思えば楽しくないことになってしまうだろうけど、自分が作ってると思えば楽しいことになる。自らが何も変えようとせず文句言うだけの人は、自分で自分の世界を汚してるだけなんですよ。だからそういう人は来なくていいです。

──あはは。そこまで言いますか。

うん、だって、そういう人がたくさん来るようになったら、「New Acoustic Camp」は、俺が最初に「やだ」って言ってたようなものになっちゃうから。正直、自然の中で一昼夜過ごすのは、ハードル高い行為だと思う。でも、そういう覚悟がある人が増えていかないと、意味ないと思うんですよ。それに来年がくるかどうかなんて今はもうわかんないし、まずあなたが生きてますか?って話なんで。そういう中でなんかひとつ、違う風景が見れたらうれしいだろうなって思うから。

OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND(おーばーぐらうんどあこーすてぃっくあんだーぐらうんど)

BRAHMANのメンバー4人とスコットランド系アメリカ人のMARTIN(Vo, Violin, G)、KAKUEI(Per)の6人から成るアコースティックバンド。TOSHI-LOW(BRAHMAN)とMARTINを中心に、2005年6月に結成される。2005年にオムニバス盤「The Basement Tracks-10YEARS SOUND TRACK OF 7STARS」に初音源「Dissonant Melody」を提供し、2006年に1stアルバム「OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND」にてデビュー。「FUJI ROCK FESTIVAL '06」や「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2006」をはじめとする各地のロックフェスティバルに出演し、多くの観客を魅了した。

その後もBRAHMANや個々の活動と並行し、定期的なライブツアーを実施。また2007年にミニアルバム「all the way」を、2009年にフルアルバム「New Acoustic Tale」をリリース。さらに2010年には、10月に道志の森キャンプ場(山梨県)にてキャンプイベント「New Acoustic Camp」を実施し、成功に収めた。2011年6月、新作ミニアルバム「夢の跡」を発表。

New Acoustic Camp 2011 公演情報

  • 2011年10月15日(土)
    山梨県 道志の森キャンプ場
    OPEN 8:00 / START 11:00
  • 出演者
    [Stage Yonder]
    HINATABOCCO / Predawn / COMEBACK MY DAUGHTERS(acoustic set)/ Salyu / 畠山美由紀 / SPECIAL OTHERS(acoustic set)
    [Stage Here]
    門田匡陽 / TICA / hozzy(藍坊主)/ Permanents / SION with Bun Matsuda

  • 2011年10月16日(日)
    山梨県 道志の森キャンプ場
    END 15:00
  • 出演者
    [Stage Yonder]
    THE DEKITS / 怒髪天(acoustic set)/ OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND
    [Stage Here]
    齊藤ジョニー&Shoestrings / キヨサク(MONGOL800 / The NO PROBLEM's)/ 曽我部恵一