never young beachが、3rdアルバムにしてメジャーデビュー作となる「A GOOD TIME」をリリースした。
これまで以上に気合いを入れ、プロとしての意識を持って作ったとメンバーが語る本作には、キャッチーで味わいのあるポップチューン9曲が詰め込まれている。今回のインタビューでは、新作の制作にまつわるエピソードや5人が見据えるバンドの未来について聞いた。
取材・文 / 松永良平 撮影 / 山川哲矢
変わらなきゃいけない
──CDデビューから3年目で3枚目のアルバムとなりますが、最近のバンドとしては作品を出すサイクルが早いですよね。
安部勇磨(Vo, G) 最初は何も考えてなかったんですけど、事務所のボスである北澤(学)さんが「ネバヤンは毎年夏に出そう!」ってバンド始まった頃に言っていて、僕らも「よし! そうしよう!」みたいなテンションになって。それが普通になってきて。ただ、今回は夏に間に合わせるのがけっこうツラかった(笑)。
──でも、これまでで一番夏という季節に自覚的なアルバムになっているかも。
安部 毎回歌詞を考えるのは冬なんで、頭がおかしくなりそうになるんですよね(笑)。春や夏のことを考えながら書いてみたり。レコーディングぎりぎりで書いてみたり。でもこうやって3枚連続で夏に出してみると、夏って楽しいことがいっぱいあるからすごいいいなって思います。
──それこそ1曲目の「夏のドキドキ」は去年の9月に7inchシングルとしてアナログで出した曲だったわけだし、そこから今年の夏までの約1年をかけてできていったアルバムなのかなとも思います。そういう意味で言うと、これまでのアルバムも、その1年1年のバンドの成長や見えてきた景色を反映しているんだなという感慨があるんです。ここで改めて、ネバヤンの成り立ちと今までをちょっと振り返って聞かせてください。もともとは安部くんと松島(皓)くんの宅録ユニットとしてスタートして、バンド活動をするためにメンバーを募ったんですよね。
安部 Twitterで募集しました。それに反応した3人がバンドに入ってくれて。
──そこからはトントン拍子で、メンバーが変わっていないのもすごいです。普通はそんなに最初からうまくはいかないものですよね。
安部 最初からうまくいってたわけじゃないよね。今もうまくいってるのかわかんないしね(メンバーを見ながら)。
阿南智史(G) うまくいってるんじゃない?
安部 でも、お互いすごく変わったよね。だって、俺、スズケン(鈴木健人)とか最初は本当嫌いでしたし。阿南も苦手なタイプだったし。
──巽(啓伍)くんに至っては、もともとベーシストですらなかったわけですし。
巽啓伍(B) そうですね。ベースの経験はないまま、いろんな壁を無理矢理越えさせられ、自分でも努力し……ツラかったっす(笑)。
──みんながバンドのために変わっていくことができた要因っていうのはなんだったと思います? 「このバンドのためにがんばろうと思えた理由は何か?」という話ですけど。
鈴木健人(Dr) 僕は1stアルバム(「YASHINOKI HOUSE」)、2ndアルバム(「fam fam」)を発売したり、「FUJI ROCK FESTIVAL」とか徐々に大きなステージに立たせてもらったりする中で、これはもうプロと言うか、自分が今まで憧れてきた人たちと同じ土俵に立ったんだという自覚がすごく出てきたんです。そのあたりで、自分でも「ちゃんとしないとダメだし、人並み以上に努力しないとまずいな」と思うようになりました。そういうことをライブとかを通して感じましたね。
巽 僕も「fam fam」までは、ライブもレコーディングも、目の前のことをこなすのにすごく必死でした。今回のアルバムを作ってるときに、ようやく個人としてのスキルとか、バンド全体のことを意識するようになって、ほかのメンバーが出してる音にもっと注視してバンドアンサンブルを考えられた部分はありますね。
阿南 「YASHINOKI HOUSE」のときは、マツコ(松島)と「どう弾く?」とかセッションしながら話し合ってフレーズを決めてました。今回のアルバムでは、自分が弾いたあとに加えるギターはこういうのがいいなという意識も僕の中でけっこう芽生えてきて提案したりしました。わりと僕が好き勝手にやって、マツコに「こういうのも弾いてほしい」と言ったり。そういう意味では、ギターのアンサンブルの作り方は、今回けっこう変わったかもしれないです。
松島皓(G) 阿南が言った通りで、前までは、先にリフを出したらそれに合わせてもう一方が弾くという、早い者勝ちみたいな感じでした。でも今回は、今までとやり方が変わったということもあり、僕はレコーディング中にすごく苦戦した部分がありました。阿南のギターに僕のギターがちょっと合わないという場面をずっとスタジオで繰り返していて、阿南に「どう弾く?」って聞いたらすげえいい感じのラインを返してくれるんで、悔しいけど「じゃあ、それで」みたいな感じでそのフレーズを僕も弾く、みたいな。そういうことがわりとありました。自分もまた新しい引き出しを見つけないといけないなという気持ちがあります。
“うまい”ことはすごくて気持ちいい
──2本のギターが絡まる音色やアンサンブルは、今までの作品の中で一番気持ちいいと思って聴いてました。
安部 僕は最近、演奏のうまさとかタイトさとか、音色のことをすごく考え直すようになったんです。曲作りしてても、そこをちゃんと考えてないメンバーに対して昔より腹が立つようになってて。昔はよくも悪くもそこはどうでもよくって、みんなが楽しければいいやというのがあったんです。でも今は責任感と言うか、「それだけじゃつまんない」と思う自分が出てきたんです。まっちゃんは今「苦戦した」って言ってましたけど、苦戦するのは当たり前なんですよ。責めるつもりで言うんじゃないですけど。阿南はPAELLASでも活動しながら引き出しを増やしてる、鈴木や巽も個人でやることをやってるのが近くにいてわかる。まっちゃんは自分の音楽的な活動をちゃんとしてない。苦戦って言い方すら僕はおかしいと思ってます。やってなかったら苦戦するのは当たり前で。そういうところの線引きについて、昔に比べて僕が厳しくなったという変化はあります。自分に対しても。悔しいって気持ちがどんどん強くなってきて。今も自分に凄く焦りを感じたり。もっともっとって。やりたいことの理解度があって正解をちゃんと導けないとバンドとして認めたくなくなってきた。だから、「今回のツインギターはいい」ってみんなに言われると思うんですけど、アイデアは阿南のほうが圧倒的に多いんです。
──そこの意識の持ちようは明確な変化ですね。
安部 そうですね。僕はバンドメンバーとはそういうことは常に話します。自分で言うのも変だし、僕自身もまだまだなんですが、僕がバンド以外の方と仕事とかで一緒に何かさせてもらう機会が増えてきて。そういうことを通じて、歌うことや、プレイヤーとしての楽しさもわかったし、みんな音楽が好きならそこまでになってほしいなと思うようになったんです。僕もだし、みんなもこのままじゃいけないっていうか、いつまでも楽しいだけじゃないんで。みんながどんどんそうなったらみんなで高め合えるなって。
──そう思うようになる具体的なきっかけは?
安部 レコーディングとか演奏することに関しては、去年、冨田ラボさんのアルバム(「Superfine」)で「雪の街」を歌ったことが大きいですね。それまで演奏や歌が“うまい”ってことを僕はちょっとバカにしてたんですけど、それがこんなにすごくて気持ちいいことなんだって初めて体感したんです。そして、そこに自分が入ったときにいかに自分が足りてないかも痛感しました。
鈴木 勇磨が出た冨田ラボさんのライブは僕も観ていて、みんなうまくてグルーヴもあるし、ドラムの人は僕より3、4歳下だったりもして、すごく衝撃を受けましたね。勇磨もすごくのびのびと歌ってる感じだったし。演奏のうまさを疎かにしてはいけないんだなとすごく思いました。
安部 ライブとか人に広げることについて感じたのは、去年出たフェス「SWEET LOVE SHOWER」がきっかけですね。自分がそれまであんまり好きじゃなかった音楽に対しても「すごい」と素直に思っちゃったし、僕らがこのままのスタンスでは、どんなにいいライブをしても何も人に残せないという事実がものすごく明白に見えて。ここで心を開かなきゃ自分の好きな音楽も人に伝えられないと思ったんです。その2つで僕はだいぶ変わりました。
──安部くんから「開かれる」「伝える」という言葉が出てくるとは。
安部 伝えるって、すごくダサいと思ってたんです。でも今は、僕が尊敬してた音楽家の皆さんと会ったりしたことで、「こういういいものを世代を超えて伝えないといけない」という気持ちが芽生えてきて、それを僕らのキャラだったらどういうふうに伝えられるかということを、曲作りと同じくらい重要に考えるようになりました。ボイストレーニングにも行くようになったり、メンバーに対する接し方も変わりました。バンドを始めた頃の気持ちよさも、あれはあれで僕に必要だったんです。でもバンドって、1stアルバム、2ndアルバムがよくても、そこで変われるか変われないかが大きいと思うんです。やっぱり完成度を高めていかないと、僕らのあとに出てくる若いバンドにはフレッシュさでは勝てなくなっていくわけだし。変わらなきゃいけないというのはすごく感じるようになりました。
──バンドとしての目標を定めたうえで緊張感を持つようになったということですね。
安部 ライブでも、「今日はクソだった」みたいなことはなくなってきました。でも、やっぱり「今日は最高だった!」ってライブを続けていかないと意味がないので、それをやるためにどれだけ準備をして気持ちを高められるかに重きを置くようになりました。
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不安って一番人を成長させるのかな
- never young beach「A GOOD TIME」
- 2017年7月19日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
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初回限定盤 [CD+DVD]
4104円 / VIZL-1196 -
通常盤 [CD]
2808円 / VICL-64814
- CD収録曲
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- 夏のドキドキ
- なんかさ
- 気持ちいい風が吹いたんです
- SUNDAYS BEST
- 白い光
- 散歩日和に布団がぱたぱたと(Band ver.)
- CITY LIGHTS
- SURELY
- 海辺の町へ
- 初回限定盤DVD収録内容
-
ONE MAN TOUR "April O'Neil" 2017.4.8@LIQUIDROOM
- Motel
- 自転車にのって
- どんな感じ?
- 散歩日和に布団がぱたぱたと
- 気持ちいい風が吹いたんです
- ちょっと待ってよ
- Pink Jungle House
- どうでもいいけど
- あまり行かない喫茶店で
- fam fam
- 夢で逢えたら
- SURELY
- 明るい未来
- お別れの歌
- never young beach「SURELY / 気持ちいい風が吹いたんです」
- 2017年6月21日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
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アナログ盤
1620円 / HR7S-044
- 収録内容
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SIDE A
- SURELY
SIDE B
- 気持ちいい風が吹いたんです
ライブ情報
- never young beach 3rd album「A GOOD TIME」TOUR
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- 2017年9月3日(日)岡山県 YEBISU YA PRO
- 2017年9月14日(木)愛知県 THE BOTTOM LINE
- 2017年9月15日(金)静岡県 HAMAMATSU FORCE
- 2017年9月18日(月・祝)北海道 cube garden
- 2017年9月22日(金)香川県 DIME
- 2017年9月23日(土・祝)福岡県 BEAT STATION
- 2017年10月1日(日)大阪府 ユニバース
- 2017年10月14日(土)石川県 Kanazawa AZ
- 2017年10月15日(日)新潟県 NEXS Niigata
- 2017年10月17日(火)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
- 2017年10月20日(金)東京都 赤坂BLITZ
- never young beach(ネバーヤングビーチ)
- 安部勇磨(Vo, G)、松島皓(G)、阿南智史(G)、巽啓伍(B)、鈴木健人(Dr)からなる5人組バンド。2014年春に安部と松島の宅録ユニットとして始動し、同年9月に現体制となる。2015年5月に1stアルバム「YASHINOKI HOUSE」を発表し、7月には「FUJI ROCK FESTIVAL '15」に初出演する。2016年には2ndアルバム「fam fam」をリリースし、さまざまなフェスやライブイベントに参加。2017年7月にSPEEDSTAR RECORDSよりメジャーデビューアルバム「A GOOD TIME」を発表した。