NELN 第2章の幕開け|邁進し続ける3人の今日までの歩みと目指す場所

強まった「NEO NERD LOVELY」のコンセプト

──では、ここから新曲の「SUMMERY」「デジャヴ」の話に戻らせてください。どちらもゆったりしたムードのミディアムナンバーですね。

森岡 最近になってメンバーがどんな人間なのかよく考えたり話したりするようになり、歌詞を書くうえでの楽曲の主人公像も変わったんです。今まではバラバラの性格の4人の誰にでも合うような、漠然とした人間像で書いてたんですけど、今回は2曲とも歌詞の主人公がどんなものが好きでどんな生活を送っているかをピンポイントで考えました。

──中でも「SUMMERY」は夏の気だるさを表したような楽曲ですね。

森岡 同じく夏をテーマに去年発表した「ノンフィクション」がコロナのせいでどこにも出かけられず退屈しているという設定だったのに対し、「SUMMERY」ではもともとインドアで最初から外で元気に遊ぶ気がない主人公を描いています。今の体制になり、3人のキャラクター的に「NEO NERD LOVELY」というコンセプトが強まった側面もありますね。あと、「ノンフィクション」の歌詞の中に主人公がオンラインゲームをしているシーンがあって、「SUMMERY」の主人公はそのゲームの相手の友達という裏設定もあるんです。「ノンフィクション」の続編と言えば続編ですね。

MAO メンバー3人とも夏は暑いから部屋から出たくないタイプなので(笑)、曲のコンセプトに合ってると思います。

NATSUMI 「SUMMERY」は既存曲とは違った、声のテンション的にゆるい感じの歌声でレコーディングしました。もともとアイドルを始める前はそっちのほうが得意で、逆に「ワンダーフォーゲル」や「snow light」みたいに声を張って歌うほうに苦手意識があったんです。今回のような楽曲を歌えるのはうれしいですね。

KARIN メンバーそれぞれの個性が出ていて、「この子、こんな声出せるんだ」と驚く方もいるんじゃないかと思います。

MAO 声を張り上げない曲のほうが感情を入れたり、歌詞に合わせて歌い方を工夫しやすかったりするんです。

メンバーの魅力が伝わる曲に行き着いた

NELN

──一方の「デジャヴ」はどんなテーマで制作したんですか?

森岡 NELNの今までの曲って、わりと主人公の熱量が高いものが多くて。例えば「ころがる」では「絶対にうしろを振り向かずがんばる!」という決意を歌っていたり、「mimic」では「人にどんなことを言われても自分は自分だ!」という気持ちを描いていたり。確固たる意志を表現していたんですけど、それと比べると「デジャヴ」はあまり強いメッセージ性のない歌詞になっているんです。「なんでもいいよ。ゆるくいようよ」という空気感がサウンド的にも歌詞的にも表れていて。この3人はいい意味で世間をちょっとだけナメているというか(笑)、「何事にも情熱を持ってがんばります!」みたいな熱さが一番にある人たちじゃないんですよ。もちろん、大事なときとかやるときはやるんですが、「なんでもいいっすー」みたいな感じ。これ、褒めてるからね(笑)。どんなときも肩の力を抜いて楽しめるっていう。その雰囲気を曲に求めたのは初めてで、それができたのは今の体制になったからだと思います。

──この曲にも「NEO NERD LOVELY」の空気感が表れてますね。

森岡 「SUMMERY」では「NEO NERD LOVELY」の「NERD」の部分を強調しているのに対し、「デジャヴ」ではどちらかというと「LOVELY」のほうを意識していて。何かに対して“LOVE”になっている人、ハマっているものを思い切り楽しんでいる人を描いています。

NATSUMI 「デジャヴ」では自分としても気だるい女の子を演じながら歌いました。最初のMAOのパートも引き込まれるような歌い方で、今まで出しきれてなかった表現力が出ていると思います。

MAO 「REM」(12カ月連続リリースの9曲目)以来の歌い出しを任されたのがうれしくて。森岡さんの書く歌詞が好きなので、声を張り上げないようにしつつ、なるべく感情を込めて歌いました。

NATSUMI KARINの歌もすごくいいんですよ。もともと声が低いんですけど、「デジャヴ」では「これ、KARINなのかな?」と思うような歌声で。

MAO 私もそれ思った! かわいかったよね。

KARIN 本当!? 私は「KARINは歌に抑揚がない。AIっぽい」とずっと言われていて、今回も新曲でもその点が不安だったんですが、2人がこうやって褒めてくれてうれしいです。

森岡 MAOは今回の曲でスパークした感じがありますし、KARINもAIのような歌が新しいNELNのゾーンにハマったんだと思います。以前はライブでいかに熱量を伝えるかということを考え、耳に入ってきたときのインパクトを重視してレコーディングしてきましたが、今回は細かい表現に初めてこだわることができて。曲自体も今まではライブを考慮して、メンバーのいいところに合わせて曲を作ってこなかったなと、新曲を作るにあたって改めて気付いたんです。12カ月連続のときは私もNakasoneさんも曲の制作に追われている感じがあったんですけど、今は1曲に入魂することができるというか。ダウナーな曲でも、メンバーの魅力が伝わる曲に行き着いた感じがありますね。

NATSUMI 3人ともそれぞれの個性がいい具合に出ていると思います。

音楽で勝たないとどうしようもない

──この2曲のリリースを皮切りにNELNの第2章がスタートするわけですが、グループとして目指す場所はどこにあるんでしょうか?

NELN

森岡 結論から言うと、もっと多くの人に曲を聴いてもらって、音楽で知られたいです。その考えに至った経緯として、ライブのあとや普段のSNS上で作品や音楽についてなかなか話題に上がりにくいという現状があって。特典会の話題は多いんですが。もちろんお客さんとのコミュニケーションも大切にしていきたいし、MVの公開直後は反響をいただくんですけど、そこにプロデューサーとしての本音があるんですよね。音楽が主語になるようなグループにしたいっていう。なので新曲のMVやアルバムのジャケットでもメンバーの映像や写真ではなく、アニメーションやイラストを使っているんです。初めて耳にする人に一度アイドルという先入観を取っ払って曲を聴いてほしいなと。あと、コロナ禍の中でデビューしたことに対する使命感みたいなものも感じていて、ライブを大切にしつつ、離れていても世界中の人たちに楽しんでもらえるエンタメを作りたいと思っています。

──もっと音楽で語られたいというのは、いわゆる“楽曲派”のアイドルグループがどこも抱えてる悩みかもしれないですね。

森岡 ファンの方とは楽しい空間を共有していきたいですが、日々ライブをやって特典会をやってというアイドルとして当たり前のことを続けていくだけでは限界があると感じていて。そこでの売り上げや人気だけにとらわれていると本末転倒というか。NELNがそこの壁をぶち壊したいという野望がありますね。ある意味、楽曲派アイドルの括りにかまけてたらダメだなって思います。

──メンバーとしても音楽的にもっと注目されたいという思いがあるんですか?

NATSUMI 自分たちの同世代の人たちにも曲を広めていきたいですね。

KARIN 以前の私のようにアイドルのことを全然知らない人にも曲を聴いてもらいたいです。「この曲いいな」と思って調べてみたら「これアイドルだったんだ!」と驚くみたいな。

MAO いろんな音楽好きの人に刺さって、アイドルであることを意外に思ってもらえたらうれしいよね。それでライブにも足を運んでもらえたら何よりです。

森岡 今回のMVやジャケット的にも、いわゆるアイドルファンの方だけをターゲットにはしていないんです。かなり評価は割れるとは思いますが。

──でも、アイドルであることへのこだわりもあって、「売れたい」という気持ちも当然あるんですよね。

森岡 そうですね。私はあくまでアイドルをやりたいんですけど、目先の売り上げや人気に寄せていくほうがむしろ売れることから遠ざかると考えていて。正直なところ、アイドルの音楽性に対して誰しもがリスペクトの気持ちを持っているわけではないので、そこをアップデートしないと一生アイドルの音楽はナメられ続けると思うんですよ。若くなくなってアイドルを卒業して、そこから女優とかほかの道にいくのもいいと思うんですが、“若い”“かわいい”“女の子”という要素だけで消費されていくのでは意味がない。そのためには違うもので認知されなきゃいけなくて、やっぱり音楽で勝たないとどうしようもないんですよね。

──メンバーも森岡さんの考えに賛同しているんですか? アイドル的にはMVやジャケット写真でかわいく目立つように撮ってもらいたいと思うほうが自然だと思うのですが。

MAO 森岡さんがアルバムのジャケットや新曲のMVの意図について詳しく教えてくれて、それでちゃんと納得しましたし、自分たちもその方向で行きたいと思いました。進む方向が合致したというか、未来が見えやすくなりました。

──運営とメンバーの気持ちが合致してるのは素晴らしいことですね。

森岡 それは本当にモチベーションになりますね。ぜひ多くの人に第2章のNELNに注目してほしいです。

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