音楽ナタリー Power Push - ねごと&中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)
「ETERNALBEAT」で奏でた“鳴り止まないビート”“メロディの旅”
中野さんが口にした「僕を信じてください」
──中野さんと制作を進める中で、特に印象に残ったことはありますか?
沙田 いっぱいあるよね。
蒼山 うん。メンバーとよく話しているのは、「アシンメトリ」のデモを中野さんが持ってきてくれたときに「僕を信じてください」って言ってくれたことですね。最初にそう言ってくれたことがすごく印象的で。
沙田 「そう言ってくださるなら委ねられるな」って思ったし、実際、お互いに気持ちよく作業ができたので。初めて一緒に曲を作るわけだし、「どういうふうに乗っかればいいだろう?」と思っていたところに「信じてください」と言ってもらって、自分たちの決意も固まったんです。「この曲で飛躍したいな」っていう気持ちが、「絶対に飛躍するぞ!」に変わったというか。
──「このアレンジが正しい」ではなくて、「信じてください」と言ってもらうと、信頼感が増しますよね。
沙田 そうなんですよ。そのときに「疑問に思うことがあったら、ちゃんと言えるな」って思ったので。
蒼山 中野さんはハッキリ言ってくれるし、こちらの意見も引き出してくれて。ねごとのメンバーは思っていることがあっても、お互いに「どう言葉にしようかな」って考えてしまう瞬間があって。それをグッと外から引き出してくれるというか。
──それが中野さんのプロデュースのスタイルということでしょうね。
中野 まあ、いろんなやり方があると思いますけどね。バンドのやりたいことを引き出す人もいるだろうし、何も色が付いていないシンガーにいろんなものをあてがうのが得意なプロデューサーもいるだろうし。僕もBOOM BOOM SATELLITESで外部のプロデューサーと一緒にやってみようと試みたことがあったんですけど、なかなかうまくいかなかったんです。「何をやればどこに行けるのか?」を明快に言ってくれる人がいたらいいなという気持ちはずっとあったんです。
──BOOM BOOM SATELLITESはずっとセルフプロデュースでしたからね。
中野 うん。そこは結局自分たちでがんばるしかなかったし、自分たちの音楽を客観的に見るためにすごく労力を使ったんです。だからねごとのメンバーに「私たち、どうしたらいいですか?」と相談されたときに、僕だから言えることもあるのかなと。ねごとというバンドのキャリアをいい方向、いい形で積み重ねることしか考えてなかったし、「この先、5年、10年とバンドを続けていくんだったら、次に踏み出す一歩はどうしたらいいか、僕はちょっとわかるよ」って。
──そこには中野さん自身の経験も反映されているわけですね。
中野 もちろん。すべて、あのバンドを通して学んだことばかりだから。それを別の形でお返ししたいし、いい形に使ってもらいたいなとも思っていて。その最初のアーティストが、ねごとだったということですね。僕自身もいろいろと勉強になりました。「次はもっとうまくやれるだろうな」ということに気付いたし、「あと3曲くらい一緒に作ったら、もっといろんなことが表現できそうだな」と思って。
沙田 うれしいです。
先の方向性がすごくハッキリと見えるようになった
──実際、「ETERNALBEAT」というアルバムを完成させたことで、次の一歩に進める実感はありますか?
澤村 うん、それはかなりあると思います。
沙田 この先の方向性がすごくハッキリと見えるようになりました。今までは「いい音楽をやれたらいいな」という気持ちだけでやっていたというか、どういう場所に行きたいか、どういうふうになりたいかが見えてなかった部分もあるんですよ。今は「こういうことをやってみたい」と具体的に考えるようになって。
蒼山 アルバムに関してもこれまでは「そのときにやりたいことをやる」という感じでしたからね。
中野 そういうバンド、今は珍しいかもね。20代前半のバンドシーンを見てると、いかに近道で成功するかをちゃんと考えている人たちがけっこういるので。例えば「フェスの一番デカいステージのいい時間帯に出る。2年以内に」とか。ときどき「会社経営者みたいだな」「そんなことばっかり考えて音楽をやるのって、寂しくない?」と思うこともあるけど、そういう時代なんだなって。
──ねごとはそういうタイプのバンドではないですね、確かに。
藤咲 そうだったかもしれないですね。
中野 高校生の頃から注目されて、右も左もわからず、けっこう華々しくデビューして。自覚的に自分たちで舵を切るということを今回初めてやってるのかもしれない。もしかしたらこれからやるのかもしれないけど、フワッとしたところから始まったバンドの中に自意識が芽生えるきっかけになったとしたら、大きな仕事ができたなって思いますね。これからも“私のメロディ、私の言葉、私たちのバンド”というバランスを大事にしながら進んでいくといいんじゃないかな。
澤村 いいアドバイスをいただきました(笑)。
──プロデューサーとして関わったことで、ねごとの印象は変わりましたか?
中野 そう聞かれると、不思議と変わってないかも。メンバーそれぞれの個性を知っていく中で「面白いバランスで成り立ってるな」と思ったけど。僕は男兄弟だけだったし、BOOM BOOM SATELLITESも川島(道行)くんとやってきたから、女の子同士のことがよくわからないんですよ。だから「どういうパワーバランスでこの決定がなされたんだろう?」という謎もありますね。例えばアルバムの最後の曲(「凛夜」)では、幸子ちゃんに加えて、歌詞の一部分を小夜子ちゃんが書いてるけど、そういう形も珍しいと思うし。
澤村 そうなのかな?(笑)
──逆にねごとのメンバーは中野雅之さんというアーテイストをどんなふうに感じてますか?
蒼山 「こんなに素晴らしい人っているんだな」というのが私の印象なんですけど、それだとまた「褒めちぎってる」って言われますからね(笑)。言い方が難しいですけど、すごく誠実だなと思います。音楽家としてはもちろん、生き方も尊敬できるところがたくさんあって。希望になりましたね、いろいろな意味で。
──中野さんはねごとのあとにMAN WITH A MISSIONの楽曲のプロデュースも手がけられました。ほかのバンドにプロデューサーとして関わることは、中野さんのこれからのキャリアにも影響がありそうですか?
中野 あると思いますね。BOOM BOOM SATELLITESはすごく小さい社会の中で活動していたというか、川島くんと僕の想像力だけでやっていたところがあって。プロデュース業はもっと風通しがいいというか、「はじめまして」から始まって、「こういう考え方で音楽と関わっているんだな」ということを新たに知れるわけですからね。音楽との関わり方について改めて考える、とても貴重な時間になったと思います。ねごとはツアーを終えたあともイベントやフェスに出たり、曲を作っていくと思うけど、「ETERNALBEAT」というアルバムをきっかけに、さらに高みを目指してほしいですね。
ねごと一同 がんばります!
ねごとライブ情報
- ねごとワンマンツアー2017「ETERNALBEAT」supported by cafe & pancakes gram
- 2017年2月3日(金)香川県 DIME
- 2017年2月4日(土)広島県 CAVE-BE
- 2017年2月17日(金)福岡県 BEAT STATION
- 2017年2月19日(日)岡山県 CRAZY MAMA 2nd Room
- 2017年2月26日(日)新潟県 CLUB RIVERST
- 2017年3月3日(金)宮城県 仙台MACANA
- 2017年3月5日(日)北海道 cube garden
- 2017年3月11日(土)大阪府 BIGCAT
- 2017年3月20日(月・祝)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
- 2017年3月24日(金)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
- ねごと ニューアルバム「ETERNALBEAT」 / 2017年2月1日発売 / Ki/oon Music
- 初回限定盤 [CD2枚組+DVD] / 3996円 / KSCL-2836~8
- 通常盤 [CD] / 3100円 / KSCL-2839
DISC 1 CD収録曲
- ETERNALBEAT
- アシンメトリ
- シグナル
- mellow
- 君の夢
- DESTINY
- cross motion
- holy night
- Ribbon
- PLANET
- 凛夜
DISC 2 CD収録曲(初回限定盤のみ)
- カロン -Mizuki Masuda Remix-
- Lightdentity -Mizuki Masuda Remix-
- Re:myend! -Mizuki Masuda Remix-
- シンクロマニカ -Mizuki Masuda Remix-
- 黄昏のラプソディ -Mizuki Masuda Remix-
DISC 3 DVD収録内容(初回限定盤のみ)
- DESTINY -Music Video-
- Making of DESTINY -Music Video-
- アシンメトリ -Music Video-
- Making of アシンメトリ -Music Video-
ねごと
蒼山幸子(Vo, Key)、沙田瑞紀(G)、藤咲佑(B)、澤村小夜子(Dr)からなる4人組ロックバンド。高校2年生だった2007年に結成され、翌年開催された「閃光ライオット2008」で審査員特別賞を受賞する。2010年9月に1stミニアルバム「Hello! "Z"」でメジャーデビューし、2011年3月発表の1stシングル「カロン」がau「LISMO!」のCMソングとしてオンエアされ幅広い層から注目を集めた。同年7月、初のフルアルバム「ex Negoto」をリリースする。「SUMMER SONIC」「ROCK IN JAPAN FES.」「RISING SUN ROCK FESTIVAL in EZO」など、多数のフェスに出演する傍ら、「GirlsAward」「HARAJUKU KAWAii!! FES.」といったカルチャー系イベントにも出演し多角的に活躍。リリースもコンスタントに重ね、2016年11月に中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)と益子樹(ROVO)をプロデューサーに迎えたCD「アシンメトリ e.p.」を、2017年2月に4thアルバム「ETERNALBEAT」をリリースした。
中野雅之(ナカノマサユキ)
1971年生まれ。1990年に川島道行と共にBOOM BOOM SATELLITESを結成し、1997年にベルギーのレーベルからマキシシングル「JOYRIDE」をリリースし、1998年には初のフルアルバム「OUT LOUD」を発表する。日本国内だけでなく海外でも絶大な人気を集めており、アメリカやヨーロッパでもツアーを開催するほか、著名なフェスティバルにも多数出演した。2016年6月に川島の脳腫瘍を受けて、BOOM BOOM SATELLITESとしての活動終了を発表。同年11月にリリースされたねごとのCD「アシンメトリ e.p.」の収録曲「アシンメトリ」をプロデュースした。2017年3月には中野自身が編集、マスタリングを施したバンド最後の作品となるベストアルバム「19972016」ををリリースする。
- BOOM BOOM SATELLITES ベストアルバム
2017年3月1日発売 / Sony Music Records