音楽ナタリー Power Push - ねごと&中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)
「ETERNALBEAT」で奏でた“鳴り止まないビート”“メロディの旅”
ねごとが、「鳴り止まないビート」をテーマにしたダンサブルなアルバム「ETERNALBEAT」を先日リリースした。中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)と益子樹(ROVO)をプロデューサーに迎えたシングル「アシンメトリ e.p.」の方向性をさらに押し進めた本作は、「ねごと流のダンスミュージック」を体現すると同時に、メロディと歌詞の両面でねごとの魅力を改めて示した充実作になっている。
今回音楽ナタリーでは、アルバムに収録されている「アシンメトリ」と「シグナル」のプロデュースを担当した中野と、ねごとのメンバーにインタビュー。「アシンメトリ」「シグナル」の制作を中心に、「ETERNALBEAT」のコンセプト、お互いの印象などについて語り合ってもらった。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 上山陽介
自分たちにとってカッコいい音にフォーカスできた
中野雅之 もうツアー中でしょ? アルバム(「ETERNALBEAT」)の曲はどれくらいやってるの?
沙田瑞紀(G) 全部やってます。
中野 あ、そうなんだ。お客さんはどんな反応してる?
澤村小夜子(Dr) すごくいいですね。前に押し寄せるんじゃなくて、それぞれの場所で体を揺らしてくれてる感じで。
蒼山幸子(Vo, Key) 「アシンメトリ」は終盤にやってるんですけど、反応がすごくよくて。
中野 よかった。アルバムもけっこういい曲が多くて、驚きました。
藤咲佑(B) ありがとうございます!
──アルバム「ETERNALBEAT」は、ねごと流のダンスミュージックをテーマにした作品ですね。この方向に進むきっかけはなんだったんですか?
沙田 最初のきっかけは、ライブで“踊るゾーン”を作ってみたことですね。
澤村 2015年11月に開催した「お口ポカーンフェス?!」から設けていて。
沙田 DJ的な感じで曲と曲を演奏でつなぎながらやったんですけど、それが想像以上に楽しかったんです。そこから「この方向で曲を作ってみよう」と思うようになって。
──その集大成が今回の「ETERNALBEAT」というわけですね。中野さんはアルバムを聴いて、どんな印象を持たれましたか?
中野 僕が関わらせてもらったのは「アシンメトリ」と「シグナル」の2曲だけだから、作っていた時点ではアルバムの全体像はわからなかったんですよ。「デモはたくさんあるんです」とは聞いていたけど、どんな曲があるのかも知らなくて。でも、ちゃんと統一感のある仕上がりになってますよね。
蒼山 ありがとうございます。
──統一感もあるし、ねごとの個性もしっかり表現されていて。ダンスミュージックと言っても、汗をかいてブチ上がるという感じではなく、どこかクールな印象もありますね。
沙田 そうですね、汗をかいてブチ上がれる曲もいつか作ってみたいですけど(笑)、今回目指したのは、ねごとがもともと持っていた浮遊感やクールな感じを含めて、自分たちにとってカッコいい音にフォーカスしたものなので。
蒼山 そのきっかけになったのが中野さんと「アシンメトリ」を作ったことなんです。それまでは抽象的だった“ねごとが思うカッコいいダンスミュージック”を形にできたことで、「この領域にさらに踏み込んでいこう」と思えて。そこでサウンドの方向性を決めることができたので、中野さんにプロデュースしていただいたことはすごく大きかったですね。
プロデュースは人生の一部を共有すること
沙田 レコード会社のスタッフから「もしプロデューサーには入ってもらうなら、誰がいい?」って聞かれて、最初に出てきたのが中野さん、益子さんのお名前だったんですよ。BOOM BOOM SATELLITESは個人的に好きだったし、中野さんにプロデュースしてもらうことで、自分たちの想像を超える楽曲が完成するんじゃないか?という期待もあって。で、まずは「アシンメトリ」のプリプロ音源を中野さんに送らせてもらったんです。
中野 楽曲の骨格はしっかりしていたので、「どこにフォーカスするか?」ということを考えましたね。必要な部分はエンハンスして、必要ないと思うところを整理することで、楽曲のいいところを際立たせるっていう。そのデモを最初にメンバーと会ったときに聴いたもらったんです。「こんなのはどう? (俺に)付いてくるかい?」って。
澤村 そんな感じではなかったですけどね(笑)。
藤咲 「はじめまして」のときは私たちは顔合わせだけだと思ってたんですけど、中野さんがいきなりスピーカーを持ち出して、「デモを作ってきたので、聴いてみてください」って。
中野 ガチガチに緊張してたんですよ、僕も。
沙田 確かに私たち以上に緊張してたかも(笑)。
──中野さんがほかのバンドの楽曲をプロデュースするのは、ねごとが初めてですよね。
中野 はい。プロデュースする、もしくは楽曲をイチから一緒に作るというのは、例え短い時間であっても、人生の一部を共有することだと思うんですね。その1曲でアーティスト生命が大きく変わる場合もあるだろうし、この出会いによって彼女たちのこれからのキャリアにいいことが起きなければ一緒にやる意味がないというか。だから、すごく緊張していたんですよね。デモを聴いてもらうときも、こういう感じでね(手を震わせながら再生ボタンを押すマネをする)。
ねごと一同 ははははは(笑)。
──中野さんのアレンジによって、曲の雰囲気はどう変化したんですか?
澤村 私たちの原曲にあったものをブラッシュアップしてもらった部分もあるんですけど、曲全体の印象はかなり違ってましたね。例えるなら2Dから3Dに変わったというか。「音から風も感じるから、もはや4Dでは?」みたいな感じで。
沙田 プリプロの段階では、ゴリッとしたデジロックみたいな感じだったんです。でも、中野さんのデモはもっと浮遊しているイメージだったし、シンセのフレーズも効いていて。「こういうふうに解釈してくださったんだな」と思いました。
中野 普通は「この曲、どうしようか?」っていう話し合いから始まると思うんですけど、まずは僕のほうでグッと舵を切ってしまって、4人に「ここから自分たちはどこに向かうんだろう?」ってワクワクしてほしかったんですよね。初対面だし、そういうエンタテインメントがあったほうがいいなって。女性アーティストというのもあるし、「こんな服も似合うと思うよ」「こんな髪型も合うんじゃない?」みたいな提案の方法もいいのかなと。例えば幸子ちゃんだったら「かわいらしいイメージだけど、実はけっこうセクシーなところもあるんだよ」とか。そういうこともサウンドデザインで提示しようと思ったんです。「この服、着てみたくない?」ってお店に連れて行く感じというか(笑)。
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- ねごと ニューアルバム「ETERNALBEAT」 / 2017年2月1日発売 / Ki/oon Music
- 初回限定盤 [CD2枚組+DVD] / 3996円 / KSCL-2836~8
- 通常盤 [CD] / 3100円 / KSCL-2839
DISC 1 CD収録曲
- ETERNALBEAT
- アシンメトリ
- シグナル
- mellow
- 君の夢
- DESTINY
- cross motion
- holy night
- Ribbon
- PLANET
- 凛夜
DISC 2 CD収録曲(初回限定盤のみ)
- カロン -Mizuki Masuda Remix-
- Lightdentity -Mizuki Masuda Remix-
- Re:myend! -Mizuki Masuda Remix-
- シンクロマニカ -Mizuki Masuda Remix-
- 黄昏のラプソディ -Mizuki Masuda Remix-
DISC 3 DVD収録内容(初回限定盤のみ)
- DESTINY -Music Video-
- Making of DESTINY -Music Video-
- アシンメトリ -Music Video-
- Making of アシンメトリ -Music Video-
ねごと
蒼山幸子(Vo, Key)、沙田瑞紀(G)、藤咲佑(B)、澤村小夜子(Dr)からなる4人組ロックバンド。高校2年生だった2007年に結成され、翌年開催された「閃光ライオット2008」で審査員特別賞を受賞する。2010年9月に1stミニアルバム「Hello! "Z"」でメジャーデビューし、2011年3月発表の1stシングル「カロン」がau「LISMO!」のCMソングとしてオンエアされ幅広い層から注目を集めた。同年7月、初のフルアルバム「ex Negoto」をリリースする。「SUMMER SONIC」「ROCK IN JAPAN FES.」「RISING SUN ROCK FESTIVAL in EZO」など、多数のフェスに出演する傍ら、「GirlsAward」「HARAJUKU KAWAii!! FES.」といったカルチャー系イベントにも出演し多角的に活躍。リリースもコンスタントに重ね、2016年11月に中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)と益子樹(ROVO)をプロデューサーに迎えたCD「アシンメトリ e.p.」を、2017年2月に4thアルバム「ETERNALBEAT」をリリースした。
中野雅之(ナカノマサユキ)
1971年生まれ。1990年に川島道行と共にBOOM BOOM SATELLITESを結成し、1997年にベルギーのレーベルからマキシシングル「JOYRIDE」をリリースし、1998年には初のフルアルバム「OUT LOUD」を発表する。日本国内だけでなく海外でも絶大な人気を集めており、アメリカやヨーロッパでもツアーを開催するほか、著名なフェスティバルにも多数出演した。2016年6月に川島の脳腫瘍を受けて、BOOM BOOM SATELLITESとしての活動終了を発表。同年11月にリリースされたねごとのCD「アシンメトリ e.p.」の収録曲「アシンメトリ」をプロデュースした。2017年3月には中野自身が編集、マスタリングを施したバンド最後の作品となるベストアルバム「19972016」ををリリースする。
- BOOM BOOM SATELLITES ベストアルバム
2017年3月1日発売 / Sony Music Records