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今の自分たち”を歌った 両A面タイアップシングル
ねごとのニューシングル「Lightdentity / Re:myend!」のサウンドには、バンドの意識の高まりが着実に表れてきている。「Lightdentity」はエレクトロの透明な感触が涼やかに駆け抜けていくポップナンバーだし、「Re:myend!」はさまざまなアイデアが曲の構造に仕込まれた楽曲だ。そしてこのシングルを通じて描写されている歌詞は、去年以降の彼女たちの現実とリンクしている部分が大きいように感じられる。一時期はへヴィな状態にあった4人だが、その経験を糧とすることで、今は上昇気流にあるのではないだろうか。今回の取材に応じてくれた蒼山幸子(Vo, Key)、藤咲佑(B)との対話からは、自分たちが今後どう歩んでいくべきかをしっかりと見極めようとしているバンドの現在形が伝わってきた。
取材・文 / 青木優 インタビュー撮影 / 高田梓
夏フェスに来る前に聴いてほしいシングル
──今度のシングルは両A面なんですね。
蒼山幸子(Vo, Key) はい。このシングルを8月に出すのは、夏フェスのライブに来る前にみんなに聴いてほしいからなんです。2曲とも音の楽しさがすごく出てる曲だし、ライブをイメージしながら作った部分が大きかったし。しかもカラーが違う2曲で、ねごととしても新しい一面があると思うんです。あとは、3曲目の「彷徨」も合わせてみると、これは意識はしてなかったんですけど、「Lightdentity」のタイトルにiが入ってたり、「Re:myend!」も(タイトルの読みに)“マイ”が入ってたり、「彷徨」の歌詞にもiが入ってたりで、ちょっとコンセプトシングルのような感じもあって。結果的に、すごくいい3曲になったなと思ってます。
──そういえば前のシングルの「sharp ♯」にも歌詞に「愛」が出てきてましたね。では、今回の制作過程はどんな感じだったんですか?
蒼山 まず「Lightdentity」は、トラックができたのは去年の夏前ぐらいですね。最初はもっと違う形の曲だったんですよ。この音が、シンセじゃなかったりして。
──あ、そうだったんですか?
蒼山 はい、最初はピアノの音でした。それにテンポももっとゆっくりで、ゆったりとした感じの曲だったんですけど。そこから最初のキーボードの♪ドゥトゥールールルー、というリフが印象的だったので、(沙田)瑞紀(G)を中心にトラックを練り直していって。その中で「もっとライブで踊ってもらえる曲にしたいな」ということに挑戦したというか。3拍子で踊れる曲はなかなかないんですけど、3拍子で踊らせたい!って(笑)。
藤咲佑(B) 瑞紀にその思いがあったんですよ。「4拍子だと普通だから、絶対に3拍子でこの曲をやり抜きたいんだ!」というのが、すごい強くて。私たちもその思いに乗っかろうと思って、作りました。
──じゃあアレンジにはいろいろと苦心したんですか?
蒼山 うん。曲を生み出す前というよりは、生み出してからどうしていくかというところで、結構試行錯誤しましたね。トラックが去年の夏頃にできて、そのあとに歌詞とメロディもいろんなパターンを付けてみたんですけど、なかなかハマらなくって。そんなときにリクルートの「ナースフル」のCMの話をいただいたんですね。で、看護師って、未来にひとつ覚悟を持って進んでいかないといけないというか、自分がそこに自信を持って飛び込んでいかなきゃいけないお仕事で……そういう部分では、職は違っても、ねごとに通じるものがあるんじゃないかなと思ったんです。だから、そこでナースのお話にするんじゃなくて、ほんとに今の自分たちの気持ちをそのまま書けばいいんじゃないかなと思って、歌詞を書き始めました。今回初めて作曲のクレジットをねごとにしているんですけど、歌詞を書くときにみんなから「今の自分たちは何を伝えたいか」というアイデアをたくさんもらって。最終的にまとめたのは私なんですけど、4人で作った感じがあったので、ねごとというクレジットにしました。
藤咲 今の私たちって21~22歳で、職業を決める歳でもあって。どうなっていくかわかんない、でも、そこで切り開いていくのは自分しかない、っていうのは誰でもあるじゃないですか。自分たちで何か行動しなきゃ何も変わらないっていうのが現実だと思うし。今の私たちもちょうどそういうところにいるので、ほんとに同じ目線で書けましたね。
──なるほどね。この曲に書かれている気持ちを察しようとすると、前回の「sharp ♯」のときのインタビューを思い出すんですよ。あなたたちはバンドの方向性に迷っていたけれども、「どうにか吹っ切らなきゃ」という思いが、この曲にはすごくあるなと思ったんです。
藤咲 うん、そうですね。「sharp ♯」のあの時期に悩んでなかったら、ほんとに「Lightdentity」はこの歌詞じゃなかったかもしれないと思います。
ニューシングル「Lightdentity / Re:myend!」/ 2012年8月8日発売 Ki/oon Music
- 「Lightdentity/Re:myend!」初回限定盤 [CD+DVD] 1575円 / KSCL-2100~1
- 「Lightdentity/Re:myend!」通常盤 [CD] 1260円 / KSCL-2102
収録曲
- Lightdentity
- Re:myend!
- 彷徨
DVD収録内容
2012.5.12@渋谷AX
お口ポカーン!?~フラットな気分でもいいよ~
ツアーファイナルより
「季節」
「メルシールー」
「sharp ♯」
ねごと
蒼山幸子(Vo, Key)、沙田瑞紀(G)、藤咲佑(B)、澤村小夜子(Dr)からなる4人組バンド。高校2年生だった2008年1月に結成し、同年開催の「閃光ライオット2008」決勝大会まで進出。審査員特別賞を受賞する。同年11月に発売された「閃光ライオット2008」コンピレーションアルバムにも、大会で披露した楽曲「ループ」で参加する。その後勉強に専念するため一時ライブ活動を休止するも、2009年9月に本格活動開始。2010年2月より行っている自主企画「お口ポカーンフェス?!」も毎回好評を博している。2010年9月29日、1stミニアルバム「Hello! “Z”」をKi/oon Musicよりリリース。2011年3月発表の1stシングル「カロン」はau「LISMO!」のCMソングとしてオンエアされ、幅広い層から注目を集めた。夏には全国各地の野外フェスに出演し、多くのロックファンから賞賛を浴びた。2012年4月、アニメ「機動戦士ガンダムAGE」アセム編のオープニングテーマに起用されたニューシングル「sharp ♯」をリリース。8月には両A面シングル「Lightdentity / Re:myend!」を発売する。