ナタリー PowerPush - ねごと

闇を抜けた4人が目指す“光”を歌う最新シングル

どうやって軌道を整えるかわからなかった

──小夜子さんはどうです? 夏フェスでもMCをしてましたけど。

インタビュー写真

澤村 ああ、そうですね……あんまりその記憶がないんですけど(笑)。ほんと、すごくいっぱいライブをやってましたからね。でも「見せなきゃ見せなきゃ」という気持ちが強かったから、自分の世界に入りがちになってた時期ではあったと思います。

蒼山 多分そこで自信をつけさせてくれるのは「4人で今やってる」っていう気持ちだったはずなんですよ。「大丈夫、絶対この4人ならできるよ」って思ってステージに立ってたら、きっと恥ずかしさもなかったと思う。でも、そういうのを後回しというか、置き去りにしちゃってたなって。それに気付いたのは11月でしたね。大阪でライブをする機会があったんですけど、そのときもライブに対しての悔しい気持ちがずっと続いてたんです。それで終わったあとに、PAさんが私のところに来て「無理してるような感じがする」って言われたんですね。そのときに「あ、そうなんだ」ってすごく思って、それで「みんなは今どう感じてるのかな」って思ったんです。その話してるのを佑とか瑞紀も何気なく見てくれてて。それで次の練習のときに4人で話し合いをして、その次の日にはスタッフを含めたねごとチームで話し合いをしました。そういう、悩んでいる素振りはあまり見せずにライブをやってたつもりだったけど、スタッフの人たちもやっぱり感じていたことだったみたいで。

──そこで悩んでる素振りを見せてなかったのは、みんなががんばり屋だからですよね。今までもハードスケジュールを一生懸命こなしてたし。ただ、この話の雰囲気からすると、かなりシリアスな状態だったみたいですね。

沙田 多分、何が間違いなのかが、わからなかったんですよ。自分たちで信じてやったことだから。だから、どうやって軌道を整えるか、何が正しいのかが、わからなかった。そこで話し合ってから、「じゃあねごとって本来何をやるんだっけ?」「ライブで何がしたいんだっけ?」みたいなことを、みんなで考えましたね。そのことは年末過ぎそうなところまで引っ張っちゃいました。で、今年になって、やっと「足並みをもう少し揃えたいな」と思いながら、今も模索してる最中ですね。

蒼山 その間には、いいライブもあったし、でもまた「ああ、ちょっと今日は……」っていう日もあったり、波はありますけど。でも気持ちの面では、去年よりもすごく意識が高くなってるなと思います。

──でもそうやって話し合ったのは、すごく意味のあることですよね。それをこういう取材の場でも言えるのは、全員が問題意識として共有してて、立ち向かっていくしかないと考えてるからでしょうし。楽しくやるばかりだった最初の頃を思うと、こういう問題に直面してるのは、それだけバンドが前進してるからですよね。

沙田 ねごとは出だしが「コピーバンドを楽しくやりたい」だけだったんですね。それが周りがちゃんとやってる中に飛び込んだわけで……多分、そのことが相当プレッシャーになってたのかな。でもそれでやってみた結果、やっぱり自分たちなりの自信を持つこと? 今できるものを見せることがすごく大事なんだなって、わかったというか。

自分たちが自然でいることが一番大事

──じゃあ、ねごとらしさって何だと思います? 今回いろいろ考えたと思うんですけど、改めて。

沙田 何だろう……ねごとらしさがなんなのかは、きっと最後までわからないと思うんですね。探し続けるものなんだと思うんですよ。ただ、自分たちがなんで音楽が好きでやってたかといったら、やっぱり4人で音を鳴らしてる瞬間が楽しいからという、ほんとにその部分だと思うんです。だからどんな曲を作っても、4人が楽しければ、そしてそれをお客さんと共有できれば全然いいと思うんですよ。だけど、その4人で楽しむ部分を忘れちゃってた期間があったということです。だから今は、まず4人がどれだけ楽しめてるか、ですね。いろんなシチュエーションで、いろんな対バンさんがいる中でも、「この鳴らしてる瞬間ってやっぱりすごく楽しいよね」という充実感が持てるライブができれば、それはねごとらしさを表現できてるということじゃないかなと思います。結果、今回のことで「手を挙げたくなったら挙げればいいし」みたいなことがわかったので、得たものは大きいと思いますけどね。自分たちが自然でいることが一番大事だなって。

藤咲 11月から12月の初めまで不完全燃焼が続いてたのは、きっとステージ上の私たちが楽しめてないからだろうなということが、ひとつ結論として出たんです。その次の段階で、チャットモンチーと対バンをしたんですけど、2人のステージからは楽しさだけじゃなくて、音楽に対する強さが伝わってきたんですよ。「楽しいだけじゃなくて強さを持たなきゃいけないんだな」っていうのが、すごく身にしみました(笑)。

蒼山 そういう意味では、ねごとというものをどうしていきたいのか? それをほんと、これから作っていかないといけないなと、そのときに強く思いましたね。チャットとやった日には、あの2人から「チャットモンチーを守るんだ!」という強い気持ちがすごく感じられたんですよ。

──そうですね。あれはチャットモンチーが2人になったばかりのライブで、まさに彼女たちはそういう時期でしたからね。

蒼山 うん、意地みたいなものを感じて、それがすごいなと思った。そういうものがねごとはまだ足りないなと思いました。負けん気みたいなもの? やっぱり同じステージに立ったらキャリアとかジャンルとか関係ないし、そこでほんとに強いライブを、ねごとらしいライブをしていかなきゃいけない。そういう意味での意地を、持っていかなきゃいけないんだなって。そしてたくさん努力した上で、ほんとに「何も考えなくてもいいライブができます」ぐらいのバンドになっていけたらいいなって思っています。そのためには、ねごとっていうバンドをこれからお客さんとも作っていけたらいいなと思ってるし……ほんとに「まだまだこれから」という感じですね。だから今もまだまだ波の中にいると思うんですけど、バンドとして団結することの大事さはすごく感じました。そういう意味では、その気持ちもこの「sharp ♯」にはすごく入ってるのかなって思います。

ニューシングル「sharp#」2012年4月4日発売 Ki/oon Music

  • sharp# 通常盤 / Amazon.co.jpへ
  • sharp# 期間生産限定盤 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤 1260円(税込)KSCL-2000
  • 期間生産限定盤 1365円(税込)KSCL-2001
通常盤収録曲
  1. sharp ♯
  2. drop
  3. Tonight(The Cribsカヴァー)
期間生産限定盤収録曲
  1. sharp ♯
  2. カロン
  3. sharp ♯ -tofubeats remix-
  4. sharp ♯ -tv size-
  5. sharp ♯ -instrumental-
ねごと

蒼山幸子(Vo, Key)、沙田瑞紀(G)、藤咲佑(B)、澤村小夜子(Dr)からなる4人組バンド。高校2年生だった2008年1月に結成し、春に開催された「閃光ライオット2008」に応募。予選を順当に通過し、8月に行われた決勝大会に進出。審査員特別賞を受賞する。同年11月に発売された「閃光ライオット2008」コンピレーションアルバムにも、大会で披露した楽曲「ループ」で参加する。その後勉強に専念するため一時ライブ活動を休止するも、2009年9月に本格活動開始。2010年2月より行っている自主企画「お口ポカーンフェス?!」も毎回好評を博している。2010年9月29日、1stミニアルバム「Hello! “Z”」をKi/oon Records(現Ki/oon Music)よりリリース。2011年3月発表の1stシングル「カロン」はau「LISMO!」のCMソングとしてオンエアされ、幅広い層から注目を集めた。同年7月、初のフルアルバム「ex Negoto」を発売し、オリコンウィークリーチャート6位を記録する。夏には全国各地の野外フェスに出演し、多くのロックファンから賞賛を浴びた。2012年4月、アニメ「機動戦士ガンダムAGE」アセム編のオープニングテーマに起用されたニューシングル「sharp ♯」をリリース。