ネクライトーキー“らしさ”詰まった初のEP「踊れ!ランバダ」インタビュー (2/2)

カレーの歌だけどスルメみたいな曲

──「今日はカレーの日」はノスタルジックとはまた違う、クラシックロックっぽさがいいですね。ギターと歌メロが重なる部分あたりにThe Beatlesの雰囲気を感じました。

朝日 古いロック好きの趣味丸出しの曲ですね。

藤田 仮タイトルが「Beat」で、まさにThe Beatlesから取ったものなんですよね(笑)。しかもアレンジの段階での判断基準が「これをやったらビートルズじゃないかも!」みたいな(笑)。

朝日 「ポールはこんなアレンジやんないよ!」なんて妄想をしつつ、作業を進めるという。ギターの音をちょっと乾いた音にしたいとか、そういう音作りにもこだわっていて。「1曲ぐらいこういう曲をやりたいな」とずっと思ってたことが実現できました。

──こういう曲?

朝日 熱量のあるバラードではなく、ゆるい雰囲気のバラードですね。趣味の世界に近いです。

もっさ 「今日はカレーの日」はこのEPで今、一番聴いてるな。好き度合いが徐々にマシマシになってきてるスルメみたいな曲で好きやわ。カレーだけど。

藤田 確かに、作ってる段階でもレコーディングでベーシックなものを録ったあとに、音を重ねて、ボーカル入れて、コーラスを入れて、完成するにつれてどんどん好きになっていった感じ。

中村 この曲はAメロをリピートしちゃうんですよね。バラードだけど、後半にちょっと明るくなるのもいい。少しラフな感じもあるから、寝起きに聴いても、寝る前に聴いても心地いいなって。

藤田(B)

藤田(B)

中村郁香(Key)

中村郁香(Key)

──ちなみにこの曲、途中でテンポ変わってますよね?

朝日 そうそう。ラストのパートでどんどん音が重なっていくんですけど、そのあたりで速くなってます。

藤田 落ちサビのあと、2人のコーラスが加わるところだね。「電気の消えた暗い部屋と」という歌詞のあたりで。

朝日 BPMを4上げてるのかな? 相当雰囲気が変わるはず。

──音がどんどん重なって、テンポまで変わるという。

タケイ デモ音源は完成版の速いパートよりももっと速いテンポだったんですよ。で、僕から「そのテンポじゃ速すぎる」という意見が噴出しまして(笑)。この曲はもっとだらっとした雰囲気で、ゆるくやりたいということでテンポダウンを提案したんです。本当はもっと遅くしたかったんですけど、間を取って今のテンポに。それでも最後だけは元のイメージに近付けたいという朝日さんの意見があって、テンポチェンジを取り入れたという。

──話し合って落としどころを見つけたんですね。

もっさ いろいろ試してみて、ここはテンポ速いほうが歌ってても気持ちいいぞ、みたいな意見もあって。

タケイ 徐々にテンポを上げていくパターンとかも試したんですけど、一気にテンポを変える今の形がハマりました。

朝日 どうせテンポ上げるなら、違和感を覚えるくらいの上げ方がいいのよね。だからガッと上げて。

藤田 そういうアレンジが固まっていって、最終的にもっさの歌が入ったらどういう完成形になるのかなっていうのが、すごく楽しみな1曲でした。

もっさ この曲では普段のもっさっぽくない歌声になったと思ってるの。普段の声がプラスチックだとしたら、木になった感じ。

朝日 温かみ的なところだよね、わかる。普段は“もっさロイド”やけど(笑)。

もっさ ははは。これは木の鳴りみたいなものを自分の声に感じたな。

藤田 歌い方もそうだし、コーラスの重ね方も普段と違うからかもな。コーラスって基本的にダブルで入れるんですよ。でも「電気の消えた」の歌詞のあたりで入るコーラスは、左右それぞれ、シングルコーラスなんです。

朝日 マニアックな話だ!

藤田 そういうアレンジでも、もっさの人間らしさをより押し上げてる気がするな。

もっさ あとね、キーが高すぎないから、語りかけるような感じで歌えたっていうのも大きいな。

──いろんな要素が合わさって、新たな表現につながっているんですね。もしかして、ライブだとテンポが速くなる可能性がある?

藤田 逆だと思います! めっちゃ遅くなる。

もっさ リズムはタケちゃんに握られてるから。

タケイ ライブでは好きなようにやるんで(笑)。

天王寺の街並みと“アラバマの唄”が重なる

──4曲目「あべこべ」の歌詞は最近って感じでもない描写ですね。

朝日 1つの時系列にこだわってないんですよね。「あべこべ」はずっと聴けるような曲になると思ったので、「このときのこと」みたいな具体的な時間軸じゃなくて、自分の中にあるいろんな記憶を1曲にしたという。

朝日(G)

朝日(G)

──ネクライトーキーと言えば「オシャレ大作戦」のようなキャッチーな曲のイメージが強いですけど、「あべこべ」のようなドラマチックな曲もまたネクライトーキーらしいなと思いました。

朝日 そうですね。「あべこべ」はネクライトーキーの楽曲の中で、最も多くの人に聴いてほしいと思う作品の1つです。

藤田 朝日さんと私がやってる別のバンドのこととか、石風呂のこととか、いろいろ見てきたうえで、「すごく朝日さんらしいな」って感じる内容だなって思う。

朝日 でもサウンドに関しては、あまりやってこなかったことにチャレンジしてる。これまではコードとメロディの関係がわりと自由な曲を多く作ってきたんですよ。ハーモナイズしやすいメロディというか、どんなコードを当てても歌いやすいメロディの曲を。でもここ最近、作曲で意識してる部分があって、コードとメロディが噛み合って完成するようなアプローチにしてる。だから「ここの進行ちょっと変えてみるか」みたいなアレンジが若干難しい曲なんですよね。あまりやってこなかった構成だけど、コード進行自体はシンプル、そしてめちゃくちゃメロディアスなものが作れました。ギターなりなんなりでコピーしていただくときっと伝わります(笑)。

──もっささんはネクライトーキーのボーカリストとして朝日さんが作ったメロディと歌詞を歌ってますけど、普段どんなイメージを持って歌唱してるんですか?

もっさ 朝日さんが思っていることまでコピーすることはできないので、完全に自分なりの解釈をしてますね。朝日さんのことを思いながらはたぶん歌われへん(笑)。「あべこべ」は私が勝手に仮タイトルで「アラバマ」と呼んでいたので、夏というか荒野のイメージでした。

朝日 引っ張られすぎ(笑)。でも「アラバマ」って歌詞にも出てくるしな。

藤田 私は天王寺の景色が浮かんだな。開発される前の、商店街があった懐かしい景色が。

──天王寺も歌詞に出てきますからね。ちなみにこの「アラバマの唄」に出てくる「アラバマ」という言葉は、どんなイメージで書いたんですか?

朝日 ニール・ヤングのアルバム「Harvest」に入ってる「アラバマ」ですね。

もっさ 朝日さん、その曲好きやん。私、それを知っていたから「あべこべ」にその印象が付いちゃって(笑)。

朝日 昔からずっと聴いてる。俺はここ10年20年、天王寺周辺で生きてきたから、天王寺の景色と「アラバマ」は自分の中では自然な組み合わせなんです。さらにDr.DOWNERを聴いていたのが20年くらい前、GRASAM ANIMALを聴き出したのが10年くらい前なので、歌詞の中の時系列はバラバラだけど、一応区切られてはいますね。景色は変わりゆく天王寺として。

もっさのMCへの意識に変化

──タケイさんはステージで一番もっささんの背中を見てきた男だと思うんですが、印象的なシーンとか、変化を感じたところってありますか?

タケイ 昨年12月の渋谷CLUB QUATTROのことはすごく覚えてます(参照:ネクライトーキーがHump Backと迎えたツアー千秋楽、もっさ号泣「誰にも言わんといて!」)。

もっさ でも背中では泣いてなかったでしょ?

タケイ 背中も涙でビショビショやったよ。

もっさ そんなことあるかい!

タケイ まあ変化みたいな部分で言うと、すんごい柔軟になりましたよね。最初の頃は予想外のことが起きたら「どうしよう」みたいな雰囲気でしたけど、最近は演奏もそうだし、ライブ中のお客さんとのコミュニケーションにしても幅が広がったなって印象。

もっさ まあ慣れたよ。

カズマ・タケイ(Dr)

カズマ・タケイ(Dr)

もっさ(Vo, G)

もっさ(Vo, G)

──4月のリクエストライブでは、もっささんのトーク回しがめちゃくちゃスムーズでびっくりしました(参照:ネクライトーキー泣いても笑ってもアンケート順に演奏ツアー完走!“アガる曲だらけ”にファン熱狂)。

朝日 MCも大きく変わりましたよね。すんごい饒舌になった。初期を知ってる人からするとびっくりするみたいですね。

──お客さんとの会話を楽しんでいる感じもありましたし。

朝日 お客さん全員を友達と思えるようになったのかも?

もっさ 確かに。ようやくMCでも楽しませることの大切さがわかったというか。

藤田 途中で投げっぱなしになるMCはどんどん少なくなって、決まったところまでしゃべり切るようになったな。

もっさ そうね。前までは途中で朝日さんにぶん投げることが多かったから。

藤田 前は「助けて!」って顔してたのにね(笑)。

朝日 昔から対バンしてるバンドのメンバーがね、「素晴らしいライブをするようになって、観ていて泣きそうになるよ」って言ってくれたんですよ。成長を感じてもらえるのはありがたいですね。

もっさ しゃべるのは相変わらず苦手だけど、意欲的にはなれてますね。もともとが「別にがんばらなくていい」という発想だったから(笑)。最近はMCもライブの一部としてちゃんと捉えられるようになってきたから、自分のわがままな部分と、お客さんを楽しませたいって気持ちがせめぎ合ってる中で、今はその真ん中にいますね。

ネクライトーキー

ネクライトーキー

──自己分析もできていて冷静なんですね。

もっさ 基本的には自分の意識は(右斜め前あたりを指さして)そこらへんにいるんですよね。自分を俯瞰的に見てるつもりです。

朝日 MCに意欲的なら、チューニング中に「もっさー!」とか声かけられて、「やかましいぞ!」って返すみたいな芸も研究できるな。

もっさ 「もっさやない! もっさ“さん”だろうがー!」って急に怒るとか面白そうだな。言ってみたい(笑)。

──秋のツアーに関してはSNSでファンが続々と当落報告をしていましたね。今回はツアーファイナルがZepp Shinjuku(TOKYO)で、初めてのZeppワンマンになります。

朝日 Zepp Shinjukuはまだ行ったことないんですけど、楽しみですね。前にZepp Tokyoでライブを予定してましたけど、コロナ禍で中止になったので。

──リクエストライブは人気曲のオンパレードで、お客さんの反応もよかったと思うので、今回のセットリストはどんな曲が並ぶのか楽しみです。

朝日 EPの新曲が4曲だけなので、自由度は高いですよね。いろいろやれるし、自分たちも楽しみです。

藤田 コロナ禍中に出した曲で、お客さんも声出ししたら楽しめるなと思ってた曲があるので、そういうのもセットリストに入れたいですね。

朝日 ツアーファイナルも楽しみですが、岡山、石川、岩手とかいろんなところを細かく回るので、ちょっと変化球も出せるかもしれないです。「ランバダ・ワンダラン」はもちろん、特に「今日はカレーの日」をライブで早くやりたいな。

タケイ テンポがどうなるのかも楽しみにしてほしいです(笑)。

朝日 いいツアーになりそうです。

ネクライトーキー

ネクライトーキー

ツアー情報

ネクライトーキー「踊れ!ランバダ」リリースツアー「ゴーゴートーキーズ! 2023秋」

  • 2023年9月16日(土)千葉県 千葉LOOK
  • 2023年9月21日(木)静岡県 Shizuoka UMBER
  • 2023年9月23日(土・祝)岡山県 YEBISU YA PRO
  • 2023年9月24日(日)香川県 DiME
  • 2023年10月1日(日)北海道 cube garden
  • 2023年10月7日(土)京都府 MOJO
  • 2023年10月14日(土)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
  • 2023年10月15日(日)石川県 Kanazawa AZ
  • 2023年10月28日(土)岩手県 the five morioka
  • 2023年10月29日(日)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
  • 2023年11月3日(金・祝)福岡県 DRUM Be-1
  • 2023年11月4日(土)広島県 広島セカンド・クラッチ
  • 2023年11月18日(土)愛知県 THE BOTTOM LINE
  • 2023年11月19日(日)大阪府 BIGCAT
  • 2023年11月26日(日)東京都 Zepp Shinjuku(TOKYO)

プロフィール

ネクライトーキー

2017年に朝日(G)が中心となり、もっさ(Vo, G)、カズマ・タケイ(Dr)、藤田(B)により結成されたバンド。2019年3月に初回ライブよりすべてのライブサポートを行っていた中村郁香(Key)が正式加入し、5人編成となる。邦楽、洋楽、ゲームミュージックなどを取り込んだ遊び心のあるポップなメロディや、コミカル、ネガティブ、毒気、切なさを内包した歌詞、もっさのあどけなさの残る歌声が特徴の楽曲で人気を集める。全国ツアーや各地の音楽フェスなどで精力的なライブ活動を行っている。2022年6月にセルフカバーアルバム「MEMORIES2」を発表。2023年4月にファン投票の上位曲のみを演奏するリクエストツアー「ゴーゴートーキーズ!番外編 ~泣いても笑ってもアンケート順に演奏ツアー~」を東名阪で行い、初期ナンバー「オシャレ大作戦」が1位に選ばれた。8月に1st EP「踊れ!ランバダ」をリリース。