ネクライトーキー“らしさ”詰まった初のEP「踊れ!ランバダ」インタビュー

ネクライトーキーが8月16日に1st EP「踊れ!ランバダ」をリリースした。

ネクライトーキーはボカロP・石風呂名義でも活動する朝日(G)を中心に、もっさ(Vo, G)、藤田(B)、中村郁香(Key)、カズマ・タケイ(Dr)の5人で活動するロックバンド。「踊れ!ランバダ」は2022年6月発売のミニアルバム「MEMORIES2」以来、約1年2カ月ぶりのリリース作品で、4月の東名阪ツアーでも披露されていた「ランバダ・ワンダラン」や、「優しくなれたなら」「今日はカレーの日」「あべこべ」全4曲が収録されている。

音楽ナタリーでは新作の発売を記念して、メンバー5人にインタビュー。ポップな側面のみならず、情景の浮かぶようなノスタルジックさ、エモーショナルさにおいても“ネクライトーキーらしさ”が詰まったEPのこだわりポイントを聞いた。

取材・文 / 田中和宏撮影 / かわどう

大塚駅周辺で見た“昔の日常”

──ネクライトーキー初のEP「踊れ!ランバダ」の4曲は、1曲目「ランバダ・ワンダラン」を除き、日常的な光景が浮かぶ内容だと感じました。どの曲も新たに書き下ろした曲ですか?

朝日(G) 作った時期はバラバラですが、どれも新曲です。作り上げたのはどの曲も2023年に入ってからという。

朝日(G)

朝日(G)

──コロナ禍以前の日常に戻りつつあったタイミングですね。

朝日 コロナ禍云々については、完全に元通りとは言えないまでも、昔の雰囲気が戻ってきましたよね。2曲目の「優しくなれたなら」の歌詞に「輝いた胃液の海が大塚の駅の前で」とありますけど、友達に会いに大塚駅のあたりに行ったら、店ではいろんな人が盛り上がってて、楽しそうに酒を飲み、酔っ払ってゲロ吐いてみたいな感じで。「ああ、コロナ禍前はこんな雰囲気だったな」なんて思いながら、駅まで歩きながら思ったことが曲になってるんです。

──日常の何気ない光景が曲になっている印象ですけど、ごく最近の出来事なんですね。少年時代の回想のような懐かしさも感じました。

藤田(B, Cho) 「突然のケーキを食べたなら 油は二度と食えなかった ガタがきてらぁ」のあたりに年齢を感じますよ(笑)。

中村郁香(Key) 私はこの歌詞に昭和チックな部分を感じたんですよね。それと朝日さんの曲は怒りをぶつける感じの歌詞が多いけど、どこか夢を持ってる感じもあって。

朝日 歌詞に関しては思うままに書いてるんだけど、考え方が昔より大人になっちゃってるのもわかる。パンチラインは欲しいと思いつつ、朴訥とした歌詞を書いたなって印象もあります。

借り物のエフェクターでレコーディング

──自然体だからこそ、すっとラインが耳に入ってくるという。もっささんは今作の朝日さんの歌詞をどう思いましたか?

もっさ(Vo, G) 「ランバダ・ワンダラン」は特殊なので置いといて、それ以外はすごく穏やかに感じるかも。穏やか、平和っていいですよね。ゲボとか出てくるけど、ある意味でそういう描写も平和な日常じゃんっていう。「ランバダ・ワンダラン」はもうよくわかんない(笑)。

もっさ(Vo, G)

もっさ(Vo, G)

朝日 「ランバダ・ワンダラン」はメロディに対して言葉がきれいにハマることを意識したので、できるだけデタラメな歌詞にしたんですよ。音のハマり方を優先して歌詞を書こうと思っても、普段なかなかできなくて。でもこの曲はキャラが強すぎるからこそ、音にパコパコと歌詞をハメていったんですよね。最終的には郷愁感がある感じを出す形にまとめました。

──「シャバダバダ」とスキャットが入っているあたりも、凝ったアレンジですよね。

朝日 そのスキャットは不思議とハマったなと思ったんですけど、藤田の頭の中では最初から「シャバダバダ」が鳴ってたみたいです(笑)。

藤田 そういうパートを入れたいと思ってたんですよね。「新世紀エヴァンゲリオン」の「残酷な天使のテーゼ」みたいなコーラスパートを。

朝日 間奏が長いときは、声が入ってたほうがあんまり退屈しないだろうなって思ったんです。1つの間奏ではなくて、コーラスパートのあとに何かのソロパートが来るみたいなブロック分けができてるほうが聴いてるほうもいいだろうなって。「ランバダ・ワンダラン」はひさびさに5分超えの曲なので、いいバランスの間奏になりました。

──コーラスパートのあとのギターソロがド派手なところもいいですよね。

朝日 あれはもう最高ですね(笑)。俺の中ではレッチリ(Red Hot Chili Peppers)のジョン・フルシアンテで。「Can't Stop」みたいなギターの音をイメージしてます。

──ギターの歪みも確かに近い感じありますよね。

朝日 実はジョンがエフェクトボードに組み込んでいると噂のMXRのファズを使ったんです。レッチリの東京ドーム公演を観たタイミングで、KANA-BOONの(谷口)鮪が買った翌日に借りまして(笑)。さっそくレコーディングで使って、「超いい音だったよ」って報告しました。

中村 自分で買ってないんだ(笑)。

中村郁香(Key)

中村郁香(Key)

もっさ 「ランバダ・ワンダラン」は、弾いていて思うのが“サーカス”ですね。わちゃわちゃしてて。でもまだライブだとお客さんがポカンとしてる(笑)。1回じゃ理解できないのもわかるんですよ。展開がコロコロ変わるし、BメロもCメロもサビみたいだし、盛り上がるポイントが多めだから。聴く人によって印象が違うから、ライブですぐに一体感を生むのは難しいのかもしれない。

朝日 ライブでもぜひ楽しんでほしいんですが、楽器を弾く人にはぜひコピーしてほしいですね。

進化したサウンド、ドラムに大きな変化

もっさ 私の中では「ランバダ・ワンダラン」と「優しくなれたなら」の歌詞がまだハテナなの。朝日さんから「デカマシュマロ」なんてフレーズが出てくるとは。

朝日 俺の中で、でっかいマシュマロは優しさのイメージ。

もっさ 「かぼちゃの揚げ物になれたら」も?

朝日 これも優しさよ。“おいしい気持ち”になるからな。「突然のケーキ」は誕生日サプライズのイメージでさ。

──この曲はドラムのフレーズが気持ちよくて。細かいですけど、フラムのフレーズが耳に残る感じですごくいいなと思いました。

カズマ・タケイ(Dr) 僕も今回のEPだとこの曲のドラム好きなんですよ。フラムはけっこう多用してますね。自分が好きなのもあるし、朝日さんも好きだから。

カズマ・タケイ(Dr)

カズマ・タケイ(Dr)

──朝日さんもドラム好きだと以前おっしゃってましたけど、デモの段階で打ち込んでるドラムはタケイさんのイメージなんですよね?

朝日 そうですね。フラムが入ってるのも打ち込み段階からなので、俺の手癖もあるんですよね。スネアなんて1発鳴らすだけでも気持ちいいのに、同時に鳴らしたらもっと気持ちいいですもん(笑)。

タケイ 「優しくなれたなら」は、EPの4曲の中で一番疾走感がありますよね。叩いていて「イェイイェイ!」なハイテンションでいける。ほかの曲は少し冷静さが必要で、4曲とも全部表情が違う感じ。

もっさ 今回からドラムテックの方が入ったんだよね。

タケイ そう。ドラムセットは自分の持ってないビンテージ機材とかを使えたし、チューニングもしていただいたので、ニコニコでした(笑)。

朝日 ドラムの音をよく録れるのって、バンドにとってかなり大きい変化ですね。個人ユースの宅録がどんどん進化しているこの時代において、ドラムの録れ音はプロとしてがんばれるところですから。ライン録音でもスタジオの鳴りをシミュレーションできますけど、ドラムに関してはやっぱり生がいいなって思うし、音源を左右するポイントだと思います。

藤田 マニアックなところだと、「ランバダ・ワンダラン」と「あべこべ」、「優しくなれたなら」と「今日はカレーの日」でそれぞれ違うスタジオを使ったんです。これまでよく使っていたところと違う、池尻と青葉台のスタジオ。

藤田(B)

藤田(B)

朝日 どちらもこれまで数々の名盤を生み出してきたスタジオで。この情報を頭に入れて聴いたところで違いが理解できるかはわかりませんが(笑)、そういう部分でもこれまでと違うEPになってますね。

もっさ 「ランバダ・ワンダラン」以外はまだライブで演奏してないけど、「優しくなれたなら」はポップでかわいいから、お客さんがポカンとはしないだろうし、むしろテンションが上がる気がします。