そういう曲なんだよ!
──前作「MEMORIES」は石風呂楽曲のセルフカバーアルバムでしたが、「ZOO!!」はネクライトーキーの完全オリジナル曲で構成されています。
朝日 以前は“怒り”をテーマに曲を書くことが多かったんですが、今回は“日々の暮らしにある寂しさ”といったテーマの曲が多くなったなあという印象です。
藤田 確かに日常を歌った曲がすごく多い。これまでも歌ってきたテーマではあるんですが。「涙を拭いて」はもともとデモシングルの曲ですけど、このアルバムに入れるとテーマ的にもハマるなと思いました。
朝日 「涙を拭いて」もね、あの頃に作っていた中でも日常感のある曲やったもんね。
中村 曲調は全体的に明るいんですけど、歌詞は日々で起きるちょっと悲しいことを扱った内容もあって。それをもっさが明るく歌うから、絶妙なバランスのアルバムになっていると思います。
藤田 「夢みるドブネズミ」「ぽんぽこ節」は、物語のようで何かキャラクターが出てきそうな雰囲気。朝日さんの作るそういう曲がすごく好きです。
もっさ アルバム全体を私なりに表現すると、めちゃくちゃ楽しくて無秩序(笑)。歌詞はけっこう切なくて、悲しめの内容が多いと思いました。例えば「ぽんぽこ節」は曲調もタイトルもすごく愉快な感じですけど、この歌詞めっちゃ切ないなってしみじみ。生活の中に感じる切なさみたいなものが詰まってる不思議なアルバムだ、って今思いました(笑)。
──主に作詞作曲を手がけているのは朝日さんですが、日常で感じたことを曲に反映させていくことが多いんでしょうか?
朝日 誰しも生きている間に何かをしなきゃいけないけど、何をすればいいのかわからないタイミングがあると思うんです。「みんなそういうとき何をしてるんだろうなあ」なんて思いながら曲を作ることもあるし、ちゃんと前に進めている人を見て「すげえなあ」と思いながら作るときもある。前向きな感情で曲を作ることってないんですよね。作ろうって思った試しがない。
──今まで1度もない?
朝日 はい。年齢を重ねてきたこともあってか、だんだん生活に根ざした音楽になってきていて。そういう点ではちゃんと変化していってるんだなと感じます。
──「夢みるドブネズミ」は「オシャレ大作戦」を彷彿とさせる勢いがありつつも、ちょっとセンチメンタルな雰囲気が漂っています。
朝日 実は「オシャレ大作戦」に対して作った曲みたいなところもあるんですよ。「オシャレ大作戦」は個人的には不思議に感じるくらい高く評価されていて。その一方ですごく派手な曲だからこそ、あの曲を気に入らない人も一定数いるわけなんですよ、「言いたい気持ちもわかる」なんて思いつつも、もうあれこれ言われても仕方ないじゃないですか、作っちゃったものは!
藤田 いきなりブチ切れか(笑)。
朝日 「そういう曲なんだよ!」ってこと。そういう「オシャレ大作戦」の反響に対する思いも「夢みるドブネズミ」には込めているんです。これでやっていくんだからごちゃごちゃ言うな、っていう意思表示でもある。
もっさ 「俺が決めてやってることだ」ってことだよね。
朝日 そう。ちなみにもっさは「ドブネズミ」を俺のことだと思ってたらしいです。そんなに自信満々かな?
カズマ 朝日の心の内なのかなって俺も思ってた。
朝日 そうかー……そうなんや。
もっさ ショック受けてる?
朝日 いやいや。けっこう俺とみんなで全然解釈が違うのが面白いなと思った。でも俺の解釈はね、教えてあげない。
もっさ ええー!(笑)
藤田 メンバーに胸の内を共有してくれないんですよ。
朝日 人それぞれの解釈があって面白いと思うからだよ。
なんかわかりかねる
──「放課後の記憶」は滑らかなメロディに「なんかわかりかねる」という歌詞が乗る言葉選びと音のはめ方が面白いと思いました。
もっさ 語呂がよくて、なんか言いたくなります。
カズマ この曲はメロとサビの歌詞がデモの段階で決まってたよね。
朝日 その「なんかわかりかねる」の歌詞だけ決まってて。むしろ歌詞の中で「なんかわかりかねる」だけ若干浮いてるんですよね。
中村 朝日さんがデモで歌ってたときの「わかりかねる」と、もっさが歌ったときの「わかりかねる」でニュアンスが違って。朝日さんはあえて「わかりかねる」と言っていて、もっさは本当に理解できてない素直な「わかりかねる」みたいな。
朝日 バカにしてるでしょ(笑)。
もっさ バカにされたね!
中村 いやいや(笑)。でももっさの正直さが歌に表れていたよ。
朝日 「放課後の記憶」の歌詞、けっこう気に入ってるんですよ。「ほんとわかりかねる 誰もおらず窓を開けたら夕暮れの中、信号が何回も変わる音を聞いてた」というこの1節、まるで信号機の“カッコーカッコー”の音が聴こえてきそうな情景を丁寧に書けたなって。
演奏の難易度は爆上がり
──ネクライトーキーはどのように楽曲を組み立てていくんですか?
朝日 「ONE!」のときは俺がしっかり作りこんでました。あと当時はむーさんがサポートだったし、弾いてもらった曲自体も2曲くらいと少なかったんです。「オシャレ大作戦」のオーケストラヒットの音と一部ピアノという感じで。「MEMORIES」は過去に作った曲を聴いて、メンバーなりに解釈してもらってレコーディングしました。「ZOO!!」は全曲オリジナルなので、あえてむーさんには鍵盤は入れてない状態でデモを渡した曲もけっこうあります。「ONE!」の頃に比べるとメンバーにいろいろやってもらう部分がすごく増えました。今回のデモだとベースなんて基本ルートしか入れてないし。
藤田 「ぽんぽこ節」「北上のススメ」のイントロのベースは「こう弾いてほしい」っていう希望があったのでその通りにやって、それ以外のところはアレンジを変えて。ほかはルートだけの曲が多かったので、自由にやりました。
──タケイさんのドラムに関してはどうですか?
カズマ 僕は「ONE!」のときから、もらったデモはあんまり気にしないでやってます(笑)。自由にやりつつ、「こうやってほしい」という部分はそれを尊重して。
もっさ 私の場合、今回はデモ段階でギターの入ってない曲がちょくちょくあったので、基本はコードに沿って邪魔しないように(笑)。と思いつつ「北上のススメ」あたりはただただ弾きたいように弾きました。
──「北上のススメ」はギターのアンサンブルだけを挙げても凝ったアレンジですよね。
朝日 あれ、難しいんですよ(笑)。
もっさ 「北上のススメ」はこのアルバムで一番演奏するのキツい。
藤田 ギターだけじゃないですよ。全員難しくてツラい!
もっさ でも私はわりと自由に弾けたかな。
藤田 自由に弾いたら歌が大変だったんだよね。
もっさ そう! 歌うことを考えずに弾いたので、本番はヤバいかも……。
──「ONE!」よりも全体的な演奏の難易度が上がってますよね。
朝日・藤田 爆上がりです(笑)。
中村 まだライブで演奏してないからなんですけど、スタジオでも弾くのに精一杯という感じが出ているので、早く慣らさないと。
藤田 自分たちのものにしないと(笑)。
──自分たちの曲なのに……でもそういった挑戦はバンドとしての可能性が広がりそうですね。
朝日 練習していてできないことができるようになる瞬間がやっぱり気持ちいいです。
中村 朝日さんにそういう気質があるのか、だんだん難しい曲を作ってきているなっていうのはヒシヒシと伝わってきます。
朝日 藤田に難しいベースラインを与えたら、めっちゃ練習してうまくなるんじゃないかなと思って。
藤田 そうだったのか(笑)。
朝日 藤田のスキルが手グセで止まっているなと思った瞬間があったから、めっちゃ難しいフレーズを弾かせようと思って「北上のススメ」と「ぽんぽこ節」はベースフレーズを一部考えて。で、ベースが難しくなったらそれに応じてほかの楽器も大変なことになった(笑)。
次のページ »
ぽんぽこ節のなんたるかを問う