音楽ナタリー Power Push - NECOKICKS
カッコつかない4人が届ける、ありのままの音楽
NECOKICKSがニューアルバム「パパはNewギニア」を10月5日にリリースする。
本作はメンバーの人懐っこい人柄を感じさせるロックチューン全11曲を収録した2枚目のフルアルバム。2011年の結成からバンドとして走り方を模索してきたという彼らなりのアイデンティティが弾けるその内容は、ありのままにまっすぐで、多くの人に響きうるポピュラリティを秘めている。
音楽ナタリーでは今回、メンバー全員へのインタビューを実施。結成からの歩みを振り返ってもらいながら、そこで見つけた自分たちなりの音楽性とライブスタイル、そして現在のネコキを赤裸々に詰め込んだ新作について話を聞いた。
取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 後藤壮太郎
「等身大」が強み
──TAKUMIさんには一度座談会で音楽ナタリーにご登場いただいたことがありますが(参照:POT「MISH MASH」&EVERLONG「シグナルE.P」発売記念 織田(POT)×Mitsuhiro(EVERLONG)×TAKUMI(NECOKICKS)鼎談)、NECOKICKS単独では音楽ナタリー初登場となるので、NECOKICKSがどんなバンドなのかに迫っていければと思います。資料には「田舎臭くてどこか懐かしい、今っぽいけど染まってない、カッコつけてもカッコつかない、可愛い風のブサイク四人組」という紹介文が書いてあって。
TAKUMI(Vo, G) あははは(笑)。いや、でもホントにそんな感じのバンドなんですよ。地元の長野から、東京に出てきたときは「キラキラした東京に染まってカッコよくなってやろう!」と思ってたんですけど、すぐに「俺たちってカッコよくないぞ」って気付いちゃって。結成当初は音楽的にも英語詞の曲をやって、けっこうカッコいい雰囲気を出してたんですけどね。このままじゃほかのバンドに勝てないって気付いたんで、ありのままの自分たちを受け入れて、等身大の音楽をやればいいんじゃないかなって思うようになったんです。「ただの一般ピーポーがどれだけ挑戦できるか」みたいなことを大事に勝負していこうって。
KO-Ki(Dr) 曲ができるまでにはいろんな工程がありますけど、最終的に「これがNECOKICKSだな」って確信に変わるのは、TAKUMIが作る歌メロや歌詞によるところが大きいんですよ。なので、そこが僕ららしさになってる気はしますね。
YU-TA(B, Cho) うん、そこが一番だよね。
TAKUMI 僕が歌詞を書いて歌えば意外と全部がNECOKICKSっぽくなるんですよ。だから制限なく自由にいろんなことが試せる感じにはなってますね。まあそれに気付いたのはけっこう最近なんですけど。
KO-Ki そうだね。「弾丸ライナー」(今年4月に1000枚限定でリリースされたシングル)を出したあと、今回のアルバムを作る過程で少しずつ気付いていった感じ。
──結成は2011年ですから、そこに気付くまでの約5年間はかなり模索していた?
HARA-KUN(G, Cho) 模索はしてましたね。「今はこういう音楽が流行ってるけど、自分たちが鳴らすのはどんな曲がいいんだろう」って。
TAKUMI いろいろ考えたよね。ただ結局はあんまり考えなくてよかったっていう。やっぱりありのままでいいんじゃんって気付けたから。
KO-Ki ここに来てそれが自分たちの強みだってちゃんとわかった気がしますね。
KO-Kiの失踪
──音楽性が固まったのが最近だとは言え、ここ数年でNECOKICKSの存在は全国的に認知され始め、いい状況になっている印象もあります。そのあたりはどう感じています?
KO-Ki ここ2年ぐらい、確かに手応えは感じてます。事務所に所属させてもらって、僕らの音楽がいろんなところで鳴ってる実感はすごくあるので。
TAKUMI その前の3年間が最悪でしたからね。ライブよりも打ち上げをがんばって、とにかくお酒を飲みまくる毎日。「バンドはそうあるべき」って地元の先輩に教わってきていたので。
──そういう状況から抜け出すきっかけは何かあったんですか?
TAKUMI 結成から3年目くらいのときにKO-Kiが失踪したんですよ。打ち上げざんまいの日々で、心身共にダメージを受けたらしく(笑)。
KO-Ki 当時はバンドとしての芯がしっかりしてなかったんで、先がまったく見えなかったんですよ。で、考えが完全にネガティブになって1カ月くらい失踪しました。
YU-TA まったくの音信不通でしたからね。KO-Kiの実家に電話しても「そんな子いません」みたいな(笑)。
KO-Ki 実際は実家にいたんですけど(笑)。
TAKUMI そのことが結果的に自分たちを見つめ直すいい機会になったんですよ。「なんのために東京に出てきてバンドやってるんだろう」ってすごく考えて。そういうでっかい事件がなかったらいろんなことに気付けなかったと思う。そのあとKO-Kiが無事に戻ってきてくれたときにはバンドの結束もキュッと強くなったし、気持ちがすごく変わったんですよね。
一難去ってまた一難
──それからは打ち上げではなく、バンド活動に本腰を入れるようになった?
TAKUMI そうですね。それまで作ってこなかったミュージックビデオを2本一気に作ったりとか、自分たちでちゃんとプロモーションするようになって。そうしたらそのMVがきっかけでいろんな人に以前よりもネコキのことを気付いてもらえるようにもなっていったんです。自分たちの考えをちょっとシフトするだけでバンドの状況ってこんなに変わるんだなってことがわかって。それが結成から3年目の終わりくらいですね。で、メンバー4人が一致団結してがんばり始めたときに、前のギタリスト・TEPPEIが辞めることになるんですけど……(笑)。
──一難去ってまた一難といった感じですね。
TAKUMI TEPPEIは大学の研究員で、そっちの道ですごい成果を出してたんですよ。一方のバンドでは成果が出ていない。その2つで悩んだ結果、選ぶべき道を選んでいったんでしょうね。「お前が辞めるならこのビルから飛び降りるぞ!」って言ったんですけど、「いや、辞めるわ」って(笑)。
KO-Ki そのときは僕らもまだ自分たちのバンドの魅力に気付けてなかったから、彼のことを引き止めきれなかったんだろうなって今になっては思いますね。どこかでまだカッコつけてて、素直になりきれてなかったところもあっただろうし。
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収録曲
- ワンダーワンダー
- 弾丸ライナー
- ウタカタ
- カウンターパンチ
- かぞくのうた
- イノセントエイジ
- 100m 走、全力疾走、ゴールで待ってる、君に首ったけ
- どうでもいいや
- それでも夜は明ける
- zinnia
- 遠い空の向こう
NECOKICKS(ネコキックス)
長野県出身のTAKUMI(Vo, G)、KO-Ki(Dr)、YU-TA(B, Cho)、HARA-KUN(G, Cho)からなるロックバンド。2011年5月に東京で結成された。2014年8月に発売されたグッドモーニングアメリカ企画のコンピレーションアルバム「あっ、良い音楽ここにあります。その四」に「1秒先の未来」が収録され、知名度を一気に上げる。2015年4月に1stフルアルバム「ネコキ名人スーパーベスト」を、同年9月にミニアルバム「世界セイフク.EP」をリリースした。2016年4月に1000枚限定シングル「弾丸ライナー」の発売を経て、2016年10月に2ndフルアルバム「パパはNewギニア」を発表。同月には地元・長野を盛り上げるべく自主企画のサーキットイベント「信州本気ココ一番」を開催する。