音楽ナタリー Power Push - 夏の魔物×曽我部恵一×Sundayカミデ

曽我部とSundayが明かす 成田大致の制作スタイル

アレンジリテイク50回の成果

──このタイミングで曽我部さんに曲を依頼したのはどういう意図だったんですか?

成田 まず今回のシングルは「東京」っていうテーマがあったんです。サニーデイの「東京」とか、くるりの「東京」とか、銀杏BOYZの「東京」とか、いろんな名曲があるじゃないですか。自分も東京に出てきて5年くらい経って、その5年の間に本当にいろんな出会いや別れがあって……。でもそれを通して“東京”でがんばっていきたいと最近ようやく決意できたんですよね。それで、今の曽我部さんがそういう曲を書いたらどうなるんだろうっていう、まあファンの妄想を実現させた感じですよね(笑)。

曽我部 そういう気持ちがね、やっぱりまっすぐ伝わってくるんだよね。俺はあんまり人に曲を書いたりしないけど「でも成田くんにだったら作りたいな」と思う。それはすごいことだし、やっぱり成田くんの力だよね。

──でもジェットコースターみたいな展開でカラフルな曲というのは、曽我部さんの得意分野とはちょっと違うんじゃないですか?

成田 まあアレンジは自分たちっぽいものになりましたけど、でもやっぱりメロディに関しては曽我部さんらしさを求めてたんで。

曽我部 この曲はIOSYSの人がアレンジしてて、俺のパンクっぽいまっすぐなロックとIOSYSの世界が合体してるんだよね。これは自分にとってはすごく新しい発明みたいな感じで、俺が自分でやるときも、こういうふうにポップにカラフルに味付けしてたら売れてたかもって思うもん(笑)。さすがだなあって。

成田 今回アレンジ担当のARMさんには50回ぐらいリテイクしてもらってるんで。

曽我部 えっ、アレンジを?

成田 はい。50回はちょっと言いすぎですけど、でもそれぐらい。

曽我部 いやあ、普通さ、そこまでリテイクを求められたらもう断るよね。「もう無理!」みたいになるけど、成田くんはそれをさせない力を持ってる。「OK、やってやる!」っていうふうに、たぶんみんななってるんだと思うな。

気まずくなったりしないんですか

──楽曲のアレンジはどんなふうに詰めていくんですか?

成田 頭の中にある構成と音色を伝えて、ここでこの音が来て、トラック数はこれぐらいで、みたいな。

Sunday トラック数まで? すごいね(笑)。

大内 ARMさんは札幌に住んでる方なんで、作業は全部メールとデータでのやり取りになるんです。僕が最初聴いたときは、ファイル名が「Tokyo_ARM_08」で、「08ってなんだろう?」と思ったんですけど、それがリテイクの回数だった。

曽我部 なるほどね(笑)。

大内 で、その3日後にもらったファイルはもう「Tokyo_ARM_16」になってるんですよ。

Sunday ええ? それ若干気まずくなったりしないんですか?

成田 いや、すごい申し訳ない気持ちになります(笑)。もともと僕は日本語が不自由なんで、うまく伝わらなかったりもして。

Sunday あはは(笑)。

曽我部 確かに俺のときも申し訳なさそうに言ってきてた(笑)。完パケギリギリのタイミングで「ここにこういうギターを入れてほしい」っていうリクエストが再度来て。

曽我部恵一

成田 そうですね。納品当日とか前日とか。

曽我部 そこまでギリギリだと、よっぽど重要な部分ならともかく、普通に仕事でやってる人は言ってこないんだよ。そういえば最初の発注のときに、もうエレキギターのフレーズが決まってるパートもあったもんね。

成田 そうですね。

曽我部 「ここはまったくこのまま弾いてください」みたいな。

Sunday へー!

曽我部 だから弾きましたよ。あんまりコピーとかやったことないけど。

成田 すみませんでした(笑)。

この子の気持ちを書いてほしい

──「東京妄想フォーエバーヤング」の歌詞を、作家の山内マリコさんに書いてもらおうと思ったのはなぜですか?

成田 山内マリコ先生の「ここは退屈迎えに来て」って作品を読んでて、地方から東京に出てきた登場人物の気持ちがすごく自分とマッチしたんですよね。で、それを歌いたいって言ったんです。この本のこの章のこの子の気持ちをこういう感じで書いてほしいって。

──山内さんは作詞の仕事もしてるんでしたっけ?

成田 いや、歌詞を書くのは初めてだと言ってました(笑)。

──そういえば成田さんは以前、プロレスラーであるアントン(アントーニオ本多)さんに歌詞を発注したこともありましたよね。

アントーニオ本多 数年前に書きました。貴重な経験でした。

成田 そのときもアントンさんの試合を観て感動したからっていう理由で頼んだんです。アントンさんはやっぱロックでポエジーな人で、試合もそういう感じで。それで歌詞を頼んで、今もライブでやってる「SUNSET HEART ATTACK」っていう曲ができたっていう。

──歌詞を書いたことがない人に発注してしまうわけですよね。

成田 自分が感動したポイントを伝えて「こういうものを書いてください」って言ってるだけですけどね。

夏の魔物 ニューシングル「東京妄想フォーエバーヤング / ダーリン no cry!!!」 / 2016年1月20日発売 / 1000円 / ポニーキャニオン
イラストジャケット Ver. [CD] PCCA-04334
夏の魔物 Ver. [CD] PCCA-04335
ブラックDPG Ver. [CD] PCCA-04336
収録曲
  1. 東京妄想フォーエバーヤング
    [作詞:山内マリコ / 作曲・ギター演奏:曽我部恵一 / RAP作詞・歌唱:BIKKE(TOKYO No.1 SOUL SET) / 編曲:ARM(IOSYS)]
  2. ダーリン no cry!!!
    [作詞・作曲:Sundayカミデ / 編曲・ピアノ:ハジメタル]
  3. 邪88
    [作詞:ノマアキコ / 作曲:下村陽子 / 編曲:増本直樹]
  4. 東京妄想フォーエバーヤング(Inst.)
  5. ダーリン no cry!!!(Inst.)
  6. 邪88(Inst.)
「夏の魔物現象2016」ROAD TO 10th ANNIVERSARYシリーズ
♯1 INKT VS 夏の魔物 ~ギリギリで五日遅れのバレンタインツーマン~

2016年2月19日(金)東京都 新宿ACB HALL
OPEN 18:30 / START 19:15

<出演者>
INKT / 夏の魔物 / ブラックDPG

夏の魔物(ナツノマモノ)
夏の魔物

2006年から青森県で毎年開催されているライブイベント「AOMORI ROCK FESTIVAL -夏の魔物-」の主催者である成田大致を中心として2015年3月に発足したユニット。成田のほか、塚本舞、大内ライダー、アントーニオ本多、ケンドー・チャンの計5人からなる。同年8月、シングル「恋愛至上主義サマーエブリデイ / どきめきライブ・ラリ」をポニーキャニオンより発表し、メジャーデビュー。2016年1月にはニューシングル「東京妄想フォーエバーヤング / ダーリン no cry!!!」をリリースした。対抗するヒールユニット・ブラックDPGとライブ中にプロレスを繰り広げるなど、破天荒なパフォーマンスで人気を博している。

曽我部恵一(ソカベケイイチ)
曽我部恵一

1971年生まれ、香川県出身のシンガーソングライター。1990年代からサニーデイ・サービスの中心人物として活躍し、バンド解散後の2001年からソロアーティストとしての活動を開始する。精力的なライブ活動と作品リリースを続け、客演やプロデュースワークなども多数。現在はソロのほか、再結成したサニーデイ・サービスなどで活動を展開し、フォーキーでポップなサウンドとパワフルなロックナンバーが多くの音楽ファンから愛され続けている。2004年からは自主レーベル「ROSE RECORDS」を設立し、自身の作品を含むさまざまなアイテムをリリースしている。3児の父。

Sundayカミデ(サンデイカミデ)
Sundayカミデ

2010年に結成した6人組バンド・ワンダフルボーイズのボーカル兼リーダー。2013年には奇妙礼太郎(Vo, G)とテシマコージ(Dr)とともに天才バンドを結成しており、同バンドでは作曲とキーボード、コーラスを担当している。2013年9月にはソロ名義でのアルバム「MY NAME IS !!!」を発表。同アルバムには自身が執筆した小説が付属するなど、多彩な才能をさまざまな形で発揮している。