今の私だから歌える新曲たち
──夏川さんの作詞曲以外の新曲もだいぶ尖っていますよね。まず「イエローフラッグ」は16ビートのリズミックなロックナンバーで、歌詞も強い。
今の私だから、こういう強いメッセージも歌えるんだなと思います。逆に言うと、この曲を歌い切れるようになれたということは、私がちゃんとみんなを引っ張っていける、みんなの先頭に立って進んでいける存在になれたんだなって。あとボーカルに関して言えば、あえて滑舌よく歌おうとはしていなくて。ディレクターさんからも「そっちのほうがいいよ」と言われるし、私も「ラブリルブラ」(3rdシングル「パレイド」カップリング曲)あたりからそういう自分の歌声が好きになったんです。
──確かに「ラブリルブラ」のルーズなボーカルも新鮮でした。もう1つの新曲「キミトグライド」も、曲自体はミディアムテンポのエモーショナルなギターロックですが、歌はふわっと乗せている感じですよね。
はい。この曲は歌詞の最後に「春が過ぎていくよ」というフレーズがあるんですけど、私の中で春の終わりというと、タンポポの綿毛が飛んでるイメージなんですよ。ちょうど「揺れる白い綿毛は」「白い綿毛は僕を追い越して」という歌詞もあったので「私も綿毛っぽく歌ってみようかな」って。
──綿毛っぽく(笑)。
なんか、ふわふわと(笑)。行くあてが明確にあるわけじゃないけど、次の自分が根付く場所に向かおうという意思はちゃんとあるみたいな。歌詞には後悔や諦めも見え隠れしているんですけど、そこに私がちょっとだけ、前に進む力を加えられたらなと思いながら歌いました。
──そして最後に残った新曲が「シマエバイイ」。ジャンルとしてはEDMですが、「フワコロ」との対比が面白いですね。つまりポップな「フワコロ」に対して、クールな「シマエバイイ」という。
まさにそういう狙いがありました。アルバムの最初の会議で、「フワコロ」がEDMだったので「それとまた違う形のEDMがほしいです」とお願いしたんです。歌詞もなかなか過激で、歌い方も、今回の新曲の中では一番斜に構えてるというか、振り切ったなあと自分でも思いますね。
──「シマエバイイ」はEDMでありつつ、サウンド的にはニューウェイブ感がありますよね。あるいはPファンクっぽい。
そう、私としては、そこに80年代のディスコのノリも感じたんですよ。特にイントロや間奏では、アフロのおじさんが踊ってる姿が浮かんできて(笑)。うん、EDMにそういうファンキーな要素が入ってたからこの曲に惹かれたんでしょうね。
今の私に寄せた“Makanai Mix”
──アルバムには1stシングル表題曲の「グレープフルーツムーン」およびカップリング曲「Daisy Days」「gravity」が“Album Mix”として収録されていますね。
1stシングルは、私が自分の好みを把握していなかったこともあって、ほぼお任せで作っていただいたんです。もちろんその中で自分としては全力を尽くしたんですけど、今思えば私もスタッフさんも探り探りで、サウンド的にもニュートラルな方向を目指していたんですね。
──確かに「フワコロ」以降とは音作りが違いますもんね。
最初のほうでお話しした通り、2ndシングルから私も積極的に意見を言うようになって、トラックダウンやマスタリングにも同席させてもらったりしているんです。そうやって関わっていく中で、雑談レベルで「1stシングルを今の夏川に合わせてミックスしたら全然違うものになるよね」という話になって。ありがたいことに、エンジニアさんもまかない的なノリで喜んでミックスしてくださったんです。だから私たちの間では「Makanai Mix」と呼んでたんですけど(笑)。
──ははは(笑)。例えば「Daisy Days」だったらブラスがより華やかになっていますね。
そうなんですよ。同じように「グレープフルーツムーン」はストリングスが、「gravity」はリズムセクションがそれぞれ引き立つようにミックスしていただきました。で、ボーカルのボリュームは下げてます。
──そうか、それが今の夏川さんの音作りですもんね。
そう。全部の音が均一に聴こえるというのが、私の好みなので。
妄想を現実にできるなんて、それほど素敵なことはない
──曲順はどうやって決めたんですか? 「パレイド」が1曲目というのにちょっと驚いたんですけど。
大枠は私が決めたんですけど、直前で変更したんですよ。と言うのも、TrySailのツアー2日目に「ファーストプロット」を初披露したとき、歌詞を汲み取ってくださったお客さんから「『ファーストプロット』は『パレイド』のアンサーソングっぽい」という感想をいただきまして。私としては「パレイド」を意識して「ファーストプロット」の歌詞を書いたわけじゃないんですけど、読み返してみたら確かにアンサー的なことを言ってるなと気付いたんです。
──なるほど。
当初の曲順では「パレイド」と「ファーストプロット」が並んでいたんですよ。で、「ファーストプロット」は絶対に最後の曲にしたかったし、この曲が「パレイド」のアンサーだという解釈が可能なら、「パレイド」を1曲目に持ってくると収まりがいいのかなって。結果的に、それこそ「ログライン」というタイトルにふさわしいストーリーを、曲順でも紡げたんじゃないかと今は納得しているというか、そういう自信があります。
──実際、すごくコンセプチュアルなアルバムになっていますよね。ポジティブな意味で言いますけど、収録曲もだいぶ“デコボコ”しているので。
ホントだ! 確かにデコボコだ(笑)。
──そして、初のワンマンツアーが決まりましたね。
はい。やっと、できます。今回のアルバムが完成に近付くにつれて、それこそライブの風景だったり、そこで付けたい演出だったりがいっぱい浮かんできたんですよ。だから早くそれを実現させたいなって。自分の妄想を現実のものにできるなんて、これほど素敵なことはないと思ってるので。しかもライブって、私が曲に対して抱いている視覚的なイメージをみんなにも伝えられる場でもあるし。だからどうにかして周りの大人たち……もといスタッフさんを巻き込んで、私も今まで以上にたくさん意見を言って、いいものにしたいです。すでにレジュメも作ってますから!
ツアー情報
- LAWSON presents 夏川椎菜 1st Live Tour 2019 プロットポイント
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- 2019年9月25日(水)千葉県 千葉県文化会館
- 2019年9月29日(日)東京都 中野サンプラザホール
- 2019年10月6日(日)東京都 中野サンプラザホール
- 2019年10月19日(土)愛知県 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
- 2019年11月23日(土・祝)大阪府 岸和田市立浪切ホール
2019年4月18日更新