音楽ナタリー Power Push - 夏びらき MUSIC FESTIVAL'16 ~10th Anniversary~
プロデューサー・高橋マシ、宇多丸、TOSHI-LOW、SOIL社長が語る「フェスの今」
アウェイ戦ならではの快感は絶対ある
TOSHI-LOW もう1つのフェス問題として「“ド”アウェイのときはどうするか?」というのもあるよね。
社長 ありますね(笑)。SOILが経験した一番のアウェイは、イタリアの「AREEZO WAVE」というフェス。サッカースタジアムに4万人の客がいて、出番がトリの直前だったんですよ。
TOSHI-LOW うわー! そういうときはどうするの?
社長 まず、タブゾンビ(Tp)と元晴(Sax)が客席に行きましたね。そこで飛び回ってお客さんを巻き込むっていう。
TOSHI-LOW 俺も同じ芸風だ(笑)。年末の「RADIO CRAZY」はBRAHMANがトリだったんだけど、別のステージでサカナクションがやってて、俺らのステージはスカスカだったの。
宇多丸 マジ?
TOSHI-LOW うん。だから、とりあえず客席を走り回ったんだよ(笑)。そしたら俺の後ろにお客が付いて来て、ものすごくデカいサークルモッシュができて。すげえ面白かった。
宇多丸 それはいいね! こうやって話すだけでも、元は取れるし(笑)。
高橋 それは伝説になりますね。RHYMESTERにもアウェイの経験ってありますか?
宇多丸 あるよ。ロックバンドに挟まれても大丈夫なんだけど、意外と近隣のジャンルのほうが……。
社長 あ、わかります(笑)。
宇多丸 例えば、清水翔太くんとか加藤ミリヤちゃんと並ぶと「誰だ、あのオヤジ」みたいになることもあるから(笑)。まあ、そういうときはMCで巻き込んだり、イベント自体をイジり倒したり、やり方はいろいろあるんだけど。この前も所属レーベルのCONNECTONEのイベントがあったんだけど、俺ら以外のアーティストはほとんど平成生まれなんだよ。そういう状況で俺らが最後にやるのって、青空球児・好児(1970年代に人気を博した漫才コンビ)が出てくるようなもんじゃない?
TOSHI-LOW ハハハハハ! 「ゲロゲーロ」だ。
宇多丸 そうそう(笑)。
社長 (笑)。でも、RHYMESTERはそういう状況でもちゃんと魅せますからね。例えば「ライムスターイズインザハウス」をレコード2枚使いでプレイすれば、平成生まれのお客さんにもDJが何をやっているのか伝わるわけだし。そこはさすがだなって思います。
宇多丸 「怪しいものではございません」っていうね(笑)。
TOSHI-LOW アウェイ戦のモードはそれぞれあると思うけど、そっちのほうが楽しいよね。負けて当然という状況をひっくり返したときの快感って、絶対あるから。
宇多丸 いろいろ考えるけどね。家族連れが多いなと思ったら、卑猥な曲はやめたほうがいいかなとか。
高橋 でも夏びらきでは「肉体関係part2 逆featuring クレイジーケンバンド」をやってますよね。
宇多丸 あ、そうだね(笑)。
TOSHI-LOW 子供たちもいずれ覚えることだから、早めに教えておくのもいいんじゃない?(笑)
夏びらきフェスという場所は僕らにとってもすごく有意義
──フェスのオーガナイザーとしては、出演者には気持ちよくやってもらいたいですよね?
高橋 そうですね。お客さん、出演者の皆さんもそうだし、スタッフにも楽しんでもらいたいと思ってるんですよ。例えば駐車場の入り口で誘導しているスタッフもシフト制にして、ライブを楽しむ時間を作ってあげたりとか。ずっと駐車場にいて、遠くから音が聴こえるだけだとつまらないですから。
TOSHI-LOW いいことだと思う。駐車場の誘導係なんて、夕方くらいになると、疲れてやる気もなくなってくるしね。あれはかわいそう。
宇多丸 夏びらきのスタッフはモチベーションが高いよね。
高橋 普段はカフェで働いているスタッフにも現場に入ってもらってるんですよ。いつもとは違うモチベーションもあると思いますね。
──おもてなし感もあるし、夏びらきフェスは、フェスに慣れてない人でも気軽に楽しめますよね。
高橋 そうだと思います。あとはもう、すごいアーティストのライブを観て、音楽にハマるきっかけになってくれたらうれしいですね。チケットも安いと思うんですよ。4500円なので。
社長 敷居が低くて、参加しやすいフェスだっていうのは、このトークからもわかってもらえるだろうし。家族はもちろん、あまり音楽に興味がない友達も誘いやすいだろうし、新しい遊び場所として捉えるのもいいと思います。
TOSHI-LOW 自分たちも楽しみですね。きっと新しいつながりも生まれるだろうね。
宇多丸 間口が広くて奥が深いフェスだし、いいアーティストがそろってるから「日本の音楽、面白いな」と思ってもらえるんじゃないかな。新しい曲を投入できる場所だし、僕らにとってもすごく有意義なんですよね、夏びらきフェスは。
夏びらきMUSIC FESTIVAL'16
~10th Anniversary~所沢
- 2016年7月16日(土)
埼玉県 所沢航空記念公園野外ステージ - OPEN & START 11:00
- <出演者>
FIRE BALL / bonobos / ハンバート ハンバート / 天才バンド / BRADIO / wacci
- 2016年7月17日(日)
埼玉県 所沢航空記念公園野外ステージ - OPEN & START 11:00
- <出演者>
RHYMESTER / SOIL & "PIMP" SESSIONS / 七尾旅人 / BAGDAD CAFE THE trench town / サ上と中江
- 2016年7月18日(月・祝)
埼玉県 所沢航空記念公園野外ステージ - OPEN & START 11:00
- <出演者>
LIFE IS GROOVE / PUSHIM×韻シスト / SCOOBIE DO / キセル / OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND / 住岡梨奈
- MC:KTa★brasil(ケイタブラジル)
- DJ:高波由多加(Namy、BOSCA / ※17日18日のみ) / 君嶋麻里江(BOSCA) / gommissey
夏びらきMUSIC FESTIVAL'16
~10th Anniversary~大阪
- 2016年7月30日(土)大阪府 服部緑地野外音楽堂
- OPEN & START 11:00
- <出演者>
LIFE IS GROOVE / FIRE BALL / 韻シスト / BAGDAD CAFE THE trench town / ワンダフルボーイズ / サ上と中江 / 住岡梨奈 / wacci
- 2016年7月31日(日)大阪府 服部緑地野外音楽堂
- OPEN & START 11:00
- <出演者>
SOIL & "PIMP" SESSIONS / SCOOBIE DO / Nabowa / 七尾旅人 / 天才バンド / BRADIO / 大石昌良 / キセル
- MC:KTa★brasil(ケイタブラジル)
- DJ:MASATOSHI NAKAGAWA(FM802) / SOUL ONE(Majestic Two)
高橋マシ(タカハシマシ)
株式会社エスエルディーに所属し、東京のライブハウス、代官山 LIVE HOUSE LOOPとSHIBUYA LOOP ANNEXのプロデュースを担当。2007年から開催されている野外フェス「夏びらき MUSIC FESTIVAL」を主宰する。またKISS FMでラジオパーソナリティを務めたり、DJとして韻シスト主催のパーティ「Neighbor Food」にレギュラー出演したりといった顔も持つ。
RHYMESTER(ライムスター)
宇多丸、Mummy-D、DJ JINからなるヒップホップグループ。別名「キング・オブ・ステージ」。1989年に結成され、1993年にアルバム「俺に言わせりゃ」でインディーズデビューを果たす。メンバー交代を経て1994年にDJ JINが加入し、現在の編成に。1998年発表のシングル「B-BOYイズム」、翌1999年発表の3rdアルバム「リスペクト」のヒットで日本のヒップホップシーンを代表する存在となった。2001年からは活動の場をメジャーへと移し、2007年には日本武道館公演「KING OF STAGE Vol.7」を大成功させた。その後、約2年の活動休止期間を経て「マニフェスト」「POP LIFE」「ダーティーサイエンス」という3枚のアルバムを発表する。2014年12月にレコード会社をビクターエンタテインメントへ移し、主宰レーベル「starplayers Records」を設立。2015年5月には東京・お台場野外特設会場で初の主催フェスティバル「人間交差点」を開催し、7月に移籍後初のアルバム「Bitter, Sweet & Beautiful」をリリースした。
なお宇多丸はラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」のメインパーソナリティを務めるほか、テレビなどでも活躍している。Mummy-DとDJ JINはプロデューサーとしても活動中。
OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND
(オーバーグラウンドアコースティックアンダーグラウンド)
BRAHMANのメンバー4人とスコットランド系アメリカ人のMARTIN(Vo, Violin, G)、KAKUEI(Per)の6人からなるアコースティックバンド。TOSHI-LOW(BRAHMAN)と MARTINの出会いをきっかけに、2005年6月に結成される。2005年にオムニバス盤「The Basement Tracks-10YEARS SOUND TRACK OF 7STARS」に初音源「Dissonant Melody」を提供し、2006年に1stアルバム「OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND」にてデビュー。その後もBRAHMANや個々の活動と並行して定期的なライブツアーを行い、2010年からは野外フェス「New Acoustic Camp」のオーガナイザーを務める。2014年9月、約5年ぶりのフルアルバム「FOLLOW THE DREAM」をリリースした。
SOIL & "PIMP" SESSIONS
(ソイルアンドピンプセッションズ)
元晴(Sax)、丈青(Piano)、タブゾンビ(Tp)、秋田ゴールドマン(B)、みどりん(Dr)、社長(アジテーター)からなる6人組バンド。東京・六本木のクラブで知り合った仲間で2001年に結成される。2003年に「FUJI ROCK FESTIVAL '03」に出演して以来、国内外のフェスに参加。2004年に1stアルバム「PIMPIN'」でメジャーデビュー。2006年には椎名林檎とともに映画「さくらん」のテーマ曲を担当。次々と作品を発表しながら、「グラストンベリー・フェスティバル」「モントルー・ジャズ・フェスティバル」など海外の大型フェスに出演し、ワールドワイドに活動する。2013年には10周年を記念してRHYMESTER、椎名林檎をそれぞれフィーチャリングゲストに迎えたシングル、全曲コラボレーションアルバム「CIRCLES」、初のベスト盤「"X" Chronicle of SOIL & "PIMP"SESSIONS」を発売。2015年7月にブルーノート東京でライブを行い、その模様を高音質で録音したライブアルバム「A NIGHT IN SOUTH BLUE MOUNTAIN」も発表した。2016年4月にオリジナルアルバム「BLACK TRACK」をリリース。