音楽ナタリー Power Push - 夏びらき MUSIC FESTIVAL'16 ~10th Anniversary~
プロデューサー・高橋マシ、宇多丸、TOSHI-LOW、SOIL社長が語る「フェスの今」
2007年にスタートした野外フェス「夏びらき MUSIC FESTIVAL」。10周年を迎える今年は7月16、17、18日に埼玉・所沢航空記念公園野外ステージ、7月30、31日に大阪・服部緑地野外音楽堂で開催される。「都心から1時間圏内」「家族で気軽に行ける」などのコンセプトを掲げた夏びらきフェスは、今年も幅広い音楽ファンで賑わいそうだ。
今回ナタリーでは「夏びらきMUSIC FESTIVAL」のプロデューサー・高橋マシ(SLD Entertainment)、このフェスに出演する宇多丸(RHYMESTER)、TOSHI-LOW(OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND)、社長(SOIL & "PIMP" SESSIONS)の座談会を企画。夏びらきフェスの魅力について語ってもらった。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 西槇太一(「夏びらき MUSIC FESTIVAL」会場写真を除く)
「SOILの副社長」と呼ばれていた高橋マシ
──「夏びらき MUSIC FESTIVAL」が10周年を迎えます。今年は所沢で3日間、大阪で2日間の開催ですね。
高橋マシ はい。いい意味で、これまでの延長線上として10年の節目をやり遂げたいなと思っています。僕としては「あっという間に10年経ったな」という感じなんですけどね。
──フェスを10年続けるのは、並大抵のことではないですよね。
高橋 そうですね。夏びらきフェスは12歳以下の子供は入場無料で、「親子で楽しめる」というのも1つのコンセプトになっていて。お客さんからよく言われるのは「最初に夏びらきフェスに来たときはまだ付き合っていなかったけど、その後付き合って、結婚して、子供が生まれて。今は家族で来ています」という話なんです。そういうのを聞くと、10年の重みを感じますね。僕も6歳の子供がいるんですが、夏びらきフェスの最中に妻から電話があって、妊娠の報告を受けたんですよ。確かLITTLE TEMPOのライブが終わった直後だったかな。
──出演する立場として、夏びらきフェスの印象というと?
宇多丸 僕らが最初に出たのは2009年なんですよ。
高橋 RHYMESTER復活のときですよね。
宇多丸 そう。RHYMESTERは2007年から活動休止していたんだけど、活動を再開して、最初に出させてもらった大きいイベントが夏びらきフェスで。しかもそこで初めて新曲をやったんですよね。ちょうど「ONCE AGAIN」で打って出るというタイミングだったので。
高橋 よく覚えてます。
宇多丸 ウチの事務所の社長も言ってたんだけど、当時は「しばらくフェスから声がかかることなんてないだろうな」って思ってたんですよ。「また1からやっていくしかないのか」というときに真っ先にお声がけいただいたので、すごく感慨深いですね。以来、毎年出させてもらっているんだけど、いつも“夏びらき”が新曲を卸すタイミングでもあって。縁起がいいんですよ、ホントに。
TOSHI-LOW 自分たちも「New Acoustic Camp」というイベントをやっていて。そこからスピンオフした「ACO CHILL」を去年から始めたんだけど、それは子供に特化したイベントで、“夏びらき”からヒントをいっぱいもらってるんだよね。「子供たちがいる音楽の現場」というのかな。20年も音楽をやっていると、昔はガキだった奴らが、自分のガキを作ってライブに来るようになるわけ。だったら、子供たちと一緒に音楽に触れる機会を作りたいと思って。
社長 まっしゃん(高橋)は“夏びらき”以前に、SOILの結成当初からのキーパーソンだったんですよ。一時期は「SOILの副社長」と呼ばれてたくらいなので。
高橋 そういうあだ名があったんですよね(笑)。
社長 前身バンドのSOIL & HEMP SESSIONSの頃に、まっしゃんが渋谷のMODULEでやってたパーティにレギュラーバンドとしてブッキングしてもらったり。そこからつながって、今も一緒に仕事ができているっていうのが一番の喜びですね。
高橋 ありがとうございます。本当にSOILが無名だったときから一緒にやらせてもらってたんですけど、その後SOILはまだ音源も出ていないのにフジロック(「FUJI ROCK FESTIVAL」)に出演して、そこからガーッと上がっていって。僕はアーティストでもないけど「悔しい」という気持ちがあったんですよね。自分たちもがんばって、いろいろな事業を形にしていく中で、「このラインまで来れたら、SOILとまた仕事ができる」と思ったというか。だから“夏びらき”の最初の頃は声をかけてなかったんですよ。
社長 そうそう。一度出てからは毎年出させてもらってるけどね。
TOSHI-LOW なるほど、そういう関わりがあったのか。マシがどういう人か、今やっとわかったよ。「お笑いトリオの怪物ランドにこういう風貌の人がいたな」くらいに思ってたんだけど(笑)。
高橋 (笑)。僕にとっては宇多丸さん、TOSHI-LOWさんとご一緒できるのはすごいことなんです。高校生の頃に「さんピンCAMP」があって、「AIR JAM」でBRAHMANを聴いて。「ラップをやるか、メロコアバンドをやるかの二択」という時代でしたからね。
“夏びらき”はフェスの入門としてもオススメ
──2007年に夏びらきフェスを立ち上げたときは、どういうフェスを目指していたんですか?
高橋 あの場所(所沢航空公園)を見つけて、フェスをやろうと思ったときに「どうやってほかのフェスと差別化しようか?」と考えたんですよね。7月末はフジロック、8月の2週目はサマソニ(「SUMMER SONIC」)だから、「じゃあ、7月の初めにやろう」と。2年目までは7月1日くらいにやってたんです。まだ梅雨のど真ん中なんですけど。
TOSHI-LOW リスクあるよね、梅雨明けしてない時期。
高橋 そうなんですよね。でも、時期を早めることでしか勝ち目はないと思ったので。今は4月、5月にもフェスがあるので、また違うと思うんですけどね。
──「家族で楽しめる」というコンセプトについては?
高橋 最初から考えていたわけではないんですけど、回を重ねるうちに「所沢はファミリー層が多い場所だから、親子で来てほしいな」と思って。実際、小学生を無料にしてからは、家族で来てくれる方がすごく増えたんです。山の中で本格的なキャンプをするフェスだと、小さい子供を連れていくのは大変じゃないですか。所沢航空公園も、大阪・服部緑地公園も日帰りできるし、駐車場もあるから、フェスの入門としてもすごくいいと思いますね。
宇多丸 航空公園の雰囲気もいいしね。
高橋 そうなんですよね。今年は子供たちのためのキッズエリア、プレイルームだけじゃなくて、ママ、パパも楽しめるようなことも用意したいと思っていて。
TOSHI-LOW 個室? 「ママとパパ、あそこで何やってるのかな?」って(笑)。
高橋 いやいや、そういうことじゃなくて(笑)。今考えているのはワークショップですね。女の子だったら指編み教室とかヘアアレンジできるブースがあったり、あとはお昼寝アート(寝ている赤ちゃんの周囲に小物などを置いて撮る写真)を親子で楽しめるブースだったり。疲れたらリラクゼーションマッサージできたり。朝は親子でも参加できるヨガ教室もやろうと思っています。それは大阪も同じですね。ライブが最高なのは間違いないんですが、普段ライブに行かないような人たちにも来てほしいので。
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夏びらきMUSIC FESTIVAL'16
~10th Anniversary~所沢
- 2016年7月16日(土)
埼玉県 所沢航空記念公園野外ステージ - OPEN & START 11:00
- <出演者>
FIRE BALL / bonobos / ハンバート ハンバート / 天才バンド / BRADIO / wacci
- 2016年7月17日(日)
埼玉県 所沢航空記念公園野外ステージ - OPEN & START 11:00
- <出演者>
RHYMESTER / SOIL & "PIMP" SESSIONS / 七尾旅人 / BAGDAD CAFE THE trench town / サ上と中江
- 2016年7月18日(月・祝)
埼玉県 所沢航空記念公園野外ステージ - OPEN & START 11:00
- <出演者>
LIFE IS GROOVE / PUSHIM×韻シスト / SCOOBIE DO / キセル / OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND / 住岡梨奈
- MC:KTa★brasil(ケイタブラジル)
- DJ:高波由多加(Namy、BOSCA / ※17日18日のみ) / 君嶋麻里江(BOSCA) / gommissey
夏びらきMUSIC FESTIVAL'16
~10th Anniversary~大阪
- 2016年7月30日(土)大阪府 服部緑地野外音楽堂
- OPEN & START 11:00
- <出演者>
LIFE IS GROOVE / FIRE BALL / 韻シスト / BAGDAD CAFE THE trench town / ワンダフルボーイズ / サ上と中江 / 住岡梨奈 / wacci
- 2016年7月31日(日)大阪府 服部緑地野外音楽堂
- OPEN & START 11:00
- <出演者>
SOIL & "PIMP" SESSIONS / SCOOBIE DO / Nabowa / 七尾旅人 / 天才バンド / BRADIO / 大石昌良 / キセル
- MC:KTa★brasil(ケイタブラジル)
- DJ:MASATOSHI NAKAGAWA(FM802) / SOUL ONE(Majestic Two)
高橋マシ(タカハシマシ)
株式会社エスエルディーに所属し、東京のライブハウス、代官山 LIVE HOUSE LOOPとSHIBUYA LOOP ANNEXのプロデュースを担当。2007年から開催されている野外フェス「夏びらき MUSIC FESTIVAL」を主宰する。またKISS FMでラジオパーソナリティを務めたり、DJとして韻シスト主催のパーティ「Neighbor Food」にレギュラー出演したりといった顔も持つ。
RHYMESTER(ライムスター)
宇多丸、Mummy-D、DJ JINからなるヒップホップグループ。別名「キング・オブ・ステージ」。1989年に結成され、1993年にアルバム「俺に言わせりゃ」でインディーズデビューを果たす。メンバー交代を経て1994年にDJ JINが加入し、現在の編成に。1998年発表のシングル「B-BOYイズム」、翌1999年発表の3rdアルバム「リスペクト」のヒットで日本のヒップホップシーンを代表する存在となった。2001年からは活動の場をメジャーへと移し、2007年には日本武道館公演「KING OF STAGE Vol.7」を大成功させた。その後、約2年の活動休止期間を経て「マニフェスト」「POP LIFE」「ダーティーサイエンス」という3枚のアルバムを発表する。2014年12月にレコード会社をビクターエンタテインメントへ移し、主宰レーベル「starplayers Records」を設立。2015年5月には東京・お台場野外特設会場で初の主催フェスティバル「人間交差点」を開催し、7月に移籍後初のアルバム「Bitter, Sweet & Beautiful」をリリースした。
なお宇多丸はラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」のメインパーソナリティを務めるほか、テレビなどでも活躍している。Mummy-DとDJ JINはプロデューサーとしても活動中。
OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND
(オーバーグラウンドアコースティックアンダーグラウンド)
BRAHMANのメンバー4人とスコットランド系アメリカ人のMARTIN(Vo, Violin, G)、KAKUEI(Per)の6人からなるアコースティックバンド。TOSHI-LOW(BRAHMAN)と MARTINの出会いをきっかけに、2005年6月に結成される。2005年にオムニバス盤「The Basement Tracks-10YEARS SOUND TRACK OF 7STARS」に初音源「Dissonant Melody」を提供し、2006年に1stアルバム「OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND」にてデビュー。その後もBRAHMANや個々の活動と並行して定期的なライブツアーを行い、2010年からは野外フェス「New Acoustic Camp」のオーガナイザーを務める。2014年9月、約5年ぶりのフルアルバム「FOLLOW THE DREAM」をリリースした。
SOIL & "PIMP" SESSIONS
(ソイルアンドピンプセッションズ)
元晴(Sax)、丈青(Piano)、タブゾンビ(Tp)、秋田ゴールドマン(B)、みどりん(Dr)、社長(アジテーター)からなる6人組バンド。東京・六本木のクラブで知り合った仲間で2001年に結成される。2003年に「FUJI ROCK FESTIVAL '03」に出演して以来、国内外のフェスに参加。2004年に1stアルバム「PIMPIN'」でメジャーデビュー。2006年には椎名林檎とともに映画「さくらん」のテーマ曲を担当。次々と作品を発表しながら、「グラストンベリー・フェスティバル」「モントルー・ジャズ・フェスティバル」など海外の大型フェスに出演し、ワールドワイドに活動する。2013年には10周年を記念してRHYMESTER、椎名林檎をそれぞれフィーチャリングゲストに迎えたシングル、全曲コラボレーションアルバム「CIRCLES」、初のベスト盤「"X" Chronicle of SOIL & "PIMP"SESSIONS」を発売。2015年7月にブルーノート東京でライブを行い、その模様を高音質で録音したライブアルバム「A NIGHT IN SOUTH BLUE MOUNTAIN」も発表した。2016年4月にオリジナルアルバム「BLACK TRACK」をリリース。