RYO(ORANGE RANGE)×綾小路 翔(氣志團)インタビュー|ライブナタリー主催の3.11仙台ツーマン

ORANGE RANGEと氣志團によるライブナタリー主催のツーマンライブが3月11日に宮城・SENDAI GIGSで開催される。およそ20年のキャリアを持つ両者だが、フェスでの競演はあれどツーマンライブを行うのは今回が初となる。イベント開催に先駆けて音楽ナタリーではORANGE RANGEのRYO(Vo)と氣志團の綾小路 翔(Vo)へのインタビューを実施し、お互いの印象やライブにかける意気込み、東日本大震災に対する思いを聞いた。

取材・文 / 小林千絵

平成のチェッカーズが現れた

RYO(ORANGE RANGE) 氣志團は僕らにとって先輩ではあるんですが、ずっと一緒に歩んできた感じがあって、勝手に盟友のように思っているんです。なおかつ、第一線にいることに対するリスペクトがあって一緒にやりたかったので、実現してうれしいです。

綾小路 翔(氣志團) いやあ、こちらこそ本当にうれしいです。氣志團は2001年にデビューしたんですけど、うちのメンバーって意外と硬派なので、デビューしてから少し経って急に「なんで踊っているんだろう」「しっかりしたロックバンドとして評価されたい」みたいなことを言い始めたことがあったんです。そんなときに、彗星のようにORANGE RANGEが現れた。「平成のチェッカーズが現れた」と思いましたよ。ダンスミュージックをやったり、フロントマンが3人いたりと、ロックバンドという概念を覆していて。でもしっかりした音楽的な素養が下地にあって、テクニックもあって、ソングライティングの能力もあって、それでいてファッショナブルだし、ルックスもいい。当時の僕がメンバーに証明したかったことをORANGE RANGEが目の前でやってくれた感じがあって、シンパシーとジェラシーが尋常じゃなかったです。

RYO めちゃくちゃうれしいです。当時のORANGE RANGEが一番言われたかったことかもしれないです。あの頃、特に僕は「アイドルに見られたくない」という気持ちが強かったんだろうなって、今振り返ると思うんです。今はむしろアイドルと言われたいですけど(笑)。だからタイムスリップして、今、翔さんが言ってくれたことを当時の僕やメンバーに伝えてあげたいです。

綾小路 1990年代終わりから2000年代初頭の日本のロックって、内省的で歌詞も文学的になって、しかも、そういうものが本物だと言われるようになってきた。でも僕らは、シリアスなものだけが本物だとは全然思ってなかったんです。底抜けに明るい表現があってもいいんじゃないかと思っていて。まあ、僕らの場合は多少やりすぎていたのかもしれないですけど(笑)。そんなときに根っから明るいORANGE RANGEが出てきた。今、RYOが「アイドルとして見られたくないと悩んでいた」と言っているのを聞いて「そうなの!?」と思ったくらい、ちゃんと音楽的な素養があって、アイドルも演じられるなんて、最強のロックバンドだと思っていました。しかも当時は事務所の力が強い時代だったのに、ORANGE RANGEはただ友達と音楽を始めて、そのまま野球で言うところの“四番バッター”になった。その姿はすごく夢があったし、日本での新しい音楽の形が生まれた瞬間に立ち会ったという感覚でしたね。今でも当時の衝撃は鮮明に覚えています。

ORANGE RANGE

ORANGE RANGE

音が鳴っていないときの雰囲気も含めてエンタテインメント

──RYOさんは氣志團のことをどう見ていましたか?

RYO 今も昔も、“エンタテインメント”ですね。ライブの作り方、音が鳴っていないときの雰囲気、すべてにおいて僕たちにないものが氣志團にはある。ORANGE RANGEのいいところって、ステージ上でメンバーの波長が合ったときの爆発力だと思うんです。そこは自分たちでも認めていいところだと思うんですけど、反対にライブにおいては、“ここはこういうことをやる”と決めて進めることも同じくらい大事なことだと思っていて。でもORANGE RANGEはそれがものすごく下手くそなんですよ。素直さが出てしまって演じきれなくて。どっちがいい悪いということではないですが、そういうステージも取り入れてみたいと歳を重ねるたびに思うようになってきた。だから氣志團さんのライブを見ると、本当にすごいなと思います。ないものねだりなのかもしれないですけど。

綾小路 うちは、幼馴染みたいな関係性なわりには一体感がまったくなくて、決めごとを作っておかないとどうにもならないんですよ。決めごとを作っても47点くらいしか出せないんだけど(笑)。まあ、RYOが言うように、ないものねだりかもしれないよね。うちのメンバーはステージで全然前に出たがらないから、「この曲のここは前に出て演奏してね」「このときは台に上がろう」って一生懸命説得して。だから今度のライブでは、そういう見方もしてもらえると面白いと思います。「あの子、がんばって前に出ているんだなあ」って。コーラスのときもうつむいてますからね。僕がいつもオーバーアクションしているのは、それがバレないようにするためなんですよ。自分たちで種明かしすることじゃないけど(笑)。

RYO あはは。

綾小路 本当に大変な人たちとバンド組んじゃったなと思ってますよ(笑)。まあ、向こうも思っているだろうけど。草野球チームでプロ野球チームと戦っているみたいなもんですからね。だからね、同じバンドと2回以上対バンライブをやるのはつらいんですよ。奇襲みたいなライブをすることで乗り越えてきたバンドなので……。

このツーマンはアシュラマン VS サムソン・ティーチャー

──ということは、今回のツーマンも奇襲に?

綾小路 いや……ORANGE RANGEは奇襲が通じる相手じゃないんですよ。それこそシリアス一辺倒の人たちだったら、なんとか真逆の方法を使ってテンションを上げてごまかせるんですが、ORANGE RANGEは僕たち以上にテンションを上げられますし。あと、いつもはフロントマンが2人いるというのを利用しているんですけど、ORANGE RANGEは3人いますからね。これはもうアシュラマン VS サムソン・ティーチャーなんですよ……って誰もわからないですよね。「キン肉マン」の話です。アシュラマンっていうのは手が6本あって、そのアシュラマンの師匠は、サムソン・ティーチャーという手が4本ある超人で。

RYO あはは。なるほど。

綾小路 「キン肉マン」は超人たちが人間を守るために戦う話なんですよ。その中にジェロニモというキャラクターがいて。ジェロニモはものすごく強い悪魔超人(※常人を超越した能力を持つ“超人”の中でも極悪非道な一派)を倒すこともできるんですが、実は、超人のふりをしている人間なんです。だから超人じゃないと耐えられない場所で死ぬんですが、そのときに「だってオラは人間だから」という悲しいセリフを残して死んでいくんです。

RYO わあ、悲しいですね。

綾小路 そう、本当に悲しいよ。僕はフェスとかに出演するたびに、ジェロニモの気持ちになるの。ほかのアーティストのみんなは「翔やんー!」って話しかけてくれるんだけど、僕は人間なのに超人のフリをして彼らのコミュニティに混じっている。だけど今日はここで告白しているんですよ、自分が人間であることを。だからこのツーマンはアシュラマン VS サムソン・ティーチャーではなくアシュラマン VS ジェロニモですね。そんな僕たちが、3月11日、ORANGE RANGEという超人に向かって、勝ち目のない戦いに挑むわけですよ。華々しく散るのか、人間としての矜持を見せられるのか。年齢やキャリアだけで見たら僕たちのほうが先輩かもしれないですが、実は種族が違うということを皆さんに理解してもらいたいですね。だって僕、人生で一度も……ファルセットが出たことがないですから(笑)。

絶対に理解し合える部分があると思う

──ORANGE RANGEはそんな氣志團と、どのように戦いますか?

RYO もちろんずっと尊敬しているのは変わらないんですが、今の話を聞いてさらに怖くなりました。氣志團さんを意識しちゃうとよくない気がするので、自分たちらしさをどれだけ出せるか、なのかな。

綾小路 それが一番正しいよ。相手は関係なく自分たちのことをやるのが一番正しくて、そして僕たちはそれをされると一番つらい(笑)。でもね、ORANGE RANGEを好きな人たちと氣志團を好きな人たちは絶対に理解し合える部分があると思うので、そこも楽しみなんですよ。

RYO ああ、そうですね。

綾小路 それこそORANGE RANGEが2018年に「氣志團万博」に出てくれたとき、ものすごかったんですよ。ジャンルも世代も超越して、おじさんもおばさんも、若い子もみんなが無条件に盛り上がっていた。この音楽が流れたら無条件に全員が踊るしかない、楽しくなるしかないって感じで。「僕もこれができる人になりたい」と本当に思いました。

「シミズオクト Presents 氣志團万博2018 ~房総爆音爆勝宣言~」でパフォーマンスする氣志團(撮影:上山陽介)

「シミズオクト Presents 氣志團万博2018 ~房総爆音爆勝宣言~」でパフォーマンスする氣志團(撮影:上山陽介)

「シミズオクト Presents 氣志團万博2018 ~房総爆音爆勝宣言~」でパフォーマンスするORANGE RANGE(撮影:釘野孝宏)

「シミズオクト Presents 氣志團万博2018 ~房総爆音爆勝宣言~」でパフォーマンスするORANGE RANGE(撮影:釘野孝宏)

RYO そんなそんな……。当時は初めての「氣志團万博」で正直、お客さんがそこまで集まらないと思っていたんです。だけど、いざ蓋を開けてみたら、ウエルカムモードで盛り上がってくれて驚きました。入場規制までかかって。後ろのほうのお客さんまで踊ってくれていたあの光景はずっと忘れないです。

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やっぱり音楽は必要